CreateMusicAIは楽曲生成から音源分離、動画化までをブラウザ一つに束ねた野心的なAI音楽ツールですが、その足元では、Suno・Udioが背負う学習データ訴訟が新たな局面を迎えています。生成の便利さと、素材の出所への沈黙。この二つは、どこまで両立するのでしょうか。
TechFusion Labs LLCは2026年7月18日、AI音楽制作プラットフォーム「CreateMusicAI」に関するプレスリリースを配信した。同社によると、CreateMusicAIは2026年1月5日より提供されている。テキストや歌詞から楽曲を生成するAI音楽ジェネレーターを中心に、AI歌詞ジェネレーター、AIステムスプリッター、AIミュージックマスタリング、AIミュージックビデオジェネレーターを一つのプラットフォームに集約したサービスである。
楽曲は最大8分まで対応し、MP3またはWAV形式でダウンロードできる。歌詞生成は日本語、英語、韓国語、中国語などに対応する。ミュージックビデオ機能にはPhoto VideoとSinging Videoがあり、MP4動画として書き出せる。ステムスプリッターはボーカル、ドラム、ベースなどに分離する。対象ユーザーは動画クリエイター、ポッドキャスター、ミュージシャン、ゲーム開発チームなど。TechFusion Labs LLCの代表者はPR TIMESの会社情報で「YueWu Wang」と記載されており、本社はアメリカ・ワイオミング州シェリダンにあるとされ、2024年9月設立と公表されている。
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CreateMusicAI、AI音楽生成から音源編集・ミュージックビデオ制作までを一つのワークフローで提供
【編集部解説】
AI作曲は、ここ2年で「珍しい技術デモ」から「使えるツール」へと立ち位置を変えつつあります。テキストで指示するだけで、短ければ数十秒のうちに歌もの一曲が仕上がる——SunoやUdioが広めたこの体験は、クリエイターの制作現場にも入り込みはじめています。
そのなかでCreateMusicAIが打ち出したのは、「一曲つくって終わり」ではない発想です。
生成後の編集機能が限られる一部のAI作曲サービスでは、楽曲をダウンロードした時点で作業が区切られます。一方でCreateMusicAIは、そこから先——歌詞づくり、ボーカルや楽器の分離(ステム分離)、リファレンス音源に合わせたマスタリング、ミュージックビデオ化まで——を一つのサービス内でつなごうとしています。生成を「入り口」に置き、編集と共有までを地続きにしようとした点が、この製品の設計思想です。
ただし、競合にも生成後の編集機能はあります。Sunoは編集、ミキシング、ステム分離・書き出しに対応し、Udioもタイムライン編集やリミックス機能を備えています。一方、UdioはUniversal Musicとの提携後、音声・動画・ステムのダウンロードを停止しており、公式資料では独立したマスタリング機能も確認できません。CreateMusicAIの特徴は、生成、分離、マスタリング、動画化を一つのサービス内にまとめた構成にあると捉えるのが適切でしょう。
なぜ、いま「ワークフローの統合」なのでしょうか。
編集部は、この背景に音楽制作という行為そのものの変質があると見ています。動画、ポッドキャスト、ゲーム、広告、SNS——音が必要になる場面は広がる一方で、その多くは「作曲家に発注する」のではなく「制作者が自分でなんとかする」領域に移っています。プロ用のDAW(音楽制作ソフト)を覚える時間はないが、フリー素材では物足りない。その隙間に、生成から仕上げまでを担うツールの居場所が生まれています。これは記事執筆時点で市場統計に裏付けられた事実というより、複数の製品が同じ方向へ機能を広げていることから読み取れる、編集部の見立てです。
一点、事実関係を補っておきます。
このプレスリリースでは代表者名が「YueWu Wang」と記載されていますが、CreateMusicAIが2026年1月に英語圏(PR Newswire)で発表した際は、創業者として「Alex Wong」と記載されていました。両者が同一人物なのか、複数の関係者がいるのかは、公開情報からは判断できません。また、本社所在地や設立時期は、いずれもPR TIMESに登録された会社情報に基づく自己申告であり、公開登記資料からの独立確認はできていません。読者としては、運営主体がTechFusion Labs LLCを名乗る事業者であるという点を押さえたうえで、細部は今後の情報開示を待つのが妥当でしょう。
そして、この製品を語るうえで避けて通れないのが「学習データ」の問題です。
