クマが出没したとき、交通事故を見たとき、橋の劣化に気付いた時、正確な住所や場所を説明できるとは限りません。そうした言葉を地図の一点に変える機能が、自治体の公開地図に加わりました。
株式会社インフォマティクスは2026年7月24日、自治体公開型GIS「GC Navi」のオプション機能「AIチャット」に、自然文から地点や移動経路をGISデータとして生成し、地図上に表示する機能を追加した。
時間・場所・出来事・移動などを含む文章を入力すると、AIが内容を解析してGISデータを生成する。チャットへの入力に加え、アンケートの自由記述や報告書、活動記録をそのまま貼り付けることもできる。
想定利用者は、同社GISを導入している自治体の都市計画・防災・環境・福祉・観光などの部門、交通・観光分野の事業者、学校、自治会、一般住民。まずGC Navi向けに提供を開始し、今後は他の自社製品にも実装を進める予定としている。GC Naviは2026年7月現在、全国38自治体に導入されている。
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自治体公開型GIS向け「AIチャット」、自然文からGISデータを自動生成し地図化する機能を追加
【編集部解説】
座標も住所もない文章は、人が読むしかない
地図に情報を載せるには、その位置が特定されている必要があります。たとえばGC Naviのkintone連携では、レコードに緯度経度が入力されていることが条件とされ、なければオプションで住所情報から緯度経度を付与する、と案内されています。座標か住所があれば、位置の特定は機械的に済みます。
逆に言えば、そのどちらも書かれていない文章から場所を割り出すには、人が読んで判断するしかありませんでした。リリースが背景として挙げているのも同じ構図で、報告書や活動記録には位置や時間の情報が文章で蓄積されるものの、地図に載せるには位置情報を整理しGISデータとして登録する作業が必要だった、と説明されています。
新機能は、その部分にAIを入れます。時間・場所・出来事・移動を含む文章から、地点と移動経路を生成します。チャットへの入力だけでなく、アンケートの自由記述や報告書、活動記録をそのまま貼り付けて使うことも想定されています。
これまで地図に載せるまでに、調査して、特定する時間や手間が必要だった情報が、扱いやすくなるという変化です。
2026年に入ってからの生成AI関連の発表は、これで3報目になります。6月1日、GC Navi向けの生成AIチャット機能。6月25日、ChatGPTやClaudeなどの生成AIからGISデータの検索・取得や資料化を行える「空間情報MCPサーバー」。そして7月24日の今回です。自然言語で地図を読む側と、自然言語から地図を書く側が、2か月足らずで揃った形になります。
正確に言えないことが前提になる
この話は、位置情報(GPS)があれば済む話ではありません。端末が返すのはその人の現在地であって、伝えたい出来事が起きた場所とは限らないからです。かといって、住所で言えるとも限りません。土地に不案内なら町名を知らず、地元でしか使われない呼び名で通っている場所もあり、そもそも住所が振られていない地点もあります。調べれば分かることではありますが、調べるのは人です。照合して地点を特定するまでには時間も手間もかかります。そのうえ、伝える側に常に正確さを求めることはできません。
もう一つ、件数が増えたときにしか現れない問題があります。それぞれの通報が、同じ場所を指しているのかどうかです。
クマの出没を考えてみます。「○丁目あたりの川沿いで見かけた」「○○橋の近くにいた」「○○学校の裏を歩いていた」。三件の通報を文章のまま並べても、同じ一頭が同じ場所にいるのか、市内の三箇所で別々に目撃されているのか、通報を受けた段階ではすぐに判断できません。地点として地図に並べば、すぐにそこが分かります。半径数百メートルに固まっていれば一箇所の話であり、注意喚起も対応もその範囲に絞れます。離れて散らばっていれば、まったく別の話になります。同じ通報の束が、地図に載った瞬間に別の意味を持ちます。
言葉でしか書けない知識が、地図に残る
