AI需要に端を発するメモリ不足は、これまでMac miniやMacBook Airの品薄という形でAppleにじわじわと及んできました。その波が、いよいよ主力製品であるiPhoneの心臓部にまで届いています。
半導体アナリストのティム・カルパン氏によると、Appleと製造パートナー各社は、iPhone 18 Proと初の折りたたみ式iPhoneの生産に必要なモバイル向けDRAMの確保を急いでいる。
メモリチップの到着待ちで、TSMCが抱える未パッケージのAppleプロセッサーは約10億ドル相当にのぼるという。今年投入予定の新チップ「A20 Pro」はTSMCのN2プロセスで生産が順調に進む一方、パッケージングに必要なDRAMが届かずウエハーが積み上がっている。AppleはメモリをMicronに大きく依存し、SK HynixやSamsungからも調達している。この遅れは、中国のFoxconnとBYDが担う最終組立工程にも波及しかねない。背景にはAIインフラ投資による世界的なDRAM逼迫があり、Apple CEOのティム・クック氏も7月30日の決算会見でサプライチェーンの制約を認めている。
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Apple Scrambling to Secure Memory Ahead of iPhone 18 Pro Launch
【編集部解説】
MacBook Airと同じ震源
MacBook Airの品薄は、AppleがMac miniやMac Studioですでに経験していた供給逼迫が、主力ノートPCにまで広がった結果でした。今回のiPhone 18 Pro/iPhone Ultra向けDRAM不足も、震源は同じです。AIデータセンター向けの高帯域幅メモリ(HBM)が生産能力を優先的に吸収し、スマートフォンやPC向けの汎用DRAMが後回しにされる構造が背景にあります。
iPhone向けについて見ると、AppleはメモリをMicronに大きく依存し、SK HynixとSamsungで補っています。カルパン氏は7月、Appleがデータセンター向けメモリの最大の買い手ではなく、スマートフォン市場でも独占的な購買力を持たない以上、価格・供給の交渉力は限定的だと分析しています。世界最大級のテック企業でも、サプライヤーに対して以前ほど強く出られない構図は、Mac・iPhone双方の品薄に通底しています。
ティム・クック氏は4月の決算会見で「通常よりサプライチェーンの柔軟性が低下している」と述べており、7月30日の決算会見でも「非常に大きな制約に直面している」と同様の圧力を認めています。同じ問題が四半期をまたいで続いていることがうかがえます。
「品切れ」と「パッケージングできない」の違い
決定的に違うのは、詰まっている場所です。MacBook Airの場合、問題は完成品の納期でした。注文すれば商品自体は存在し、届くまでの時間が延びるという話です。
iPhone 18 Proのケースは、一段階手前で止まっています。TSMC製A20 Proチップのウエハーは歩留まり・生産量とも良好に進んでいますが、DRAMと組み合わせるパッケージング工程(Wafer-Level Multi-Chip Module、通称WMCM)が完了できず、チップ単体すら「製品」になれていません。逼迫がサプライチェーンのより上流で起きている分、今回の方が構造的には深いとも言えます。
規模の違いも見逃せません。組立各社への通達によれば、AppleはiPhone 18シリーズ全体で累計約2億台の生産を計画しているとされ、発売まで6週間という、年間で最も注目される時期に表面化しました。
まだ確定していないこと
現時点でわかっているのは、「初期需要(9月最初の出荷分)は満たせる見込み」ということまでです。MacBook Airのように今すぐ店頭で品薄が起きているわけではなく、生産工程内の警告シグナルの段階です。この情報は現状、カルパン氏個人の取材網に基づくもので、Apple自身が数字を公式に認めたわけではありません。発売後の再入荷ペースにこの遅れがどう波及するかは、9月の実際の販売状況を見るまで判断がつきません。
【関連記事】
MacBook Airにも半導体不足の波|Appleは中国製メモリの調達も模索
同じ震源から生じた品薄は、8月初旬にはMacBook Airの店頭在庫にまで及んでいました。