AI作曲の代表格であるSunoとUdioは、2024年6月、Sony Music、Universal Music、Warner Music系のレコード会社から著作権侵害で提訴されました(RIAAが主導し、原告は各レコード会社)。その後、和解の動きはレーベルごとに分かれています。Warner MusicはSuno・Udioの双方と和解し、Universal MusicはUdioと和解しました。UdioはWarner・Universalとの提携を通じ、許諾・承認済みの音楽で学習する新プラットフォームの開発を進めています。SunoもWarnerとの提携で、許諾済みモデルへの移行を表明しています。一方で、Universal MusicのSunoに対する訴訟、そしてSony Musicによる両社への訴訟は、記事執筆時点でも続いています。
つまり、「レーベルが一斉に和解した」わけではなく、係争と和解が入り混じったまま、法的な決着が持ち越されているのが現状です。さらに、大手レーベルの和解ではカバーされない独立系アーティストが、自分たちの楽曲が無断で学習に使われたとして、2025年以降に別途集団訴訟を起こしています。
つまり、いまAI作曲ツールを選ぶことは、その裏側にある「何を学習したのか」という問いと無関係ではいられない、ということです。
CreateMusicAIは、同サービスで生成された楽曲を「ロイヤリティフリー(著作権使用料不要)」とうたっていますが、基盤モデルの学習データの出所については、このプレスリリースでも公式規約でも明示されていません。これは「無断学習している」という意味ではなく、あくまで「開示されていない」という事実です。
商用利用を前提にするなら、利用プランと利用規約の確認が欠かせません。ここには注意すべき点があります。CreateMusicAIの利用規約は生成された「すべての音楽」をロイヤリティフリーで商用利用可としている一方、料金ページでは権利を所有できるのは「有料プランで生成したトラック」と限定的に読める記述になっており、公式文書間で説明が食い違っています。無料プランで生成した楽曲の商用利用可否は、契約上あいまいなまま残されています。
加えて、契約上「権利を所有する」とされていても、純粋なAI生成物に著作権が成立するかは別の論点です。米国著作権局は、AIを用いた作品でも、人間が創作した表現部分は著作権で保護され得る一方、純粋にAIが生成した部分は保護対象にならないとの整理を示しています。ロイヤリティフリーであることと、著作権で守られることは、イコールではありません。
編集部としては、CreateMusicAIのようなオールインワン型ツールを、生成AIが「作る道具」から「仕上げて届ける道具」へと重心を移していく流れの一例として捉えています。これは確定した業界の総意ではなく、複数製品の機能拡張から読み取れる方向性です。
生成の精度が横並びになっていくほど、勝負どころは「生成の先」——編集のしやすさ、動画化のスムーズさ、そして権利の透明性——に移っていくのではないか。CreateMusicAIが8分の長尺や複数言語の歌詞、リップシンク動画までカバーしているのは、その競争軸を意識した構えだと読み取れます(ただし、これが経営上の「先読み」によるものかどうかまでは確認できません)。
最後に、この製品が明言している姿勢に触れておきます。CreateMusicAIは「音楽制作のすべてを自動化することは目指していない」と述べています。どの表現を選び、どこを直し、どの場面で使うかを決めるのは人間だ、と。生成AIが創作の主導権をどこまで人に残すのか——その問いに対する一つの答えとして、この一文は記憶にとどめておく価値があります。
【編集部後記】
CreateMusicAIの「AIステムスプリッター」に、手持ちのMP3を一つアップロードしてみる。ボーカル、ドラム、ベースが別々のトラックに分かれて出てくると、完成した楽曲が実は何層の音でできていたかが目に見える形で立ち上がる。生成だけでなく「分解」までブラウザで完結する。ここで残るのが、学習データの出所だ。Sony MusicがSuno・Udioを相手に続ける著作権訴訟は、2026年6月29日に、SonyがUdio訴訟へ3万442件の録音物を追加するために行った申立てが却下されるなど手続きが動き続けており、マサチューセッツ連邦地裁のSuno訴訟における主要なフェアユース判断は、2027年以降に持ち越される見通しだ。この係争の帰結が、CreateMusicAIのようにロイヤリティフリーを掲げる後発サービスが立つ土台そのものを、どう塗り替えるのか。
なお、本稿の公開直前にあたる2026年7月20日、Sony Musicは、旧訴訟への追加申立てで示された録音物のうち3万117件を対象として、Udioに対する別の著作権侵害訴訟をニューヨークで提起した。この3万442件の録音物を旧訴訟へ加える申立ては、6月29日に裁判所が却下していた。新訴訟が列挙する3万117件の録音物のすべてについて故意侵害が認定され、各件に法定上限15万ドルが適用されると仮定した場合、法定損害賠償の理論上の上限は約45億ドルとなる。これは実際に認定された賠償額や、判決額の予測を示すものではない。旧訴訟は333件の録音物を対象に継続し、新訴訟は別事件として進むことになる。AI作曲をめぐる権利の攻防は、記事化のさなかにも動き続けている。
【用語解説】
ステム分離(AIステムスプリッター)