リリースの活用シーン表には、住民を情報源とする行が並びます。不審者情報や危険箇所の報告、地域交通計画のための住民意見、鳥獣の出没情報です。想定利用者にも一般住民が挙げられています。なかでも鳥獣被害対策の行は、出没日時や場所を公開型GISの地図上に表示する、と表示先まで書いています。住民が伝えたことが、住民の見られる地図に戻る形です。GC Naviには以前から、住民の投稿を管理者が確認したうえで公開する仕組みがあります。そこに文章から地点を起こす機能が重なれば、市民が地図というデータづくりに加わる経路になります。
こうした言葉がデータとして地点として積み上がっていけば、そこで暮らす人にも、初めて訪れる人にも役立ちます。行政の側は、どこから手を付けるべきかを並べて見られるようになります。
そのうえで、私たちが期待するのは、次は文章でなくてもよくなることです。6月の発表では、開発責任者が「誰でも自然な会話で必要な場所や情報を探せる」ことをコンセプトに挙げていました。音声入力や多言語対応といった形で、話すだけでよい、日本語でなくてよい、と続くのであれば、地図に届く人の範囲はもう一段広がるはずです。そのとき、地図とのやりとりは検索でも入力でもなく、会話に近いものになっているはずです。
【編集部後記】
地図をただ見るのではなく、言葉を介して情報を追加していく、または最適な情報を引き出すものに変わりつつあります。スマホに入っている地図アプリで、お店の場所、所要時間、乗換えの経路を調べることはできますが、歩きやすい道なのか、車が通りやすいのかまでをハッキリ見ることはできません。
地図にデータがない、ということは、データがあっても地図に反映させられない、というジレンマを含んでいることもあります。特に、企業や行政の調査ではわからないが、地元住民は知っているということはいくらでもあるのです。
【用語解説】
GIS(地理情報システム)
位置情報と、施設・道路・災害などの属性情報を組み合わせ、地図上で管理・検索・分析・表示するシステム。
公開型GIS
自治体などが保有する地理空間情報を、住民や事業者がインターネット上で閲覧できるようにしたGIS。防災・都市計画・福祉・観光などの情報公開に利用。
WebGIS
専用ソフトを端末に導入せず、Webブラウザから利用できるGIS。
GISデータ
位置を表す点・線・面と、名称・日時・分類などの属性情報を組み合わせたデータ。
MCP(Model Context Protocol)
生成AIが外部のデータベースや業務システムへ接続し、情報や機能を利用するための共通仕様。
【参考リンク】
GC Navi 製品情報|インフォマティクス(外部)
検索機能、住民投稿機能と承認フロー、対応地図データ、ウェブアクセシビリティ適合レベルなど、GC Naviの主要機能と動作環境の一覧。
株式会社インフォマティクス(外部)
1981年設立。GISを中心とした空間情報ソリューションを提供するソフトウェア企業。行政・警察・消防・社会インフラ・建設・金融分野へ展開。
kintone|サイボウズ(外部)
GC Naviとの連携先として公式に案内されている業務アプリ構築プラットフォーム。
【参考記事】
自治体公開型GIS(サービス紹介・導入事例)|インフォマティクス(外部)
公開データの例、オープンデータ対応、住民投稿機能の説明に加え、kintone連携に必要な条件(レコードへの緯度経度入力、住所からの付与オプション)を掲載。
「最寄りの避難所は?」にAIが地図で回答(2026年6月1日)|インフォマティクス(外部)
GC Navi向け生成AIチャット機能の提供開始を伝えるリリース。完全自社開発である旨、開発責任者のコメント、提供条件の注記を含む。
GISと生成AIをつなぐ「空間情報 MCPサーバー」を開発(2026年6月25日)|インフォマティクス(外部)
ChatGPTやClaudeからGISデータの検索・取得・資料化を行う仕組みのリリース。AIチャット機能との役割の違いを同社が整理。
【関連記事】
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