Last Updated on 2025-05-01 16:00 by admin
AIスタートアップのHugging Faceは、2025年4月28日に3Dプリント可能なロボットアーム「SO-101」を100ドルから発売した。SO-101は、フランスのThe Robot StudioやWowrobo、Seeedstudio、Partabotと共同開発され、前モデルSO-100の後継機にあたる。6つのモーターを搭載し、カメラを用いたAI強化学習でピック&プレースなどの作業を自律的に学習・実行できる。組み立てが容易になり、改良されたモーターにより摩擦が減少し、自重を保持しやすくなった。価格は部品のみなら130ドル、Seeed Studioのキットは240ドル程度、完成品や仕入れ先、関税によって最大500ドル程度まで変動する。Hugging Faceは2025年春にPollen Roboticsを買収し、研究・教育向けヒューマノイドロボット「Reachy 2」(約7万ドル)も販売している。ロボット部門は元Tesla OptimusエンジニアのRemi Cadene氏が率いている。SO-101はオープンソースで設計データやドキュメントが公開され、教育・研究・開発用途で幅広いユーザーに利用されることが期待されている。
from Hugging Face releases a 3D-printed robotic arm starting at $100
【編集部解説】
Hugging Faceが発表した3Dプリント可能なロボットアーム「SO-101」は、AIやロボティクスの民主化を象徴するプロダクトです。SO-101は、パーツの大半を自宅の3Dプリンターで製作でき、組み立てやプログラミングもオープンソースで公開されています。従来は数十万円から数百万円かかっていたロボットアームの導入コストが、100ドル(約1万5,000円)からと大幅に下がりました。
SO-101の特徴は、6つのモーターによる6自由度の動作と、カメラを活用した強化学習による自律的なタスク習得です。例えば、レゴブロックをつかんで箱に入れるといった作業をAIが自ら学習して実行できます。この仕組みは、産業用ロボットの高度な知能化と同様の手法が、個人や教育現場でも手軽に試せることを意味しています。
今回のリリースは、Hugging FaceがPollen Roboticsを買収し、研究・教育向けヒューマノイドロボット「Reachy 2」(約7万ドル)の開発・販売にも乗り出すという、同社のロボティクス分野への本格参入の一環です。Reachy 2はVRテレオペレーションも可能で、SO-101とは異なる高度な研究用途を想定しています。ロボット部門は元Tesla OptimusエンジニアのRemi Cadene氏が率いており、AIとロボティクスの融合による新たな価値創造を目指しています。
このプロジェクトの意義は、単なる低価格化やDIY化にとどまりません。オープンソースで設計情報やソフトウェア、学習用データセットが公開されており、世界中の開発者や研究者が知見を持ち寄ることで、ロボティクス分野のイノベーションが加速する可能性があります。教育現場や研究用途だけでなく、趣味のエンジニアやスタートアップによる新サービス開発など、多様な活用が期待されます。
一方で、低価格・高性能なロボットアームが普及することで、セキュリティや安全性、悪用リスクといった課題も浮上します。特にAIによる自律動作は、誤作動や意図しない動作のリスクも伴うため、今後は規制や標準化の議論も進むでしょう。
SO-101の登場は「ロボットは一部の大企業や研究機関だけのもの」という時代を終わらせ、誰もがAIロボットを手にし、進化に参加できる新たなフェーズの到来を示しています。今後、こうしたオープンなロボティクス基盤を活用した新しいサービスやビジネス、コミュニティが次々と生まれてくることが予想されます。
【用語解説】
Hugging Face:AI・機械学習分野で世界的に有名なフランス系米国企業。オープンソースのAIモデルやデータセット共有プラットフォームを運営し、2025年にロボティクス分野へ本格参入。
SO-101(LeRobot SO-ARM101):2025年にHugging Faceが発表した3Dプリント可能な低価格ロボットアーム。6つのモーターによる6自由度の動作が特徴で、AIによる自律学習やピック&プレースなどの作業が可能。
オープンソース:設計図やソフトウェア、データセットなどを無償で公開し、誰でも自由に利用・改良できる仕組み。ロボット分野では「みんなで作るレゴブロック」のような発想に近い。
強化学習:AIが試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶ手法。ロボットアームにおいては、物体のつかみ方や動かし方を自律的に習得するために使われる。
Pollen Robotics:フランスのロボットスタートアップ。オープンソースのヒューマノイドロボット「Reachy」シリーズで知られ、2025年にHugging Faceに買収。Reachy 2は約7万ドルの研究・教育向け高度ロボットで、VRテレオペレーションも可能。
Remi Cadene:元Tesla Optimusエンジニアで、現在はHugging Faceのロボティクス部門を率いる技術者。
【参考リンク】
Hugging Face公式サイト(外部)AIモデルやデータセット共有・開発を行うプラットフォーム。ロボティクス事業も展開。
Pollen Robotics公式サイト(外部)オープンソースヒューマノイドロボット「Reachy」シリーズを開発。Reachy 2は約7万ドル。