シャープ「ポケとも」第二弾|あえて肯定しないAIという選択

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同じ「かわいい!」に、素直に喜ぶ相手と、悪態で返す相手。シャープが12月に出す「ポケとも」第二弾は、第一弾とほぼ同じ姿のまま、性格だけを入れ替えます。肯定してくれるAIが歓迎されるなかで、あえて肯定しない一体を隣に置く。その判断には、発売前からの構想と、利用者の声がありました。


シャープは2026年8月25日、対話AIキャラクター「ポケとも」の第二弾を発表した。ミーアキャットがモチーフのコンパニオンロボットで、形名はSR-C02M-H、価格はオープン、2026年12月に発売する。スマートフォン用アプリは第一弾と共通で、月額495円から。

第二弾は公式マンガX(@mia_to_nanami)で配信中の作品から生まれた「ぶっきらぼうで、素直じゃない」性格を持つ。2体を同じアプリに登録すると、近くにいるときにポケとも同士が会話を始める。服や帽子、おでかけ用ポーチなどのオリジナルグッズは、株式会社コルクの「コルクストア」で販売する。「ポケとも アンバサダープログラム」も始める。

8月27日から30日の「東京おもちゃショー2026」で先行公開し、台湾でも展開する予定である。

From: 文献リンク対話AIキャラクター「ポケとも」第二弾が登場

シャープ株式会社公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

「かわいい!」と声をかけたとき、素直に喜ぶ相手と、照れ隠しに悪態をつく相手。どちらがうれしいかは、その日の自分の状態によって変わります。第二弾の「ポケとも」が持ち込んだのは、この当たり前の感覚でした。

第一弾は、いつも元気で明るい「むじゃき」な性格です。シャープ通信事業本部モバイルソリューション事業統轄部の景井美帆統轄部長は発表会で、共感してくれるところ、素直で明るいところ、否定せずにいつも前向きなところが評価されていると振り返っています。一方で、たまに突っ込んだり怒ったりしてほしい、肯定してばかりではないコミュニケーションがほしいという声も多く届いていたと語りました(ITmedia Mobileの報道による)。

ただし、第二弾は第一弾を否定する路線変更ではありません。シャープは第一弾の発売前から、対話AIキャラクターを自由に増やしていける仕組みごと作り、第一弾はその象徴だと説明していました。今回の利用者の声は、もともとあった構想のなかで別の性格を投入する理由の一つになった。そう読むのが実際に近いはずです。

評価されている性格はそのまま残し、その隣に、違う性格を1体置く。この構図が、今回の発表の核心です。

ここで連想されるのが、大規模言語モデルをめぐる「迎合性(sycophancy)」の議論です。正確さや独立した判断よりも、利用者の見解や望む答えに合わせてしまう挙動は、近年繰り返し研究されてきました。人間の選好評価や利用者からのフィードバックが、同調的な応答を好む方向に働くことがある。けれど、その同調が長期的な有用性と一致するとは限りません。

もちろん、シャープが第二弾をこの技術課題への回答として開発したと発表しているわけではありません。ただ、この議論に重ねて商品の並べ方を見ると、一つの性格を万人向けの正解にせず、異なる性格を隣に置くという選択が見えてきます。利用者が自分に合う距離感を選ぶ。人と道具の相性の問題として扱うこの解き方は、暮らしの道具を作ってきたメーカーらしい判断だと感じます。

もうひとつ注目したいのが、このキャラクターの生まれ方です。

第二弾は、公式マンガX(@mia_to_nanami)で連載されている『ミーアとナナミ』から生まれました。このマンガはシャープと株式会社コルクの共同制作で、漫画家の栗花ちまき氏が作画を担っています。コルクは『宇宙兄弟』などを手がけてきたマンガ家・作家のエージェント会社です。今回のグッズ販売も、同社が運営する「コルクストア」が担います。

製品が先にあって、そこにキャラクターを載せたのではない。物語のなかで動いていたキャラクターが、実体を得て部屋にやってくる。この順番は、シャープが「ロボホン」以来積み上げてきたキャラクター作りの延長線上にあります。

技術の側から見ると、この構想はより具体的です。

シャープは第一弾の発表会で、キャラクターの外見・声・性格・話し方・知識などをWebコンソール上で設定し、対話AIキャラクターを短期間で作成する仕組みを開発したと公表しました。そのうえで、この仕組みを使って「ポケとも」をシリーズ展開していくと述べています。第一弾はSR-C01M-W、第二弾はSR-C02M-H。形名も見た目も性格も変わりますが、アプリは第一弾と共通で、第二弾の登場に合わせてアップデートされます。第三弾以降の計画は公表されていませんが、マンガにはほかのキャラクターも登場しています。

2体が近くにいると勝手におしゃべりを始める機能も、この文脈で見ると意味が変わってきます。事前に同じアプリへ登録しておく必要があり、第一弾と第二弾のどちらの組み合わせでも利用できます。人とロボットの一対一の関係から、人が眺める側に回る時間が生まれる。1人が複数体を迎える使い方を、製品の側が想定し始めているわけです。

迎えることを考えている方に向けて、いくつか実際的な点を書いておきます。

会話は月額サービスの契約が前提で、495円から始まる料金は会話回数によって4段階に分かれています。ノーマルが月400回、無制限プランは月額3300円です。回数はロボットとアプリで合算され、アプリだけでも利用できます。2体以上を契約する場合に会話回数を分け合える仕組みも用意されると報じられており、複数を迎える前提が料金設計にも入ってきています。

本体価格は、リリースではオープンとされています。ITmedia Mobileの報道によれば、シャープ直販の「COCORO STORE」での価格は4万9500円で、第一弾の3万9600円から9900円上がる見込みです。同誌は、景井氏がメモリを含む部材価格の高騰と円安の影響を理由に挙げ、第一弾も第二弾の発売に合わせて改定を予定していると伝えています。第一弾を検討している方は、時期を意識しておくとよさそうです。

