AI modelとテレビ朝日、全編生成AIのCMを地上波初放送 サントリー商品が題材

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日曜午後の生中継に流れた30秒のコマーシャル。その映像は、すべて生成AIでつくられていました。ただ、テレビ朝日が示したのは技術そのものより、「映像のみに使った」という範囲の線引きと、3日後に制作過程を自社の深夜番組で見せるという段取りのほうでした。


AI model株式会社は2026年8月10日、テレビ朝日コンテンツ編成局「AIクリエイティブスタジオ」と、映像を全編生成AIで制作したテレビコマーシャルを共同制作したと発表した。

サントリービバレッジ&フードの「GREEN DA・KA・RA」を題材とした30秒作品「楽しい夏にはGREEN DA・KA・RA」篇で、2026年8月9日午後1時55分から、テレビ朝日系列のバスケットボール日本代表戦の生中継内ほかで全国放送された。テレビ朝日にとって、映像全編に生成AIを用いたテレビCMの放送は初となる。

生成AIを用いたのは映像のみで、テロップ・音声・ナレーションには使用していない。ナレーションは渡辺瑠海アナウンサーが担当した。制作過程は8月12日深夜の「AI大作戦」で取り上げられた。

From: 文献リンクAI model、テレビ朝日「AIクリエイティブスタジオ」と映像全編を生成AIで制作したテレビコマーシャルを共同制作、地上波放送!

【編集部解説】

2026年8月9日の日曜、午後1時55分。バスケットボール男子日本代表とモンゴル代表の試合を伝える生中継のなかで、30秒のコマーシャルが流れました。サントリービバレッジ&フード株式会社の「GREEN DA・KA・RA」。ハート型のモチーフに水分が浸透し、親子のお出かけ、運動、部活動と場面が移っていく。その映像に、カメラで撮影された場面はありません。

テレビ朝日にとって、映像を全編生成AIでつくったテレビコマーシャルの放送は今回が初めてです。注目したいのは、それが自社の告知ではなく、大手クライアントの実案件として、日曜午後の全国ネットの生中継枠に置かれたことです。技術の可能性を試す段階から、商品を売る現場へ持ち出す段階へ。置き場所の選び方に、その移行が表れています。

「全編AI」がどこまでを指すのか

この種のニュースで最初に確かめたいのは、「全編」という言葉が何を指しているかです。

テレビ朝日とAI model、双方の発表はこの点を先に線引きしています。生成AIを使ったのは映像だけで、テロップ・音声・ナレーションには使っていない。ナレーションは同局の渡辺瑠海アナウンサーが担当しています。「フルAI」という語感から受ける印象より、実際の適用範囲は絞られています。

この線引きは、テレビ朝日が2025年10月21日に決定した「AIポリシー」と重なります。同ポリシーは6つの基本原則を掲げ、その2番目「透明性と説明責任」で、AIの利用について可能な範囲でその事実や概要を視聴者や関係者に説明する、と定めています。使用範囲を先に開示する今回の発表は、この原則をリリースの書き方に落とし込んだものと読めます。

一方で、映像の生成に用いたモデルやツールの名称、人が各工程にどう関わったかといった点は、これから開示のかたちが整えられていく領域です。テレビ朝日のAIポリシーも、説明について「可能な範囲で」と限定を置いています。今回の発表で採られたのは、まずAIを使った範囲を明示するという形でした。どこまで開示するかという問いは、ここから先に残されています。

説明責任を、編成枠で回収する

そのうえで興味深いのが、8月12日深夜0時45分からのレギュラーバラエティ「AI大作戦」で、CMのメイキング風景が取り上げられたことです。

放送局であるテレビ朝日は、自社の地上波の番組枠そのものを使って制作過程を伝えられます。制作過程を番組コンテンツに変えられるという点は、放送局ならではの発信方法です。透明性の確保が開示作業にとどまらず、編成の一手になっている。テレビ局がAIを扱うときの独特の形が、ここに現れています。

細部にもう一つ、目を留めたいところがあります。CMのナレーションを務めた渡辺瑠海アナウンサーは、「AI大作戦」で進行役を担うレギュラー出演者でもあります。番組は2026年6月に始まり、AIクリエイティブスタジオのスタッフが制作しています。つまりCMの制作も、その過程を伝える番組も、同じ組織と同じ顔ぶれのなかで動いている。垂直に統合されているからこそ短期間で形になった一方、この構図が外からどう見えるかは、回数を重ねるほど問われることになりそうです。

ロケハンのない制作フローが意味するもの

AI model側の発表には、テレビ朝日のリリースにはない章があります。ロケーション手配・撮影・キャスティングを前提としない制作フローにより、季節・天候・出演者のスケジュールに左右されずに映像を設計できる、という説明です。

飲料のCMに引き寄せると、この意味は具体的になります。屋外でのロケ撮影を伴う場合、夏の情景を写した映像は、季節と天候の条件が揃うのを待つ必要があります。撮影を前提としない設計は、そこにかかる制約を組み替えます。季節商材の広告が、撮影条件に左右されにくくなる。制作の速度そのものより、企画の自由度に効いてくる変化だと思います。

