Last Updated on 2025-05-29 18:38 by admin
ここにないものが目の前に、あたかも現実であるかのような夢を見せてくれる未来がやってくるのか。
今回はARグラス「XREAL One」の体験レビューとなります。使ってみた感想、感動した点と、将来こういう技術が実現してくれたらいいなという希望をこめてご紹介させていただきます。
VRじゃなくてARを選ぶ理由は?
VRやMRと違って、ARは「インタラクティブ性の低さ」が挙げられる。これはデメリットというわけではなく、「ただ見るだけ」が欲しいなら、余分なコストをかけてVRのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を買う必要はないということだ。
「XREAL One」の重量は82g。普段から裸眼で過ごしている私でも長時間の仕様に疲労は感じなかった。さすがに2~3時間ほど映画を見てると、少し休憩が欲しくなるが、それぐらいなら十分である。仰向けに寝っ転がってればもっと疲労度は下がると思う。
私の持っているVRHMD「Meta Quest2」は503gで、1時間以上の装着はかなり目や首への負担が大きく、重さでHMDがずれてきたり、夏場は蒸れるという問題を抱えているのに対し、「XREAL One」はARグラスであるため、身体への負担は非常に少ないと感じた。
解像度も1920*1080が両目で実質3840*1080と申し分なく、他社のARグラスとも遜色ないスペックであり、発色も鮮やかで、映像の臨場感や迫力を損なうことは全くなかった
音響も素晴らしく、最初聞いたときは少し音が大きくてびっくりしたが、設定を見るとかなり小さい設定で、グラスを外すとほとんど聞こえなかった。
静かな場所で動画などを見る分には最小か、1つあげたぐらいがちょうどよく、音漏れもそこまで気にする必要はなさそうだ。
実際にあれこれ見てみた
今回はスマホに接続して使ってみた。
まずはYouTubeでいろいろ見て感じたのは、やはり画面の鮮明さ。加えて、スマホと目線の位置を合わせる必要がないので手や首が疲れないのは非常に快適だった。
3段階の電子調光モードが搭載されており、映像以外の視界を暗くできるため、まるで映画館のような没入感を得られ、集中して楽しむことができる。シンプルながら少しでも環境が変わればここまで体験が変わるのかと少し感動。
映像との距離も2mから10mで1m単位で設定できるため、近すぎて目が追えない、遠すぎて細部が見えないといった不満はなく、それぞれが心地よい設定に調節できるのもありがたい。
本製品には3Dモードも搭載されており、SBSによるVRビデオも視聴できるようなっているのも見逃せない。
が、私がスマホをセットするタイプのHMDを使ったことがないので正確にどこに問題があるかがわからないのだが、遠くの被写体を見ると両目の映像がリンクせず、ダブって見えてしまった。ある程度カメラに近い場所にあるものはしっかり立体に見えるのだが、映像とグラスの相性が悪いのか、私の目が慣れていないのか…

妄想が現実に?
そして次はもっとARっぽいことをしてみようと思った。
スマホの写真ライブラリアプリで画像を表示すれば、目の前にあるかのように見えるのでは、というかARとはもともとそういうもののはずだ。
映像外のエリアと映像の真っ黒い場所はシームレスになっており、枠を感じさせることがなかったので、背景を透過したpng画像でなくても、真っ黒背景なら透過しているかのように見える。「XREAL One」は単独で3DoFにも空間固定にも対応しているスグレモノなので、空間固定すれば、特定の場所に何かが置かれているように見ることもできる。
ためしに、キャラクターがテーブルの向こう側にいるかのようなイラストを用意して、グラスをかけてみれば、まるで推し(という言い方は好きじゃないが)と一緒に暮らしているかのような、そういう妄想が現実のものに…?
おおおおおおおおお!!!
…お?
暗い。
電子調光で一番透過度を上げても、そもそも「XREAL One」は外側にサングラスのような黒いレンズを使用している。これは映像を投影する際、外の光が強いと映像がはっきり見えにくくなるので、鮮明に見るためのコントラストを生むために仕方のないことではあるが、このグラスは外界を見るには暗すぎるのだ。

何も接続していない状態なら普通のサングラスと同じぐらいなのだが、映像出力の発光に合わせて瞳孔が絞られてしまうので、見えにくさを生んでしまう。
正直、臨場感はまったくない。これも仕方のないことではあるが、映像自体もほんのり後ろが透けて見える。ぼんやりと、薄暗い世界に、何かいるな。という違和感はぬぐえなかった。

ひょっとしたら、お化け屋敷とかには応用させやすいかもしれないが、現状では目の前に嫁がいる!というのはARグラスではまだまだ実現しないみたいだ。
対応端末の不自由
今回私が使用したのは私物の「iPhone SE(第3世代)」だ。Type-Cケーブルに対応していないので、別途アダプターが必要になる。
これに関しては「XREAL」と「Apple」の純正品のアダプターの使用を推奨されているが、両方買うと約15000円となかなかいい値段してしまう。本体も約7万円ということを考えると、追加の出費はなかなか痛い。
加えて現在は「XREAL Adapter」は販売終了しており、Amazonにも在庫がない状態になっている。
ので、今回は試しに他社の安いアダプターを買った。ちゃんと見れるし、致命的な欠陥品ではなかったが、もしかしたらここに依存する問題もあるかもしれない。
それと、今回買ったアダプターが外部電源供給を必要とするため、グラスからアダプターへ、アダプターから二又に分かれて片方はiPhoneへ、もう片方はモバイルバッテリーへ接続するため、コード周りが煩雑になってしまった。

自宅のパソコンもType-Cのポートがなく、グラボに刺すためにこれもまた特別なアダプターが必要だったので試せていない。
正直、こんな中途半端な状態でレビューするのはいかがなものかと思うかもしれないが、同じような環境にいる人の参考になってくれれば幸いだ。
先述の通り周りが見えにくいため、手元を見る必要がない作業にしか適しておらず、キーボードのタッチタイピングができない人や、そもそも物理ボタンのないスマホは操作に適していない。逆にゲームコントローラーや、楽器など、(慣れは必要だが)見なくても操作できるものとの親和性は非常に高いだろう。
ARの未来への希望
ARグラスに望むことは、AR(拡張現実)を謳うからには、もっとしっかり外界がはっきり見えてほしいということだ。
両手を自由にしたまま、周囲も映像も見れるという体験が満足にできれば、地図を開きながら町を歩いたり、レシピを見ながら料理をしたり、手本をなぞる様に筆を走らせたり、もっともっと自由が広がるだろう。
ただ、悪いことばかりではなく、目の前に鮮明なモニターを置くという点においては本製品は非常に素晴らしいものではある。私が少し期待しすぎていただけだ。
少し気になっているのが、「Nintendo Switch」を遊ぶには最適かもしれない。携帯機にしては重いし、完全に両側で独立したコントローラーがあるのだから、仰向けに寝っ転がって遊びたいとは前から思っていたが、これを使えばかなり快適に遊べそうだ。ただ、これもアダプターが必要である。