Googleが I/O のたびに「AIによる再発明」を主題に掲げるようになって、4年が経ちます。その言葉がいつも嘘だったわけではありません。ただ、今年のGoogle I/O 2026には、少し違う重力がかかっています。問われているのは「発表の新しさ」ではなく、過去に約束したものが「実際に動いているかどうか」です。
5月19日(日本時間20日午前2時)のキーノートを前に、今年のI/Oがどんな問いを内包しているのかを整理しておきたいと思います。
Googleの年次開発者会議「Google I/O 2026」が5月19日から2日間の日程で開催される(キーノートは日本時間5月20日午前2時)。今年の主要注目点は、AIモデル「Gemini」の次期バージョン(公式告知ではモデル更新が予告されている)、Gemini搭載のスマートグラス「Android XR Glasses」のプレビュー(sneak peek)、AndroidとChromeOSを統合した新プラットフォーム「Googlebook」の詳細、そしてAI Modeが通常の検索体験にさらに近づく可能性だ。
なお、Googleは5月12日に「The Android Show 2026」を先行開催しており、Android 17の詳細、Gemini Intelligenceのアーキテクチャ、Googlebookの概要をすでに公開済みだ。これにより本年のI/Oは、量的な発表の場というより、AIの「実装状況の証明」と「次のプラットフォーム戦略の旗立て」に絞られた構成になると予想される。
From:本記事は、Google I/O 2026開幕直前に各社が公開したプレビュー報道(Android Authority、Android Central、Yahoo Tech ほか)を一次的な手がかりとしつつ、I/O 2025およびThe Android Show 2026の公式発表内容と照合して構成している。
【編集部解説】
「AIによる再発明」——それは、いつから始まったのか
OpenAIのChatGPTが2022年末に公開され、Googleの本業である検索に初めて本格的な競合が現れました。それ以降、2023年から今年まで、I/Oは毎年AIを前景に置いた構成が続いています。今年で4回目です。
ただし「AIを中心に置く」ことと、それが「ユーザーに届く」ことは別の話です。I/O 2025でGoogleは、GeminiをWear OSのスマートウォッチ、Android Auto、Google TVに「数ヶ月以内」「年内」に展開すると述べました。その約束が今年のI/Oでどう着地しているかは、Googleの「実行力」を測る最初の試金石になります。
今年のI/Oには「証明」の役割がある
今年のGoogle I/Oが例年と少し異なるのは、このイベントが単なる発表の場ではなく「昨年の約束を履行できているか」の検証の場でもある点です。
Gemini on Wear OSについて言えば、「外出先で、メールに出てきた店(カフェなど)の情報を、スマートフォンに触れずに手首で引き出せる」という具体的なユースケースが昨年提示されました。壇上でそのデモが実際に動けば、AIがプラットフォームに「溶け込んでいる」証拠になります。スライドで「coming soon」が出れば、また来年に持ち越しです。
こうした「言葉ではなく動作」を確認する視点は、今年のI/Oを見るうえで特に重要です。
次期Gemini:競争の現在地はどこか
Geminiについては、I/Oの公式告知でモデル更新が予告されています。報道では大型更新になるとの見方もありますが、モデル性能の競争はすでにOpenAI、Anthropic、Meta、Mistral、DeepSeekが並走しており、「大型更新」の意味合いは変わりつつあります。
「性能が上がった」だけでは差別化にならない段階に入りつつあるなかで、Googleがどんな切り口でGeminiの進化を語るか——「より賢い」から「より深く統合されている」への転換点になる可能性があります。
Android XR グラス:Google Glassから13年
今年のI/Oで最も視覚的なインパクトを持つ発表になりそうなのが、Android XR Glassesのプレビューです。
Googleがスマートグラスに本格的に挑んだのは、2013年に一般向けの実証(Explorer Program)が始まったGoogle Glassでした。あのデバイスは技術的には先進的でしたが、「プリズム型の突起物を顔につける人間」という社会的違和感を越えられず、その後Glassは市場から退いています。13年の時間が何を変えたかといえば、まずMetaがRay-Banとの協業でスマートグラスを「普通のサングラス」に近い文脈で一般消費者向けに広めたこと。Googleは今回、Samsung・Gentle Monster・Warby Parkerとの連携で、ファッションとテクノロジーの両立を意識した設計を目指しています。
Googleは2025年12月のThe Android Show(XR Edition)で、軽量AIグラスと、レンズ内に表示を備えた「Display AIグラス」という2種類の方向性を公式に示しています。I/O 2026では、このうちどこまでが製品として壇上に立てるかが、今年の焦点になります。
Googlebook(Aluminium OS):Chromebookの次を問う
The Android ShowでGoogleはすでに、AndroidとChromeOSを統合した新プラットフォーム「Googlebook」を発表しました。複数のトップパートナーからGooglebook端末が今秋以降に投入される予定とされており、I/Oでは開発者向けのより詳細な説明があると見られます。