なお、この制作フローで工数や費用がどれだけ変わるのかは、事例が積み上がるなかで示されていくことになりそうです。

誰が何を担ったのか

二つの発表を並べると、役割の書き方に違いがあります。テレビ朝日は自社を「制作」、AI modelを「制作プロダクション」と記しました。AI modelは自社を「AI映像制作」とし、両社の関係を「共同制作」と表現しています。同じ体制を、それぞれの立場から書いたものです。

AI modelの設立は2020年8月。2022年3月には、AIで生成したファッションモデルを使って、モデル撮影やアパレルECの「ささげ撮影」のコスト削減とリードタイム短縮を図るサービスを開始しています。その後、企業専属のAIモデルやAIタレントの生成へと領域を広げ、2026年1月には、SBIインベストメントや、キヤノンマーケティングジャパンがグローバル・ブレイン株式会社と共同で設立したCVCファンドなどを引受先とするプレシリーズBラウンドの資金調達を実施しました。アパレルECやモデル撮影の領域でサービスを展開していた会社が、設立から約6年でキー局の全国放送のCMに携わった。この分野の実装領域が広がってきた道筋として、記憶しておきたい事実です。

ここから開くもの

テレビ朝日ホールディングスは新経営計画「START UP テレ朝!!」でAI活用を5つのキーストラテジーの一つに位置づけ、その先駆けとして2026年4月に「AIクリエイティブスタジオ」を発足させました。今回のCMは、4月の発足から約4か月で出てきた成果ということになります。

キー局の全国枠で一本流れたという事実は、ほかの局やクライアントにとって、判断材料が一つ増えたことを意味します。少なくとも、映像全編に生成AIを用いたCMが地上波で実際に放送された事例が、一つ生まれました。次に問われるのは、どの規模で、どの領域まで広げられるかでしょう。

そのときに効いてくるのが、今回テレビ朝日が先に示した「どこにAIを使い、どこに使っていないか」という書き方です。表現の可能性と、視聴者への説明。この二つを同時に走らせられるかどうかが、生成AIを使った広告のこれからを決めていくのだと思います。CMを流し、その3日後に作り方を見せる。8月12日深夜の放送は、その最初の実践でした。

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【編集部後記】

メイキングが流れた同じ回に、もう一つ企画がありました。シニア施設を訪ね、約70年前の写真を生成AIで動かすというものです。全国ネットのCMをどうつくったかという話と、他人の家族写真が動き出す場面が、同じ1時間のなかに並んでいました。

同じ技術が、片方では商品を売る道具になり、もう片方では記憶に触れるものになる。この二つを一つの番組で無理なく扱えてしまうことに、しばらく手が止まりました。


【用語解説】

ロケハン
ロケーションハンティングの略。撮影に適した場所を事前に探し、光の入り方や周辺環境、許可の要否を確認する作業を指す。屋外撮影を伴う映像制作では、企画と撮影の間に必ず置かれる工程である。

ささげ撮影
アパレルECで商品ページをつくるための一連の作業を指す業界用語。「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字をとった呼称。商品点数が多く、シーズンごとの入れ替えも激しいため、負担の大きい業務として知られる。

AIタレント
実在の人物ではなく、生成AIによってつくられた人物像を、広告やプロモーションに出演させる形で用いるもの。企業が専属で保有し、契約期間や稼働時間の制約を受けずに起用できる点が、実在のタレント起用との違いになる。

AIクリエイティブスタジオ
テレビ朝日コンテンツ編成局に2026年4月発足した組織。テレビ朝日ホールディングスの新経営計画「START UP テレ朝!!」でAI活用が5つのキーストラテジーの一つに位置づけられたことを受けて設けられた。深夜番組「AI大作戦」の制作も担う。

AIポリシー
企業や組織が、AIを扱う際の姿勢と原則を対外的に示す文書。テレビ朝日ホールディングスのものは2025年10月21日に決定され、透明性と説明責任を含む6つの基本原則からなる。必要に応じて改定するとされている。

プレシリーズB
スタートアップの資金調達ラウンドの一区分。シード、シリーズA、シリーズBと段階が進むうち、シリーズAとシリーズBの間に置かれる調達を指す。事業モデルの検証が済み、本格的な拡大に向けた助走段階にあたることが多い。

CVCファンド
コーポレート・ベンチャー・キャピタルの略。事業会社が、自社の事業とのシナジーを見込んでスタートアップに出資するために設けるファンドを指す。純粋な財務リターンだけでなく、事業上の連携を目的に含む点が特徴である。

【参考リンク】

テレビ朝日 AIポリシー(外部)
テレビ朝日ホールディングスが2025年10月21日に決定したAIポリシー。透明性と説明責任を含む6つの基本原則を掲げている。

AI model株式会社(外部)
AI model株式会社の公式サイト。企業専属のAIモデルやAIタレントの生成、AI映像制作といった事業内容を掲載している。

テレビ朝日「AI大作戦」(外部)
テレビ朝日「AI大作戦」の番組公式サイト。AIクリエイティブスタジオのスタッフが制作する、水曜深夜のバラエティ番組である。

GREEN DA・KA・RA|サントリー(外部)
サントリー「GREEN DA・KA・RA」のブランドサイト。今回のCMの題材となった水分補給飲料のシリーズを紹介している。

【参考記事】

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テレビ朝日、映像フル生成AIのテレビCMを初制作 サントリー「GREEN DA・KA・RA」で8月9日放送(外部)
経営計画上の位置づけとAIポリシーへの言及を含めて、今回の発表を整理した報道である。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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