画像生成、音楽制作、AI英会話——これだけのAIサービスが、登録なしで無料で試せるとしたら、あなたはまず何を使ってみたいだろうか。ソフトバンクが2026年4月に放った新サービス「だれでもAI」は、そんな問いかけから始まっている。
ソフトバンク株式会社は2026年4月17日、AIサービスを気軽に体験できるサービス「だれでもAI」の提供を開始した。同サービスはアカウント作成やプロンプト入力不要で、ガイドに沿った操作のみで利用できる。
月額料金は無料。対象サービスはAI英会話スピークバディ、Canva Pro、CoeFont通訳、muute、Perplexity Pro、Picsart、SOUNDRAW、XZ(クローゼット)、同時通訳-Kotoba Technologies、ElevenLabsの10種類だ。
ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOのユーザーは「ソフトバンクユーザー向け特典」として各サービス契約時に割引や無料期間の特典を受けられる。2026年4月17日以降に販売される一部のAndroid搭載スマートフォンでは、ホーム画面に「だれでもAI」へのショートカットアイコンが自動追加される。
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話題のAIを気軽に体験できるサービス「だれでもAI」を提供開始|ソフトバンク

【編集部解説】
「だれでもAI」は、一言でいえばAIサービスの”試着室”です。画像生成や音楽生成、AI英会話といった複数の外部AIサービスを、アカウント登録もプロンプト入力も不要で体験できる、ソフトバンクが構築したポータル型の無料サービスです。
これまでAIツールの最大の参入障壁は、「何から始めればいいかわからない」という心理的なハードルでした。ChatGPTひとつ使うにも、アカウント登録・メール認証・言語設定といった手順が必要で、ここで離脱してしまうユーザーは少なくありません。「だれでもAI」はその壁をほぼ取り除いた設計になっています。
ただし、無料体験には回数制限があります。1体験あたり月2回まで利用でき、利用回数は毎月1日にリセットされる仕様です。「気軽に何度でも」というよりは、まず試してみるための入口として設計されていると理解するのが正確でしょう。
ビジネスモデルとして注目すべきは、ソフトバンクが直接AIを開発しているわけではない点です。Perplexity Pro、Canva Pro、ElevenLabsなど外部サービスを”棚”に並べ、自社回線ユーザーに割引特典を提供することで、契約継続の動機を強化するエコシステム戦略といえます。キャリアがAIのアグリゲーター(取りまとめ役)になるという新しい立ち位置を、明確に示しています。
ポジティブな側面として、AIリテラシーの底上げに寄与する可能性があります。スマートフォンのホーム画面にショートカットが自動追加される仕組みは、特にシニア層や非IT系ユーザーへのリーチを広げる効果が期待できます。
一方、潜在的なリスクも存在します。ユーザーが「使いやすさ」に慣れた後、無料・割引期間終了後に自動で有料契約へ移行される仕組みは注意が必要です。公式でも「ご自身で解約しない限り通常料金での契約へ自動移行される場合があります」と明記されており、いわゆるサブスクリプションの”解約忘れ”問題が生じる恐れがあります。なお、同時通訳-Kotoba Technologiesについては通常価格が月額99ドル(1ドル=166.7円換算で約16,503円相当)であるのに対し、特典期間中は月額990円と94%オフでの提供となります。
さらに大きな文脈で見ると、今回の「だれでもAI」はソフトバンクのAI戦略の一端に過ぎません。同社は同時期に、国産LLM「Sarashina」を活用した法人向け生成AIサービスを2026年6月から提供開始すると発表しており、コンシューマー向けと法人向けの両軸でAI事業を拡張しています。また、OpenAIとの合弁会社「SB OAI Japan」を通じたエンタープライズAIプラットフォームの国内展開も進行中です。
日本のAI普及率は欧米と比較してまだ低い水準にあるとされており、こうした”ゼロ摩擦”のサービス設計は、国内のAI活用底上げにとって重要なアプローチです。通信キャリアがAIの入り口を握るという構図は今後他のキャリアにも波及する可能性があり、業界全体の競争軸がAIリテラシー支援にシフトしていくかもしれません。
【用語解説】
LLM(大規模言語モデル)
Large Language Modelの略。大量のテキストデータを学習させた巨大なAIモデルであり、文章生成・翻訳・要約・対話など幅広いタスクをこなす。ChatGPTやClaude、Geminiなどがその代表例。
プロンプト
AIに対して行う「指示文」のこと。望む出力を得るために適切な言葉や表現で入力する文章を指す。質の高い出力には工夫が必要なため、「プロンプトエンジニアリング」という専門スキルも生まれている。
エコシステム戦略
自社のサービスや製品を中心に、複数の外部サービスや提携企業を囲い込み、ユーザーが継続的に利用し続ける環境を構築するビジネス戦略だ。AppleのApp StoreやGoogleのPlayストアが代表例であり、今回のソフトバンクはキャリアとして同様の立場を狙っている。
