Googleは先月の大規模なUIデザイン刷新後も、Geminiオーバーレイの細部を着実に更新し続けています。フルアプリを開かずにどこまでできるか。その「ちょうどよい境界線」を、Googleはどう引いているのでしょうか。
GoogleはAndroid向けGeminiオーバーレイのプラスメニューを拡張した。これまでプラスメニューに表示されるツールは「画像」と「パーソナルインテリジェンス」の2つのみだったが、今回の更新で「動画」「音楽」「キャンバス」「ガイド付き学習」が新たに追加された。一方、「詳細リサーチ」はソースやファイルを入力するための拡張プロンプトボックスが必要なため、フルアプリ外での提供は見送られている。画面上部に並ぶ「スクリーン」「写真」「カメラ」「ファイル」「Drive」「ノートブック」には変更はないが、カルーセルUIが画面上方に移動したことで片手操作のしやすさがやや低下している。この変更はGoogleアプリの安定版バージョン17.32で展開が確認されている。
From:
Gemini overlay gets expanded ‘plus’ menu to do more without opening app|9to5Google
【編集部解説】
GoogleはAndroid向けGeminiオーバーレイのプラスメニューを拡張し、「動画」「音楽」「キャンバス」「ガイド付き学習」の4ツールを追加しました。小さな変更に見えますが、この調整が示しているのは、Googleがオーバーレイをどのような体験として設計しようとしているかという意図の問題です。
Geminiオーバーレイは、Androidの画面上にフローティング表示されるAIアクセスUIです。フルアプリを起動しなくても、他のアプリを使用中でも呼び出すことができ、Googleアシスタントの後継として位置づけられています。Googleが2025年に表明し2026年に実施されているGoogleアシスタントからGeminiへの移行にあたり、このオーバーレイはGeminiをAndroidという「どこにでも召喚できるアシスタント」として機能させるための仕組みです。
ただし、このオーバーレイの設計は一直線ではなく、試行錯誤を繰り返しています。2026年3月にフルツールメニューを備えたオーバーレイの再設計が行われ、Deep researchを含む複数のツールがオーバーレイから利用できる状態になりました。4月にはさらに添付ツールと統合したプラスメニュー方式に再設計されています。しかしGoogle I/O 2026(5月)でのNeural Expressive刷新の際、オーバーレイ側のプラスメニューが「画像」と「パーソナルインテリジェンス」の2ツールに絞り込まれ、それ以外のツールがオーバーレイから一時的に外れる形になりました。今回の更新はその再拡張です。
このサイクルから読み取れるのは、Googleがオーバーレイに「どこまで詰め込むか」を慎重に調整しているという姿勢です。今回も「詳細リサーチ(Deep research)」だけは明確に除外されており、その理由として元記事はソースやファイル入力のための「拡張プロンプトボックスが必要」であることを挙げています。言い換えると、フルアプリが必要な「重い作業」と、オーバーレイで完結できる「軽い作業」を機能ベースで区別しているわけです。画像・動画・音楽・キャンバス・ガイド付き学習はいずれも「起動して即使える」ツールである一方、Deep researchはソースを選び、ファイルを参照し、長いプロンプトを組む必要がある作業です。この線引きは一定の合理性を持っています。
なお、今回カルーセルUIの位置が画面の上方に移動したことで、片手操作がやや難しくなったと元記事は指摘しています。機能を増やすほど画面の使い方がタイトになるという構造的なトレードオフを示す指摘であり、オーバーレイが多機能化していく中で避けられない課題です。フルアプリを開かずに完結できる体験を広げることと、コンパクトかつ片手で使いやすいUIを保つことは、ある段階で競合しはじめます。
【用語解説】
Geminiオーバーレイ
Androidの画面上にフローティング表示されるGeminiのUI。他のアプリを使用中でも呼び出せる常駐型のアクセスポイントで、GoogleアシスタントのAndroid上での後継として機能する。Googleアプリをデフォルトのアシストアプリに設定した場合に利用できる。
Neural Expressive
Google I/O 2026(2026年5月)でGoogleが発表したGeminiアプリの新デザイン言語。流体アニメーション、鮮やかな色彩、新しいタイポグラフィ、触覚フィードバックを特徴とする大規模なUI刷新。
プラスメニュー(+メニュー)
Geminiオーバーレイ上のプラスボタンをタップすると展開されるボトムシート。添付ファイルの選択(スクリーン・写真・カメラなど)とAIツールの選択が一か所にまとめられている。
詳細リサーチ(Deep research)
Geminiのツールの一つで、複数の情報源をウェブ上で調査し、長文のレポートを生成する機能。ソースやファイルを指定するための拡張プロンプトボックスが必要なため、オーバーレイからは利用できない。
カルーセル
横方向にスクロールする選択式UI。Geminiオーバーレイのプラスメニュー上部に表示され、スクリーン・写真・カメラ・ファイル・Drive・ノートブックへのアクセスに使う。
【参考リンク】
Google Gemini(外部)
GoogleのAIアシスタント「Gemini」の公式サイト。Geminiアプリの機能概要、プランの違い、各種ツールの説明を確認できる。AndroidおよびiOS向けアプリのダウンロードリンクも提供。
Gemini Apps ヘルプ(Android版 使い方)(外部)
GeminiオーバーレイをAndroidで使う方法を説明するGoogleの公式ヘルプページ。デフォルトアシスタントの設定方法と、オーバーレイの起動方法を確認できる。
【参考記事】
Gemini overlay and Gemini Live start rolling out big Android redesign|9to5Google(外部)
2026年4月時点のGeminiオーバーレイ再設計を伝える記事。Deep researchを含む全ツールがオーバーレイから利用できた時点の仕様を記録しており、Neural Expressive刷新後の機能後退と今回の再拡張を対比するうえで有用。
Gemini app rolling out Neural Expressive redesign, 3.5 Flash, 24/7 Spark agent, & Daily Brief|9to5Google(外部)
Google I/O 2026でのGeminiアプリ刷新を伝える記事。Neural Expressiveデザイン言語の詳細、フルアプリでのツール構成、Gemini Sparkの発表内容を解説。今回の変更の出発点となった大規模再設計の内容を確認できる。
【関連記事】
Gemini、Androidでバックグラウンド動作を実現へ。フローティングボタンでマルチタスク革命
GeminiオーバーレイのUI進化はツール構成だけにとどまりません。他のアプリに切り替えても会話が消えない「バックグラウンド継続」の取り組みについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
Android 17 が Pixel に登場|Google が仕込む「AIが先回りする」OSへの転換点
GeminiオーバーレイはAndroid OSの進化と密接に連動しています。今夏のGemini Intelligence投入を含むAndroid 17の全体像については、こちらの記事で解説しています。
【編集部後記】
今回の更新は、一度失われた機能が段階的に戻ってきているという事実を示しています。UIの大規模刷新が既存の機能を一時的にリセットし、その後に再整備が続くというパターンは、Geminiオーバーレイに限らずGoogleのプロダクト開発によく見られる光景です。利便性の向上と使いやすさの維持を両立させる「ちょうどよい量」をどこに設定するか、私たちもこのオーバーレイの進化を追いながら考えていきたいと思います。












