AIが書き、AIが読むウェブへ|Pew調査、ChatGPT公開後のウェブページの3分の1にAI執筆兆候

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ウェブ上の文章の書き手は、いまどれくらい人間が行っているのでしょうか。生成AIが日常に浸透して3年ほどが経ち、この問いに答える調査結果が相次いでいます。Pew Researchが8月20日に公表した最新の調査は、ChatGPT公開後に生まれたウェブページの実に3分の1超に、AI執筆の兆候が見られると報告しました。


8月20日に公表されたPew Researchの調査によると、ChatGPTの公開以降に作られたウェブページのうち35%に、AIによる執筆の兆候が見られることが分かった。調査はウェブアーカイブ「Common Crawl」から英語ページ約49万件を収集し、AI検出企業Open Pangramの技術で判定したものだ。

2026年7月収集分のランダムサンプル10,000件では約10%が「顕著なAI執筆の兆候」を示したが、これにはAI登場以前の古いページも含まれるため、ChatGPT公開(2022年11月)以降のページに絞ると35%まで上昇した。ドメイン別では、.comドメインが.eduや.gov(いずれも約1%)の約10倍の頻度でAI執筆の兆候を示し、.orgは4.6%だった。同調査は、インターネットのボットトラフィックが人間を上回ったとするCloudflareの報告の直後に公表された。

From: 文献リンクA third of web pages published since ChatGPT’s launch show signs of AI authorship, study finds

【編集部解説】

「ボットがボットの文章を読む」時代の実像

今回のPew Researchの調査結果は、単体で読むより、この記事が触れているもうひとつの数字と並べて読むと輪郭がはっきりします。TechCrunchの記事も指摘している通り、この発表は、Cloudflareが「ボットのウェブトラフィックが人間のトラフィックを上回った」と報告した直後というタイミングで出ました。私たちのウェブブラウジングの多くをボットが担うようになった一方で、そのボットが読みに行く先のページ自体も、AIによって書かれたものが増えている——今回の調査は、この「読む側」と「書く側」の両方がAI化しつつあるという構図の、書く側を定量化したものだと捉えられます。

数字の読み方には注意がいる

Pewの調査手法は、単純に「ウェブ全体の何割がAI製か」を測ったものではありません。まず2026年7月に集めた10,000件のランダムサンプルでは、AI執筆の兆候を示したページは約10%でした。しかしこのサンプルには、AI執筆ツールが存在しなかった時代の古いページも含まれています。そこでPewは、ChatGPT公開(2022年11月)以降に作られたページだけに絞り込みました。結果は35%——実に3倍以上に跳ね上がっています。

この絞り込みの手続き自体が、この調査の誠実さを示している部分だと私たちは考えます。「ウェブの3分の1がAI製」という見出しだけを切り取ると煽情的に響きますが、実際には「AIが書ける時代に作られたページに限れば」という限定がかかった数字です。

ドメイン別の内訳、どの母集団の話か

TechCrunchの記事は、ドメイン別の内訳として、.comドメインは.eduや.gov(ともに約1%)の約10倍の頻度でAI執筆の兆候を示し、.orgは4.6%だったと伝えています。

ここで一点、私たちが気になったのは、この内訳が「35%」の母集団(ChatGPT公開後のページに限定)についてのものなのか、それとも「10%」の母集団(古いページを含む2026年7月サンプル全体)についてのものなのか、TechCrunchの記事の書き方だけでは判然としない点です。Pewの一次資料の該当箇所を確認すると、この内訳は「2026年のサンプルにおいて」という表現で言及されており、35%に絞り込んだ後の数字というより、直近のサンプル全体の傾向として書かれているように読めます。断定はできませんが、記事を読む際は「.comが約10%」という数字を、先述の35%と同一の母集団と考えて比較しないほうが安全かもしれません。

また同じ一次資料には、ChatGPT公開当初はこの傾向が.com・.org・.edu・.govの間でほぼ同水準だったが、2026年のサンプルではドメイン間の差が開いた、という記述もありました。もしこの経緯を踏まえるなら、ドメイン間の差は「AIが書きやすい話題がどのドメインに多いか」よりも、時間の経過の中でドメインごとの発行主体がAI活用にどう向き合ったかという選択の違いを映している可能性があります。商業サイトは積極的に取り入れ、大学・政府機関は慎重、あるいは検出されにくい形で使っている——どちらの解釈も今回のデータだけでは決め切れません。この点は、Pewが今後、手法や生データをどこまで公開するかによって、もう少し輪郭がはっきりしてくるはずです。

