curiosity「アバターカード生成サービス」——写真1枚でデフォルメアバターがその場でカードになり、ARで動き出す

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写真撮影からカード印刷まで数分でこなし、帰宅後はそのカードをスマートフォンのカメラにかざせば自分のアバターが現実空間に現れる——そんな体験が、iPadとプリンターだけで実現できるようになりました。


curiosity株式会社が提供を開始した「アバターカード生成サービス」は、撮影した人物写真をもとにAIがデフォルメアバターを自動生成し、その場でカードとして出力する。3DCGモデル化からリギングまでを一括処理し、生成されたアバターはARアプリ「AVATAVI(アバタビ)」を通じて現実空間に召喚・操作できる。

カードは複数デザインから選択可能で、iPadとプリンターのみで運用できるコンパクトな構成が特徴。初回体験は2026年5月16日・17日、栃木県宇都宮市のミナテラスとちぎで開催される「第2回 親子で愉しむ!トレインワークショップ」内で実施される。カード料金は1体500円。同社は法人・施設向けに導入を募集している。

From: 文献リンクアバターカード生成サービス提供開始のお知らせ|curiosity株式会社(PRTimes)

【編集部解説】

「写真からアバター」が、専門技術から数分の体験になった

3DCGアバターを作るには、長らく専門スタジオの工程が必要でした。全身を3Dスキャナーでスキャンするか、モデラーが手作業で形を起こし、リガー(リギング担当者)が骨格を仕込み、テクスチャを貼る——熟練者でも数時間、凝ったものなら数日かかる作業です。

その工程が、生成AIの進展によって急速に圧縮されてきました。Ready Player Me(旧称Wolf3D)は写真からの自動生成と豊富なカスタマイズオプションを提供しており、Avaturnは生成AIにより2D写真から「認識可能で写実的な3Dアバター」を出力、Avatar SDKのMetaPerson Creatorはセルフィー1枚からリアル/カートゥーン両スタイルの3Dアバターをブラウザ上で生成できるとしています。写真→3Dアバターを数十秒〜数分でこなすサービスは、ここ2〜3年で急速に層を厚くしました。

curiosityのAVATAVIは2021年8月31日のローンチ当初、アバターを使うにはURLやQRコードからの追加、あるいはReady Player Me、IN3D、リアルアバター制作スタジオなど外部サービスとの連携が必要でした。2023年9月7日にアプリ内でのアバター直接購入が可能になり、今回の「アバターカード生成サービス」では撮影から3DCG生成、リギング、カード出力までを自社の体験パッケージとして一気通貫にした、という流れになります。

「写真を撮るだけで、自分のアバターが完成する」というフレーズは、技術的に世界初の到達点ではないでしょう。しかしそれが専門スタジオの工程から、地方の家族向けイベントの一角に置けるパッケージになったこと自体が、現在地を示しています。

機材が軽くなると、XR体験の置き場所が変わる

XR体験はこれまで、施設前提のものでした。大型VRロケーション、テーマパークのアトラクション、商業施設に常設されたフォトブース——どれも数百万円規模の機材と専用スペースを必要としていました。

リアルイベント向けARを手がけるvartique(ByAR)は、自社経験を「3〜4年前まではARコンテンツ専用の機材が必要だったが、現在は最低限の機材で実施可能になった」と振り返っています。スマートフォンとタブレットの処理能力向上、AR SDK(ARKit、ARCore等)の成熟、そしてAIによる3Dアセット生成の自動化——これらが重なって、敷居が下がってきました。

curiosityが今回打ち出した「iPadとカード出力用プリンターのみで実施可能」という構成は、その流れの延長線上にあります。商業施設のポップアップ、地方の親子イベント、ふるさと納税の体験返礼品——展開先の選択肢は、機材重量と反比例して広がります。初回イベントが東京や大阪のフラッグシップ施設ではなく栃木県宇都宮市の親子イベントだったことは、このサービスの想定射程をよく表しているように見えます。

ただし、機材が軽くなることがそのまま「誰でも導入できる」を意味するわけではありません。撮影オペレーターの教育、子どもの肖像の取り扱い、生成失敗時のリカバリー、現場でのトラブル対応——機材以外のコストは現場運用に移り、サービス提供側のサポートが質を左右することになります。

なぜ「カード」なのか——日本のフィジタル文化が下敷きにある

ここで踏み込んで考えたいのは、生成されたアバターをわざわざ物理カードとして出力する設計です。スマートフォンにデータを送って完結させる方が、技術的にはシンプルでしょう。それでもなお、カードという選択をした意味は何か。

ひとつの補助線は、日本における「撮った自分を物として持ち帰る」文化の蓄積です。セガとアトラスが1995年7月25日に発売した「プリント倶楽部」を起点に、プリクラは2025年に30周年を迎えました。シールという物理メディアに自分の姿を焼き付け、プリ帳に貼り、友人と交換する——この30年で、日本の若い世代は「自撮りの物質化」を遊びの文法として身につけてきました。フリューはここ数年、既存プリ機の写りをAIで変換する「AI歴代バズプリ」(2024年)や、撮影後にAI似顔絵を生成する企画を展開しており、プリクラ業界もまた「盛れる写真」から「変身体験」へと軸足を移しつつあります。

