Google Store 表参道、今夏オープン|米国外初の旗艦店が東京に誕生、AI体験も提供

スマートフォンを買う場所は、とうの昔にキャリアショップや家電量販店だけではなくなりました。Appleが直営店で「体験」を売り始めて以来、テクノロジー各社が世界各地に旗艦店を構えるようになりました。そしていま、Googleがその列に加わろうとしています。2026年夏、東京・表参道にオープンするGoogle Store 表参道は、米国外初の直営店として、ハードウェアだけでなくAI体験そのものを手渡す場所になります。なぜGoogleは世界最初の海外店舗に日本を選んだのか——その意味を、25年にわたる日本との関係から読み解いていきます。


2026年6月1日に明らかになった計画によれば、Googleは今夏、東京・東急プラザ表参道「オモカド」1階に直営店「Google Store 表参道」をオープンする。米国外初の旗艦店となる。

店内ではGoogle Pixel スマートフォン、Google Nest 製品、Google Fitbit 端末、アクセサリなど、Google製品およびパートナーブランドの幅広いラインナップを実際に手に取り購入できる。Google Store オンラインで注文した製品の店頭受け取りにも対応する。最新のAI体験や、Google製品・サービスが日常生活をサポートする様子を体験できるコーナーも設ける。

専任スタッフが常駐し、トラブルサポート・Google Pixelの店頭修理・初期設定のヘルプ・ワークショップへの対応を行う。Googleによれば、日本はアメリカ国外で初めて海外オフィスを設立した地であり、グローバル展開の原点に位置づけられている。最新情報はhttps://store.google.com/jp のニュースレター登録から確認できる。

From: 文献リンクGoogle Store を今年夏、東京・表参道にオープン

【編集部解説】

世界最大のテクノロジー企業が、米国外で初めて直営店を開く場所として東京を選んだ——この事実は、単なるビジネス拡張の話ではありません。

Googleにとって、日本は特別な市場です。Google Pixel スマートフォンの世界シェアは、主要市場の多くで5%程度にとどまっています。しかし日本市場は独特の構造を持ちます——Appleが圧倒的な首位を占め、残りのシェアを国内外のメーカーが争う構図の中で、Pixelは2025年時点で約10%のシェアを獲得。出荷台数ベースの年間ランキングでは2024年度通期にApple、Sharpに次ぐ第3位を確保し、2025年には2位に浮上するなど、存在感を急速に高めています。Fast Companyが指摘するように、Googleが本国アメリカで成しえなかった「主流市場での定着」を、唯一達成しているのが日本なのです。

では、なぜ日本でこれほどPixelが受け入れられたのか。明確な単一の理由があるわけではありませんが、複数の要因が重なっています。3大キャリアでの取り扱い開始が普及を後押しし、Pixel 7a・8aといった手の届きやすい価格帯のモデルが日本のベストセラー機種となり、コスパを重視する消費者層に刺さりました。それに加え、日本語処理の精度やカメラ機能への高い評価も積み重なっています。そしてGoogleは今年、日本限定カラー「Isai Blue」を展開するなど、日本を特別扱いする姿勢を一層鮮明にしています。

こうした文脈を踏まえると、今回の直営店開設がどこに立つかもよく見えてきます。Googleが日本に最初の海外オフィスを開設したのは2001年9月1日、渋谷でした。当時のGoogleはまだ創業3年。GmailもYouTubeもChromeも存在していませんでした。その日本が今、「米国外初の直営店」という次のマイルストーンに選ばれました。25年の歳月をかけた積み重ねの上に、Google Store 表参道は立ちます。

立地の選択も、語るところが多いです。東急プラザ表参道「オモカド」は、表参道と明治通りの交差点(神宮前交差点角)に位置する商業施設で、日本初出店や世界最大旗艦店が並ぶことで知られます。Apple Store 表参道が2014年にオープンした表参道という通りとも至近距離にあります。渋谷のオフィスから、表参道の直営店へ——Googleの日本への向き合い方が、働く場所から「ブランドを体感する場所」へと移行したことを、この立地は象徴しています。