検出ツールの限界、そして「読む側」への問い

TechCrunchの記事も釘を刺しているように、Pangramを含むAI検出ツールは万能ではありません。AIが書いていない文章を誤ってAI製と判定するケースもあり得ます。それでも記事は、データの規模が大きければ傾向としてはおおむね正しいだろう、と見ています。個々のページの判定精度と、集団としての傾向——この二つを混同しないことが、この種の調査を読むときの基本姿勢だと私たちは考えます。

そのうえで、emダッシュやオックスフォードコンマ、「it’s not X, it’s Y」といった言い回しの増加もAI執筆の兆候として挙げられている点は、示唆的です。人間の書き手自身が、AIが書く文体に影響を受け始めている可能性があるからです。AIが人間の文章を学習し、人間がAIの文体を真似る——この循環がどこまで進んでいるのかは、今回のデータだけでは測りきれません。

なお、今回Pewが調査対象としたのは英語のウェブページに限られています。日本語のウェブでも同じ傾向が見られるのか、それとも異なる形で進んでいるのかは、このデータだけでは分かりません。日本語圏を対象にした同種の調査が出てくるかどうか、私たちも注視していきたいところです。

【関連記事】

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ウェブを読む側では、すでにボットが人間を上回ったとする報告もあります。

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Pew Researchは以前にも、AI要約の普及がウェブサイトへのアクセスを減らしているとする調査を発表しています。

【編集部後記】

AIが書いた文章を、AIが読む。そんな循環がすでに動き出しているのだとしたら、私たちが「情報を読む」という行為の意味も、少しずつ変わっていくのかもしれません。emダッシュを見て「AIっぽい」と身構える前に、その一文が誰の、あるいは何の判断を経て生まれたのか、立ち止まって考える余地を持っていたいと私たちは思います。この循環がどこへ向かうのか、これからも注視していきます。


【用語解説】

AI執筆の兆候(significant signs of AI authorship)
文章そのものの「真偽」を断定する指標ではなく、AIモデルが生成しやすい語彙選択・文構造・展開パターンとの類似度を統計的に測る手法。人間が書いても該当語彙・構造を使えば検出に引っかかる場合がある。

トップレベルドメイン(.com/.org/.edu/.gov)
ウェブサイトのアドレス末尾につく分類。.comは商業、.orgは非営利団体、.eduは高等教育機関、.govは政府機関が主な利用者だが、取得自体に厳密な資格審査があるわけではないドメインも含まれる。

emダッシュ・オックスフォードコンマ
英文の文体的特徴。emダッシュは「—」の形をした長めのダッシュで文の挿入・強調に使われ、オックスフォードコンマは3つ以上の項目を並べる際に最後の「and」の前に打つコンマ。近年、AIモデルが多用する傾向が指摘されている。

【参考リンク】

Pew Research Center(外部)
世論調査やデータ分析を通じて、社会・メディア・テクノロジーの動向を発表する米国の非営利調査機関。今回のAI執筆兆候レポートの発表元。

Common Crawl(外部)
インターネット上の膨大なウェブページを定期的に収集・公開するオープンな非営利プロジェクト。今回の調査の元データとなった。

Open Pangramの紹介記事(外部)
AI検出企業Pangram Labsが技術「Open Pangram」を紹介するブログ記事。今回の調査で使われた検出技術の概要を確認できる。

Pangram(AI検出ツール)(外部)
テキストを貼り付けるとAI執筆の可能性をチェックできる無料機能があり、実際に体験できる。

AI on the Internet(外部)
AI生成コンテンツの実態を調べた複数の調査をまとめたページ。Pew以外の類似研究と比較したい場合の入り口になる。

Bots have now passed human traffic online(NBC News)(外部)
Cloudflareのボットトラフィックが人間を上回ったとする報告を伝える記事。ウェブの読み手・書き手双方でAI化が進んでいるという文脈が見えてくる。

【参考記事】

How Much of the Internet Is Written With AI? — Pew Research Center(外部)
調査そのものの発表元。ドメイン別内訳の母集団や、ドメイン間の差が時間とともに開いた経緯など、編集部解説での数値照合に使用。

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まお
おしゃべり好きなライターです。趣味は知識をためることとゲームをすること(ソシャゲや音楽ゲームが大好きです)。最近はAIの情勢や地政学の問題を勉強中。時折記者として会見や発表に赴いたり、インタビューを行ったりもしています。

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