PUMAとMetaが2025年6月、WebXRショッピング体験を発表した。この体験はMeta Quest専用に設計され、PUMAの最新バスケットボールシューズ「All Pro Nitro」を対象としている。ユーザーはHorizon OSウェブブラウザでmr.puma.comにアクセスし、バーチャル空間内でシューズを1:1スケールで確認できる。Meta Questコントローラーを使用した足のサイズ測定機能も搭載されている。各カラーに合わせたPUMA衣類のガイドも提供される。サイズとカラー選択後は従来のPUMAウェブサイトで購入手続きを行う。WebXRは理論上クロスプラットフォーム対応だが、Apple Vision Proでは動作しない。
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Puma Made A Quest-Only WebXR Shopping Experience For Its Latest Shoes
【編集部解説】
PUMAとMetaによる今回のWebXRショッピング体験は、単なる技術デモンストレーションを超えた、小売業界における重要な転換点を示しています。この取り組みが注目すべき理由は、従来のVRアプリケーションとは異なり、ブラウザベースのWebXR技術を採用している点にあります。
WebXRの最大の利点は、専用アプリのダウンロードやインストールが不要で、ウェブブラウザから直接アクセスできることです。これにより、消費者の参入障壁が大幅に下がり、VRショッピングの普及に向けた重要な一歩となっています。従来のVR体験では、アプリストアからの複雑なダウンロードプロセスが必要でしたが、mr.puma.comにアクセスするだけで体験が開始できる手軽さは革新的です。
特に注目すべきなのは、Meta Questコントローラーを使用した足のサイズ測定機能です。オンラインシューズ購入における最大の課題であるサイズ選択の不安を、VR空間内で解決しようとする試みは、EC業界全体に大きな影響を与える可能性があります。この技術が精度を向上させれば、返品率の削減や顧客満足度の向上につながるでしょう。
長期的な視点では、この技術は小売業界のデジタル変革を加速させる可能性があります。特に、高価格帯の商品や試着が重要な商品カテゴリーにおいて、VRショッピングは従来のオンライン購入体験を大きく改善する潜在力を持っています。ただし、VRヘッドセットの普及率がまだ限定的である現状を考慮すると、マスマーケットへの展開には時間が必要でしょう。
【用語解説】
WebXR
WebブラウザでVR(仮想現実)とAR(拡張現実)を実現するためのWeb標準API。専用アプリのインストールが不要で、ブラウザから直接XR体験にアクセスできる技術である。
MR(Mixed Reality)
現実世界と仮想現実を融合させて新たな体験を創造する技術。ARの発展形で、デジタル情報に直接触って操作することが可能で、360度全方位からの視認に対応している。
Horizon OS
Meta Quest VRヘッドセット用のオペレーティングシステム。WebXRコンテンツをブラウザから直接実行できる機能を搭載している。
1:1スケール
実物と同じ大きさで表示される機能。VR空間内で商品を実際のサイズで確認できるため、オンラインショッピングにおけるサイズ感の把握に有効である。
【参考リンク】
PUMA公式サイト(外部)ドイツの大手スポーツ用品メーカーPUMAの企業情報サイト。1948年創業以来、革新的なスポーツ製品とテクノロジーの開発を続けている。
Meta公式サイト(外部)旧Facebook社のMeta公式サイト。VR・AR技術とソーシャルメタバース事業を展開し、Meta QuestシリーズのVRヘッドセットを開発している。
WebXR Device API – MDN(外部)MozillaによるWebXR技術の公式技術文書。WebXRの基礎概念から実装方法まで詳細に解説されている日本語リソースである。
【参考記事】
PUMA and Meta Launch Immersive WebXR Shopping Experience(外部)WebXRショッピング体験について詳細に報じた記事。技術的な特徴と業界への影響について解説している。
【編集部後記】
興味深いのは、VR空間での足のサイズ測定という発想です。これまで「試着できない」というオンラインショッピングの根本的な制約が、ついに技術によって解決されようとしている瞬間に立ち会っているのかもしれません。mr.puma.comにアクセスするだけで、まるで未来の靴屋に足を踏み入れるような体験ができる—この手軽さが、VR技術の民主化における重要な転換点になりそうです。
みなさんは、10年後の自分がどのように買い物をしていると想像しますか?VRゴーグルをかけて、世界中のブランドの仮想店舗を巡り歩いている姿を思い浮かべると、なんだかSF映画の世界が現実になりつつあることを実感します。