世界に目を向けても、物理とデジタルを橋渡しする「フィジタル(Phygital)」の事例は増えています。任天堂のamiibo(NFCチップ入りの物理フィギュアが、ゲーム内でキャラクターを呼び出す鍵になる)、Pokémon GO(位置情報×AR×コレクション)、Amazon Anywhere×Niantic Peridot(ARゲームPeridot内から物理グッズを購入できる体験)——物理カード/物体が「デジタル体験への鍵」になる構造です。

curiosityのアバターカードも、この系譜に位置づけられます。カードを持ち帰る=思い出を物質化するプリクラ的な体験価値と、カードを読み取ってARで動かす=デジタル体験への入口というamiibo/フィジタル的な機能性。両者を一枚のカードに重ねた設計です。なお、リリースには「カードを読み取ることで、デジタル上でも楽しめる仕組み」とあるものの、読み取りがQRコード方式か、画像認識(マーカーレスAR)方式か、別の手段かは明示されていません。iPadと一般的なカードプリンターという機材構成からはNFCチップの埋め込みは現実的でないと推測されますが、確認の余地があります。

物理カードという選択は、技術的合理性だけで決まるものではないように見えます。財布や机に入れて持ち歩ける、誰かに見せられる、コレクションできる——所有感や見せびらかしの楽しみは、純粋なデジタル体験では得にくいものです。デジタル疲れが語られる時代に、あえてアナログな媒介物を挟む設計は、文化的にも体験設計としても、合理性以上の意味を持ちうると考えられます。

【用語解説】

リギング(Rigging)
3DCGキャラクターに骨格(ボーン)を組み込み、関節の動き方や変形ルールを定義する工程。リギングが施されることで初めてキャラクターが「動かせる」状態になる。従来は専門のリガーが手作業で行う工程だったが、AIによる自動化が進み、処理時間が劇的に短縮されてきた。

デフォルメ
対象の外見的特徴を誇張・簡略化し、記号的・可愛らしいキャラクター造形に落とし込む手法。「頭身を低くする」「目を大きくする」など、写実性よりも印象や親しみやすさを優先する。日本のアニメ・ゲーム文化に根ざした美学であり、「SD(スーパーデフォルメ)キャラ」とも呼ばれる。

XR(クロスリアリティ)
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)を包括する概念。「Extended Reality」の略でもある。現実とデジタルの境界をまたぐすべての技術・体験を指し、産業・エンタメ・医療など幅広い分野での応用が進んでいる。

フィジタル(Phygital)
Physical(物理的)とDigital(デジタル)を組み合わせた造語。物理的なモノやイベントがデジタル体験の入口になる、あるいはその逆の構造を指す。任天堂のamiiboや、POPMARTのIPフィギュアとアプリの連携などが代表例。

不気味の谷(Uncanny Valley)
ロボットや3DCGが人間に似すぎた場合に、かえって強い違和感や不快感を引き起こす現象。1970年に森政弘が提唱した概念。写実的な3Dアバター生成では回避が難しく、デフォルメスタイルはこの問題を構造的に迂回する手段のひとつ。

【参考リンク】

curiosity株式会社(外部)
XR・AI技術を活用したリアル体験エンターテインメントを企画開発するクリエイティブスタジオ。今回のサービスの提供元。

AVATAVI(アバタビ)(外部)
curiosityが開発するARアプリ。アバターを現実空間に呼び出し、撮影・動画録画が可能。今回のアバターカードと連携し、カード読み取りでアバターを召喚できる。

ミナテラスとちぎ 初回体験イベントページ(外部)
2026年5月16〜17日開催「第2回 親子で愉しむ!トレインワークショップ」の公式情報。アバターカード生成の初回体験が実施される会場。

Avaturn(外部)
セルフィー1枚から写実的な3Dアバターを生成するサービス。Unity/Unrealへの統合にも対応。写真→3Dアバター生成の技術水準を把握するための参照先。

Avatar SDK(MetaPerson Creator)(外部)
セルフィーからリアル・カートゥーン両スタイルの3Dアバターをブラウザ上で生成できるサービス。AI 3Dアバター生成の技術水準の比較対象として。

【参考記事】

AVATAVI リリース|curiosity, inc.(外部)
2021年8月31日のAVATAVIローンチ時の公式記事。当初は外部アバターサービスとの連携が必要だった構造を確認。今回のサービスが「一気通貫パッケージ」へ進化した流れを読み解く起点。

好きなアバターと旅するARアプリ「AVATAVI」アバター販売を開始!|curiosity株式会社(外部)
2023年9月7日、アプリ内でのアバター直接購入が可能になった経緯を伝える公式リリース。AVATAVIのアバター取得導線が段階的に内製化された流れを示す。

リアルイベント向けARコンテンツの導入方法|ByAR(vartique)(外部)
「3〜4年前まではAR専用機材が必要だったが、現在はiPad等の最低限の機材で実施可能」という業界変化を現場実務の視点から証言する記事。

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アバター技術がEC接客へ浸透する事例。curiosityのイベント×フィジタル体験と並ぶ「アバター×現実サービスの接点」の動向として。

【編集部後記】

写真を撮ってカードとして持ち帰る——プリ帳に貼り、財布に挟み、机の引き出しに溜めてきた所作の延長線上にある体験です。違いがあるとすれば、紙の一枚がアプリを通じて動き出すこと、そしてその先のアバターが本人そっくりではなく、少しだけ可愛らしく抽象化されていることでしょう。生々しさをやわらげながら、思い出は物として残す——この絶妙な間合いを、私たちはどんな顔で受け取り、子どもたちにどう手渡していけばよいのでしょうか。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。