Google Store が最初に店舗を開いたのは、2021年6月のニューヨーク・チェルシーでした。2026年5月に米国10店舗目をサンディエゴにオープンした直後に、東京店の発表が届きました。Apple Storeが2001年に始めた「製品を売る場所ではなく、体験を届ける場所」というモデルは、その後のテクノロジー直営店の基準となりました。Samsungも体験型の旗艦店を各地に展開しています。Google Store のモデルも同じ文法で語られますが、今回の表参道店が強調するのは「AIの体験」という点で、一歩踏み込んでいます。スマートフォンを手に取り、スタッフに使い方を教わり、修理を依頼し、ワークショップに参加する——こうした行為を積み重ねることで、ユーザーはブランドとの関係を深め、単なる「Androidユーザー」ではなく「Pixelユーザー」としての自己同一性を育てていきます。これは、日本市場でのシェアをさらに固めるための投資として読めます。

Pixelが世界で最も愛されている市場に、Googleが「会いに来た」——そのシンプルな事実は、25年間の関係の深さを反映しています。オモカドが日本初出店や世界最大旗艦店を集めてきた施設であることも、Googleが表参道を選んだ文脈のひとつとして読み取れます。Google Storeが表参道で何を見せるかは、開店後に初めて問われることになります。

【用語解説】

Google Nest
Googleのスマートホーム製品ブランド。スマートスピーカー(Nest Hub)、スマートカメラ、スマートサーモスタットなどを展開。Google AssistantおよびGemini AIと連携し、家電の音声制御や自動化を担う。

Google Fitbit
GoogleがFitbitを2021年に買収して形成したウェアラブル製品ブランド。スマートウォッチおよびフィットネストラッカーのラインナップを持ち、健康管理・活動量計測・睡眠追跡などの機能を提供する。

東急プラザ表参道「オモカド」
東京・渋谷区神宮前(表参道と明治通りの交差点角)に立地する商業施設。日本初出店や世界最大旗艦店となるブランドが入居することで知られる。建築家・中村拓志氏がデザインした万華鏡状のエントランスが特徴。

【参考リンク】

Google Store(日本)(公式)
Google 製品の日本向けオンラインストア。Google Store 表参道の最新情報はニュースレター登録で受け取れる。

Google Pixel 公式サイト(日本)(公式)
Pixel スマートフォン全ラインナップの製品詳細・価格・購入ページ。

Google Nest 公式サイト(日本)(公式)
スマートスピーカー・スマートカメラ・スマートディスプレイなど、スマートホーム製品のラインナップ。

Google Fitbit 公式サイト(日本)(公式)
スマートウォッチ・フィットネストラッカーのラインナップと健康管理機能の紹介。

東急プラザ表参道「オモカド」(施設公式)
Google Store 表参道が入居する商業施設。フロアマップ・テナント・アクセス情報。

Google Store 米国(店舗情報)(公式・英語)
米国内の既存 Google Store 店舗一覧。チェルシー(NY)など全10店舗の概要を確認できる。

【参考記事】

Google Pixel 10a、実は日本が主戦場だった(Fast Company、2026年4月)
米国でマイナーなPixelが、なぜ日本でのみ主流市場に定着したかを分析。日本限定モデル展開の背景を詳報。

Google debuted its 10th US store in tough field for technology giants(CoStar、2026年5月)
サンディエゴ店オープンの詳報。Apple・Amazonとの競合環境におけるGoogle Storeの位置づけを解説。

Google is about to launch a Japan-Only Pixel and nobody saw it coming(Android Headlines、2026年4月)
Pixel 10a 日本限定カラーの発表と、日本でのPixelシェア約10%という数値の背景を解説。

How Google entered Japan in 2001(Japan Today、2026年4月)
2001年9月のGoogle Japan設立の経緯。NTTドコモとの提携や当時の日本の検索市場の状況を詳細に記録。

Doubling down in Japan(Google公式ブログ、2018年)
Google CEOが「Googleが3歳のとき、最初の海外オフィスを日本に開いた」と語ったブログ投稿。日本との関係を一次資料として確認できる。

Google Pixel Market Share Japan 2025 Trends(Accio、2025年9月)
日本におけるPixelシェアの推移データ。2021年の2%から2025年の約10%への成長軌跡を整理。

【編集部後記】

Google Store 表参道がオープンするこの夏、私たちはきっと「スマートフォンを買う体験」が静かに変わる瞬間を目撃することになります。ただ製品を手に取るのではなく、AIがどう日常に溶け込むかを体感する場所——その試みが、日本でどう受け取られるかはまだわかりません。問いたいのは、そこで私たちが何を感じるか、です。「便利だ」と思うのか、「少し怖い」と感じるのか、あるいはその両方なのか。Googleが25年かけて築いてきた日本との関係が、リアルな空間でどんな形を結ぶか、一緒に見届けてみましょう。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。