Chromebookは教育市場と法人向けで一定の存在感を持っていましたが、「Androidアプリが動くChromebook」という半端な存在として苦しんだ側面がありました。Googlebookは「AndroidがネイティブなラップトップOS」という逆転の発想で、そこにGeminiを深く組み込む構想です。これが実際にどう動くかは、Google Workspaceとの統合を含め、まだ見えていない部分が多くあります。
見ておきたい「言葉以外のサイン」
I/Oのキーノートを見る際に、発表内容そのものと同じくらい示唆的なのが「どう語るか」です。
Googleが昨年のI/Oで示したタイムラインを今年どう言及するか(言及しないか)、Android XRのデモが「動いている製品」として登場するか「コンセプト映像」で済ませるか、AI Modeの具体的な展開時期に言質を与えるか——これらは発表の「量」より「Googleが今どこにいるか」を正直に映し出します。
今年のI/Oは、Googleにとって発表の祭典であると同時に、4年分の約束に対する答え合わせの場でもあります。
【用語解説】
Google I/O
Googleが毎年開催する開発者向けカンファレンス。新OS、新サービス、開発ツールなどが発表される、同社最大級のイベントの一つだ。
Gemini
Googleが開発するマルチモーダル生成AIモデル。テキスト、画像、音声、動画を横断して処理でき、検索やAndroidなど多くの製品に組み込まれている。
Android XR
Androidを基盤に、スマートグラスやVR/ARヘッドセット向けに最適化されたプラットフォーム。複数メーカーがこの上にデバイスを開発する。
AI Mode
Google検索に組み込まれた対話型の検索モード。通常の検索とは別に、質問を会話形式で深掘りできる。
Googlebook(Aluminium OS)
AndroidとChromeOSを統合した、ノートPC向けの新プラットフォーム。Aluminium OSは基盤OSのコードネームとされるが、Google公式は同名称を明言していない。
The Android Show
Google I/Oに先行して開催される、Android関連発表に特化したオンラインイベント。2026年は5月12日に実施された。
【参考リンク】
What to Expect from Google I/O 2026(Android Authority)(外部)
I/O 2026で予想されるGeminiのアップデート、Android XRグラス、Aluminium OS関連の発表を整理した英語メディアの展望記事。
Google I/O 2026 Live Blog(Android Central)(外部)
Android 17やAndroid XRグラス、Gemini関連の発表を、I/O開催に合わせて随時更新する英語のライブブログ記事。
What to Expect from Google I/O 2026: Gemini(Yahoo Tech/Mashable)(外部)
AI Modeのデフォルト化の可能性や、Android XRグラスの2モデル構成など、I/Oの注目点を予想した英語記事。
Google I/O 2026: What to Expect(Gadget Hacks)(外部)
I/O 2025でGoogleが示した約束を振り返り、Geminiの各デバイス展開状況を検証した英語メディアの分析記事。
Google I/O 2026: What We’re Expecting(Yahoo Tech/CNET)(外部)
Googlebook、Android 17、Geminiの各プロダクトについて、I/Oで期待される内容をまとめた予想記事。
Google I/O 2026 公式サイト(外部)
Google I/O 2026の公式サイト。5月19〜20日のキーノートやセッションのライブ配信スケジュールを掲載している。
【関連記事】
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I/Oの前哨戦「The Android Show 2026」の発表を網羅した記事。本記事で触れたGemini Intelligence、Android 17、Googlebookの詳細を確認できる。
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本記事が「証明の試金石」と位置づけた、I/O 2025でのGeminiの多デバイス展開の約束を報じた記録。当時の発表内容を一次的に振り返れる。
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昨年のI/Oの主要発表をまとめた記事。今年の「答え合わせ」と読み比べる起点になる。
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Gemini IntelligenceがSamsung端末でどう実装されるかを解説した記事。「OSからインテリジェンスシステムへ」という今年の文脈を補強する。
【編集部後記】
AIを「中心に置く」と言うのは簡単で、それが本当に人々の暮らしに溶け込むのはずっと難しい。
毎年I/Oを見ていると、その距離感の難しさを改めて感じます。今年のキーノートを見るとき、私たちはどのくらい「動いているもの」と「動く予定のもの」を区別して見られるでしょうか。答えは、5月20日の早朝にすこし見えてくるはずです。












