DeepSeek V4正式版が間近、API料金にピーク割増導入か──7月24日に旧エンドポイント廃止

「とにかく安い」で知られてきたDeepSeekが、時間帯によってはAPI料金を2倍にする──そんな料金体系が正式版で導入されると報じられています。しかも割増がかかるとされる時間帯は、日本で働く私たちの日中と大きく重なります。安さを味方につけていたはずのモデルが、使う時刻によって表情を変え始めているのです。


2026年7月18日、Salio(@Mr_Salio)はXで、DeepSeek V4の一般提供が数日以内に始まる可能性があり、ProとFlashの各バリアントや、ピーク時・オフピーク時のレートを設けた新しいAPI料金体系が予定されていると投稿した。もっとも、DeepSeekの公開公式ページは本稿時点で「V4 Preview」表記のままで、正式版の提供開始やピーク料金の適用は確認できない。

パートナー向け告知や複数報道では正式版が7月中旬に予定されると伝えられている段階だ。DeepSeek V4自体は2026年4月24日にプレビュー版として公開・オープンソース化されている。V4-Proは総パラメータ1.6兆/アクティブ49B、V4-Flashは総パラメータ2840億/アクティブ13Bで、いずれも100万トークンのコンテキストに対応する。旧モデル名のdeepseek-chatおよびdeepseek-reasonerは、2026年7月24日15:59(UTC)に廃止される。

From: 文献リンクDeepSeek V4 Preview Release | DeepSeek API Docs

【編集部解説】

「DeepSeek V4がもうすぐ来る」——そう聞くと、まだ触れないモデルの話に思えるかもしれません。ですが、ここには少しだけ注意が必要です。

DeepSeek V4は、すでに2026年4月24日にプレビュー版として公開され、オープンソース化されています。つまり、多くの開発者はこの3か月、旧モデル名を通じて実際にはV4へ振り替えられた応答を受け取ってきた、というのが実際のところです。

では、今なぜ「登場間近」と語られているのか。焦点は新モデルの誕生ではなく、プレビューから「正式版」への“昇格”にあります。DeepSeekからAPI利用者に送られたとされる通知や、Tencent Cloudなどのパートナー告知では、正式版が7月中旬に予定され、モデル名はそのまま、機能の最適化と性能向上、そして新しい料金体系を伴うと案内されています。ただし、本稿の時点でDeepSeekの公開公式ページにはこの正式版の提供開始が反映されておらず、あくまで計画・通知の段階である点は押さえておく必要があります。

私がこの正式版で最も注目しているのは、料金の中身です。パートナー告知や報道によれば、これは「ピーク/オフピーク料金」と呼ばれる仕組みです。ただ、その言葉の印象とは裏腹に、これは値下げの話ではありません。報じられている料金表では、オフピーク時(=それ以外の時間帯)の料金は現行のまま据え置き、混雑する時間帯だけ料金を通常の2倍に引き上げるとされています。DeepSeekはかつて深夜帯のオフピーク割引を提供していましたが、その制度は2025年9月に終了しました。時間帯によって料金を引き上げる方式は、報道では今回が初のピーク・バレー料金と伝えられており、その狙いは資源配分を最適化し、サービスを安定させることにあると説明されています。

ここに、日本の読者にとって見過ごせない点があります。割増が適用されるとされるのは北京時間の9〜12時と14〜18時。日本は中国より1時間進んでいるため、これは日本時間のおよそ10〜13時と15〜19時に相当します。つまり、私たちが日中に仕事でDeepSeekのAPIを叩く時間帯の多くが、この割増ゾーンと重なる可能性がある、ということです。すべての業務時間が対象になるわけではなく、9〜10時や13〜15時のように割増を外れる時間帯もありますが、「激安」という評判だけを頼りにコストを見積もっていると、想定が崩れる場面が出てくるかもしれません。夜間バッチや緊急性の低い処理を割増帯の外へ回す、といった時間帯を意識した設計が、これまで以上に効いてくるでしょう。