アグリゲーター
複数のサービスやコンテンツを一か所に集約し、ユーザーに提供する役割を担う事業者・プラットフォームのことだ。今回のソフトバンクは、AIサービスのアグリゲーターとして機能している。
ジャーナリングアプリ
日記のように日々の思考や感情を記録するアプリのこと。muuteはAIが記録を分析し、感情や思考パターンをフィードバックする機能を持つ。
【参考リンク】
だれでもAI|ソフトバンク公式サービスページ(外部)
登録不要・無料でAIサービスを体験できるソフトバンクの公式ポータルページ。対象サービス一覧・利用方法・体験回数の制限(月2回・毎月1日リセット)など詳細を掲載している。
ソフトバンク株式会社(外部)
日本の大手通信キャリア。AI・IoT・スマートロボティクスなど先端技術への投資を積極展開し、国内AI普及の旗手として存在感を高めている。
Perplexity Pro(外部)
AIを活用した次世代の回答エンジン。通常月額2,950円のところ、ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOユーザーは「だれでもAI」経由で6カ月間無料の特典が受けられる。
Canva Pro(外部)
AIを活用したデザインプラットフォーム。テンプレートや画像生成機能を備え、専門知識不要でプロ品質のビジュアルを作成できる。ソフトバンクユーザーは3カ月間無料で利用可能。
ElevenLabs(外部)
自然で高品質なAI音声を生成できるプラットフォーム。多言語対応・感情表現・音声クローニング技術でコンテンツ制作や通訳分野に活用されている。
SOUNDRAW(外部)
日本発の著作権フリーAI音楽生成サービス。ジャンル・テンポ・ムードを指定するだけでオリジナル楽曲を自動生成できる。ソフトバンクユーザーは1カ月間無料で体験できる。
【参考動画】
【参考記事】
Natural AI Phone in Japan: SoftBank’s 1-Year Exclusive(外部)
「だれでもAI」と同日発表のAIスマートフォン(93,600円)の日本独占販売を報じ、ソフトバンクのAI戦略の全体像を英語で解説している。
ソフトバンク、登録不要の生成AI体験「だれでもAI」提供開始|ケータイ Watch(外部)
Android端末へのアイコン自動追加・「5G LAB」からの移行など、プレスリリースを補完する実装詳細を国内テック専門メディアが報じた記事。
ソフトバンク、AIを”無料”で”気軽”に体験できる「だれでもAI」開始|ITmedia(外部)
サービスの位置づけをキャリアのAIポータル戦略として捉えた視点で報じたITmediaの記事。編集部解説の論点構成の参考となった。
国産LLM「Sarashina」を活用した生成AIサービスを2026年6月から提供開始|ソフトバンク(外部)
「だれでもAI」と同時期に発表された法人向けAIサービスの公式プレスリリース。コンシューマーと法人向けの両軸戦略の実態を確認する上で重要な資料。
Leveraging OpenAI’s Enterprise AI Platform “Frontier”|SoftBank(外部)
OpenAIとの合弁企業「SB OAI Japan」によるエンタープライズAIプラットフォーム展開を報じた英語公式プレスリリース。ソフトバンクのAI事業の大局的な方向性を把握できる。
【関連記事】
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「だれでもAI」でも中核を担うPerplexity Proについて、ソフトバンクユーザー向け無料キャンペーンの登録手順を詳細解説した記事。
Perplexityの登録ガイド:ソフトバンク以外のユーザー向けマニュアル
ソフトバンク系列以外のユーザー向けにPerplexity AIの登録・活用方法を解説。「だれでもAI」を経由せずに使いたい方はこちら。
Natural AI Phone、ソフトバンクが4月24日発売 米ブレイン製AIスマホが日本上陸
「だれでもAI」と同日発表のAIスマートフォンを報じた姉妹記事。ソフトバンクのAI戦略の全体像を補完する。
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ソフトバンク主導の国産AI基盤モデル開発を報じた記事。「だれでもAI」の背景にある同社のAI戦略を理解する上で参照価値が高い。
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ソフトバンクのOpenAIへの大規模投資を報じた記事。「SB OAI Japan」との関係性を含め、同社のAI事業の文脈を把握できる。
【編集部後記】
「AIって難しそう」と感じたまま、まだ触れていないサービスはありませんか?「だれでもAI」が目指しているのは、その入口のハードルをなくすことです。
ただ、気軽に使い始めた後の「気づいたら有料になっていた」という体験は誰にでも起こりえます。便利さの裏にある仕組みも一緒に見ながら、AIとの付き合い方を探っていけたら面白いと思っています。