Micron Technology|時価総額でMetaに並ぶ急騰の正体と、「次のNvidia」論が見落としていること
この供給不足の構造的背景(RAMageddon)については、Micronの急騰を扱った記事で詳しく解説しています。
Broadcom・Apple、チップ供給契約を2031年まで延長|AI需要が問う「内製化」の限界
AppleはTSMCの生産能力面でもすでに同様の逼迫に直面していました。
Apple・TSMC、2nmチップ生産で独占契約 iPhone 18 Pro搭載予定
AppleがTSMCの2nm生産能力の半分を確保したのは2025年のことでした。
【編集部後記】
iPhone 18 Proの発売まで、もう数週間しかありません。今回の報道からわかるのは、まだ何も確定していないということです。初期需要は満たせる見込みとされていますが、その先の店頭在庫がどうなるかは、実際に発売日を迎えてみるまで私たちにも分かりません。値上げや品薄のニュースに接するたび、その裏側でどんな綱引きが起きているのか、想像してみる余地がありそうです。
【用語解説】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)
電源を切るとデータが消える揮発性メモリ。スマートフォンやPCの主記憶に使用され、モバイル機器向けには省電力設計のLPDDR規格が主流。
HBM(High Bandwidth Memory)
複数のDRAMを垂直に積層した高帯域幅メモリ規格。AIアクセラレータ向けの需要急増が、汎用DRAMの供給逼迫を招く主因とされる。
WMCM(Wafer-Level Multi-Chip Module)
TSMCが手がけるモバイル向け先端パッケージング技術。プロセッサーとDRAMをウエハーレベルで一体化する工程で、AI向け大型パッケージング技術CoWoSのモバイル版に相当。
TSMC N2プロセス
TSMC初のナノシート型トランジスタ構造を採用する2ナノメートル級の製造プロセス。2025年第4四半期に量産を開始し、A20 Proチップの製造に使われる。
A20 Pro
Apple初のTSMC N2プロセスで製造されるチップ。iPhone 18 Proへの搭載が見込まれる。
【参考リンク】
Culpium(Tim Culpanニュースレター)(外部)
半導体業界に精通するアナリスト、ティム・カルパン氏が運営する専門ニュースレター。今回の報道の一次情報源。
TSMC公式サイト:2nm(N2)プロセス技術ページ(外部)
A20 Proチップの製造に使われる2ナノメートル級プロセスの技術詳細。
Micron公式サイト:LPDDR5X製品ページ(外部)
Appleが主力調達先とするモバイル向けDRAM規格の技術情報。
SK hynix公式サイト(外部)
Appleの補完的な調達先である韓国メモリメーカーの公式サイト。
Samsung Semiconductor公式サイト(外部)
Appleの補完的な調達先であるDRAM・NANDメーカーの公式サイト。
Apple公式サイト(日本):iPhone(外部)
現行iPhoneラインナップの製品情報。
【参考記事】
Exclusive: Apple is Scrambling for DRAM Weeks Ahead of Ultra, iPhone 18 Launch — Culpium(外部)
今回の報道の一次情報源。ティム・カルパン氏による独自取材で、$1B相当のプロセッサー滞留を最初に報じた。
Inside Apple’s Chipflation Dilemma — Culpium(外部)
Appleのメモリ調達における交渉力低下を分析。データセンター最大手でも圧倒的な購買力を持たないAppleの立場を論じる。
$1 billion of iPhone 18 Pro chips ‘on the shelves awaiting packaging’ due to DRAM shortages — Tom’s Hardware(外部)
WMCM(Wafer-Level Multi-Chip Module)パッケージング工程の詳細を報じる。
Apple’s iPhone 18 Production Runs Into A Mounting DRAM Shortage — Forbes(外部)
Computerworldが「テック業界への赤信号」と評した点を紹介し、初期需要は満たせる見込みとの分析を追認。


