一つに混ざった楽曲データを、ボーカル・ドラム・ベースなどのパートごとに取り出す技術である。完成した音源からのパート分離は深層学習以前から信号処理の分野で研究・実用化されてきたが、音の重なりが多い楽曲では精度に限界があった。近年はAIの深層学習によって、より実用的な品質で各パートを推定・抽出できるようになった。カラオケ音源づくりや練習用トラック作成、リミックスに使われる。なお、分離結果は元トラックそのものの復元ではなく、あくまで推定である。
マスタリング(AIミュージックマスタリング)
楽曲制作の最終工程で、音量感や全体の音のバランスを整え、配信・公開に耐える仕上がりにする作業である。本来は専門のエンジニアが担う領域だが、CreateMusicAIでは「参考にしたい音源(リファレンス)」を指定すると、その質感に近づける形で自動処理される。
DAW(ディー・エー・ダブリュー)
Digital Audio Workstationの略で、パソコン上で作曲・録音・編集・ミックスを行う音楽制作ソフトの総称である。プロの現場の標準ツールだが、操作の習得には時間がかかる。CreateMusicAIは、このDAWを使わずブラウザだけで制作を完結させることを狙っている(ただし高度な編集ではDAWへの書き出しも案内している)。
リップシンク動画(Singing Video)
人物やキャラクターの静止画像を、楽曲の歌声に合わせて口が動いているように見せるAI動画技術である。一枚の画像から「歌って見える」映像を生成する。
ロイヤリティフリー
楽曲を使うたびに使用料(ロイヤリティ)を支払う必要がない権利形態を指す。ただし「著作権がない」という意味でも、「第三者の権利を侵害しないと保証される」という意味でもなく、実際の利用範囲は各サービスの利用プランや規約に縛られる点に注意が必要である。
Suno(スノ)/Udio(ユーディオ)
テキスト指示から歌もの楽曲を生成するAI作曲サービスの代表格である。両社は学習データをめぐりレコード大手から著作権侵害訴訟を受け、AI音楽の権利問題を象徴する存在となっている。
RIAA(全米レコード協会)
Recording Industry Association of Americaの略で、アメリカの主要レコード会社が加盟する業界団体である。SunoやUdioに対する著作権侵害訴訟を主導しているが、訴状上の原告はSony、Universal、Warner系の各レコード会社であり、RIAA自身が原告というわけではない。
【参考リンク】
CreateMusicAI(公式サイト・日本語)(外部)
楽曲生成・歌詞作成・音源分離・マスタリング・MV制作をブラウザ上で提供するAI音楽制作プラットフォームの日本語版トップ。
CreateMusicAI|AI音楽ジェネレーター(外部)
ジャンルやムード、歌詞を入力して楽曲を生成し、MP3/WAV形式で書き出せる中核機能の紹介ページ。
CreateMusicAI|AIステムスプリッター(外部)
アップロードした音源をボーカル・ドラム・ベース等に分離する機能のページ。複数の音声形式に対応する。
【参考記事】
Judge denies Sony Music bid to add over 30,000 recordings to Udio lawsuit(Music Business Worldwide、2026年7月2日)(外部)
SonyがUdio訴訟に3万442件の録音物を追加する申立てを却下され、旧訴訟の対象が333件の録音物に据え置かれたことを裁判資料に基づき報じる。
Sony Filed a New AI Music Copyright Lawsuit Against Udio: Here’s Why(Billboard、2026年7月20日)(外部)
Sonyが7月20日、旧訴訟とは別に3万117件の録音物を対象とする新たな訴訟をUdioに提起したと報じる。旧訴訟は333件の録音物を対象に継続する。各録音物について故意侵害が認定され、法定損害賠償の上限15万ドルが適用されると仮定した場合の理論上の上限は約45億ドルとなる。
AI Music Copyright Lawsuit: Suno Discovery Shows Millions of Songs(TechTimes、2026年6月16日)(外部)
原告側の音声フィンガープリント分析により、Sunoの学習データから大手が権利を主張する多数の楽曲が特定されたと報じる(原告側の主張であり、裁判所の侵害認定ではない)。
Music Industry AI Lawsuits Tracker 2026: Live Status(Chartlex、2026年7月11日更新)(外部)
裁判資料を随時照合するトラッカー。Sonyが3万442件の録音物を旧訴訟へ追加する申立てを6月末に却下された経緯や、米国でのSuno訴訟における主要なフェアユース判断が2027年以降になる見通しを整理している。
TechFusion Labs Launches CreateMusicAI.ai(PR Newswire、2026年1月20日)(外部)
創業者を「Alex Wong」と記載する英語圏向け発表原文。日本語版の代表者名との違いを確認できる一次情報。