一方で、確定している事実として押さえておきたいのが、7月24日の締め切りです。旧来の呼び出し名である deepseek-chat と deepseek-reasoner という旧モデル名(エイリアス)は、2026年7月24日15:59(UTC)をもって完全に廃止されます。廃止されるのはモデル名であって、api.deepseek.com などのAPIそのもの(ベースURL)ではありません。現在は旧モデル名が自動的にV4-Flashへ振り替えられていますが、この日を過ぎると、古い名前のままの呼び出しはアクセス不能になります。単純な実装であれば、モデル名を deepseek-v4-pro か deepseek-v4-flash に書き換えるだけで移行できますが、旧 deepseek-reasoner 相当の思考モードやツール呼び出しを使っている場合は、挙動が変わらないか確認しておくと安心です。心当たりのある方は、いま一度ご自身の環境を点検しておくことをおすすめします。

さらに視野を広げると、このニュースはDeepSeekという一社の話にとどまりません。V4-Proは総パラメータ1.6兆(アクティブ49B)、V4-Flashは総パラメータ2840億(アクティブ13B)。どちらも100万トークンのコンテキストを標準で備え、DeepSeek自身は、エージェント型コーディングでオープンソースの最高性能、世界知識ではオープンモデル首位(Gemini-3.1-Proに次ぐ位置)だと説明しています。これをMITライセンスのオープンウェイトで公開し、通常料金は西側の一部の主力モデルと比べて10分の1から数十分の1という水準で提供する。高性能なモデルを安く、しかも重みごと開放するというこの戦略が、AIのコスト構造に下押し圧力をかけ続けている、と私は見ています。ただし、ピーク時間帯には料金が2倍になるため、その価格差は時間帯によって縮まる点も忘れてはなりません。

最後に、情報との向き合い方について一つ。今回のきっかけは個人アカウントの観測投稿でしたが、DeepSeekは公式ドキュメントの末尾で、あえてこう書き添えています。「ニュースは公式アカウントのみを信頼してほしい。他チャネルの発言は当社の見解を反映しない」と。リークや観測が飛び交うほど注目度が高い証でもありますが、私たちが最初に立ち返るべき場所はどこか。ここは編集部としての解釈になりますが、こうした一次情報への敬意こそが、未来の技術と冷静に付き合うための土台になるのではないでしょうか。

なお、正式版の具体的な公開日や、割増料金の最終的な適用条件は、本稿の時点でDeepSeekの公開公式ページには反映されていません。数日単位で状況が動く領域ですので、実際に導入を検討される際は、必ず公式のModels & Pricingページで最新の数値をご確認ください。

【関連記事】

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【編集部後記】

「安い」という評判は、時に私たちの目を曇らせます。DeepSeek V4を追いかけながら、私が何度も立ち止まったのは、その一点でした。

これまで、DeepSeekのようなモデルは「とにかく安い」の一言で語られがちでした。けれど正式版で時間帯による割増が入るなら、これからは「いつ使うか」までがコストの一部になります。性能表だけを眺めていては見えてこない変化が、静かに始まっているように思います。

同時に、今回いちばん考えさせられたのは、DeepSeek自身が「公式アカウントだけを信じてほしい」と書き添えていたことです。正式版もピーク料金も、確度の高い通知や報道はあるものの、私が確かめたかぎり公開公式ページにはまだ現れていませんでした。だからこそ、最初に開くべき一次情報のありかを、私は自分の中でもう一度確かめておきたくなりました。

新しい技術の入口に立つとき、期待と不安はいつも隣り合わせです。この記事が、その最初の一歩を少しでも落ち着いて踏み出すための手がかりになれば、うれしく思います。


【用語解説】

一般提供(GA / General Availability)
限定的なテストや招待制の段階を終え、誰もが正式に利用できる状態で製品を提供すること。V4は本稿時点で公式表記がプレビュー版のままで、この正式提供が近いと報じられている。

プレビュー版
正式提供の前段階として、フィードバック収集や最終調整を目的に先行公開されるバージョン。V4は2026年4月24日からこの段階にある。

オープンウェイト/MITライセンス
学習済みモデルの「重み(パラメータ)」を公開し、誰でもダウンロード・改変・商用利用できる形で配布する方式。V4は制約の緩いMITライセンスで公開されている。ただし著作権表示の保持など、MITの条件は残る。

トークン
AIが文章を処理する際の最小単位。単語や文字の断片に相当し、入力・出力の量や料金の計算基準になる。

コンテキストウィンドウ(100万トークン)
AIが一度に読み込み・記憶できる情報量の上限。100万トークンは長編の書籍数冊分に相当するとされるが、実際の分量は言語やトークナイザーによって変わる。長大な資料やコードを丸ごと扱えることを意味する。

総パラメータとアクティブパラメータ
モデル全体の規模を示すのが総パラメータで、実際の処理ごとに稼働する一部が「アクティブ」。V4は必要な専門家だけを動かすMoE型のため、同規模の密なモデルを全稼働させる場合と比べて計算負荷が軽い。

エージェント型コーディング
AIが人間の指示を受けて、ツールの呼び出しやファイル編集などを自律的に連続実行し、プログラミング作業を進める使い方。V4-Proが得意とする領域とされる。

ピーク・バレー料金(ピーク割増)
時間帯によってAPI料金を変える仕組み。V4正式版では混雑時間帯に通常の2倍を課す方式が報じられている。オフピーク(それ以外の時間帯)の料金は現行どおりで、値下げは行われない点に注意。割引ではなく割増である。なお、この料金体系は本稿時点で公開公式ページには未反映。

deepseek-chat/deepseek-reasoner
V4以前から使われてきたAPIの旧モデル名(エイリアス)。現在はV4-Flashへ自動的に振り替えられているが、2026年7月24日15:59 UTCに廃止される。API自体(ベースURL)が廃止されるわけではない。

UTC(協定世界時)
世界共通の時刻基準。日本時間はUTCより9時間進んでいる。旧モデル名の廃止は7月24日15:59 UTC、すなわち日本時間の7月25日0:59にあたる。

【参考リンク】

DeepSeek Platform(外部)
DeepSeekのAPIキー発行や利用状況、公式料金の確認ができる、開発者向けの公式プラットフォームです。まず登録の入口となります。

DeepSeek API Docs|V4 Preview Release(外部)
V4プレビュー版の公式発表。モデル仕様や対応API、旧モデル名の廃止日まで、一次情報を確認できる公式のページです。

DeepSeek Models & Pricing(外部)
V4-ProとV4-Flashの公式料金表。入力・出力・キャッシュ別の最新レートを、導入前に必ず確認したい公式の価格ページです。

Google Gemini(外部)
本文で比較対象に挙げたGemini-3.1-Proを含む、Googleの生成AI「Gemini」の公式サイト。実際に試せる入口となります。

【参考記事】

TechNode|DeepSeek to launch V4 in mid-July with new peak-time API pricing(外部)
6月29日のDeepSeek通知を報じた記事。正式版7月中旬とピーク時2倍の料金導入を伝える、信頼性の高い中国テック媒体です。

Let’s Data Science|DeepSeek Plans Mid-July V4 Release With Peak-Hour Pricing(外部)
オフピークは現行料金のまま、ピークのみ2倍という仕組みを解説。バッチ処理を安価な時間帯へ回す実務的な含意も整理しています。

KuCoin|DeepSeek V4 Launches in Mid-July with Peak-Valley Pricing(外部)
ピーク時間帯(北京時間9〜12時・14〜18時)に2倍となる料金を、V4-Pro・Flashごとに人民元建てで具体的に示した速報です。

Coworker AI|DeepSeek API Pricing 2026: Full Cost Breakdown(外部)
V4-Flashが入力0.14ドル、V4-Proが出力0.87ドルなど公式の通常料金を整理。西側主力との価格差を比較した記事です。

explainx.ai|DeepSeek V4 Official Release: Peak Pricing Guide(外部)
正式版が新モデル名ではなくプレビューからの昇格である点を解説。機能最適化とピーク料金を伴う位置づけの参考とした記事です。

morphllm|DeepSeek V4: 1.6T MoE, 1M Context, Benchmarks, Pricing(外部)
V4-Proが総1.6兆・アクティブ49B、Flashが総2840億・13Bなど、仕様と数値、旧モデル名の廃止を詳細にまとめた技術記事です。

Developers Digest|DeepSeek Retires deepseek-chat and deepseek-reasoner on July 24(外部)
旧モデル名の廃止が7月24日15:59 UTCの猶予なしの締め切りであること、移行時の注意点を実務目線で解説した記事です。

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山本 達也
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。