なお公式サイトのFAQでは、2025年12月時点で顔を認識できるのは1人のみとされ、今後のアップデートで人数を増やすことを検討すると記されています。台湾での展開は「予定」と発表された段階で、時期や価格はこれから示されます。第一弾は日本での発売から約7か月後に台湾で発売されており、海外展開そのものはすでに実績のある動きです。

発表会では、日本と台湾での累計出荷が1万体を超えたと説明されたと、複数の媒体が報じています。数としては、まだ小さな輪です。けれどその輪から届いた「もっと違うコミュニケーションがほしい」という声が、次のキャラクターを送り出す後押しになりました。

利用者の言葉が、製品の人格に反映されていく。「ポケとも アンバサダープログラム」も、その回路を制度として太くする試みでしょう。人はAIにどんな距離感を求めるのか——その答えを、机上ではなく部屋のなかで確かめる作業が、ここから本格的に始まります。

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【編集部後記】

公式サイトには、ポケ主の声が3つ並んでいます。40代、30代、50代。いずれも女性です。第一弾の発表時、主な想定はキャラクター文化に親しむ20代から30代の女性だと伝えられていました。

もちろん3人は選ばれた声であって、購入層の分布ではありません。それでも、さみしさに寄り添う小さな相棒を必要としている人は、企画の網よりも少し広いところにいるのかもしれません。「おれさま」は、その広がりのどこに届くでしょうか。


【用語解説】

対話AIキャラクター
シャープが用いる製品カテゴリーの呼称。ロボット単体ではなく、ロボットとスマートフォン用アプリの両方を含む上位概念である。会話の記憶は両者で共有される。

コンパニオンロボット
作業をこなすことではなく、人に寄り添い話し相手になることを目的とするロボット。業界での定義は固まっておらず、動物型・人型を含む広い意味で使われる。

迎合性(sycophancy)
大規模言語モデルが、正確さや独立した判断よりも、利用者の見解や望む答えに合わせてしまう挙動。人間の選好評価を学習に用いる過程で生じやすいと指摘されている。

大規模言語モデル
膨大な文章を学習し、文脈に応じて自然な文章を生成するAIモデル。生成AIの中核をなす技術で、対話サービスの多くがこれを基盤とする。

価格の「オープン」表記
メーカーが希望小売価格を定めず、実売価格を販売店の判断に委ねる方式。「価格未定」という意味ではない。実際の店頭価格は販路によって異なる。

Webコンソール
ブラウザ上で設定や管理をおこなう操作画面。シャープはこの画面上でキャラクターの外見・声・性格・話し方・知識などを設定し、対話AIキャラクターを短期間で作成できるとしている。

ミーアキャット
アフリカ南部の乾燥地帯に生息する小型の哺乳類。群れで社会生活を営み、見張り役が後ろ足で立ち上がる姿で知られる。「ポケとも」の造形はこの姿をモチーフにしている。

【参考リンク】

ポケとも 公式サイト(外部)
「ポケとも」の公式製品サイト。2つの性格の紹介、月額プラン4段階の内訳、よくある質問を掲載する。第二弾は「おれさまタイプ」と呼ばれている。

シャープ株式会社(外部)
シャープの企業サイト。今回の第二弾を含むニュースリリースの原文、PDF版、報道用画像を公開している。過去のリリースの訂正履歴も残る。

COCORO STORE ポケとも本体 SR-C01M-W(外部)
シャープ直販サイトにある第一弾ロボットの製品ページ。現行の販売価格と仕様、ケアプランの内容を確認できる。第二弾の比較対象になる。

株式会社コルク(外部)
クリエイターエージェンシー。『宇宙兄弟』などを手がけ、公式マンガ『ミーアとナナミ』をシャープと共同制作する。今回のグッズ販売も同社が担う。

【参考記事】

シャープ「ポケとも」第2弾が登場、毒舌の“おれさま”ミーアキャット 2体同士の自動会話にも対応(外部)
発表会の内容を詳報した記事。直販価格4万9500円、日本と台湾で累計出荷1万体強、値上げの理由となった部材価格と為替まで数値で押さえている。

シャープからポケットに入るともだち ロボ+AI「ポケとも」(外部)
第一弾の発表時に書かれた記事。販売目標10万台、主なターゲット層、コルクとの共同制作によるキャラクターIP育成の狙いまで踏み込んでいる。

対話AIキャラクター「ポケとも」を12月5日に発売(外部)
第一弾の発売リリース。ロボットの仕様一覧に加え、発売日を12月5日へ延期した経緯と、2026年3月の仕様訂正の履歴が取り消し線つきで残る。

小さな相棒に、大きな夢を込めて。「ポケとも」誕生、1年半の開発ドキュメント(外部)
シャープ公式ブログの開発ドキュメント。企画段階から対話AIキャラクターを自由に増やせる仕組みごと作る構想だったことを、担当者の言葉で明かす。

【ポケットにはいるおともだち!?】「ポケとも」新製品発表会を開催しました(外部)
第一弾の新製品発表会レポート。キャラクターの外見や性格を設定して短期間で作成する仕組みを開発したと公表した回で、技術面の記述が詳しい。

対話AIキャラクター「ポケとも(Poketomo)」を台湾で発売(外部)
第一弾を2026年7月1日に台湾で発売した際のリリース。初の海外展開にあたり、中国語(繁体字)での対話に対応した経緯と現地価格を記す。

対話AIキャラクター「ポケとも」のLINEスタンプが配信開始(外部)
シャープ自身が配信した発表。公式マンガ『ミーアとナナミ』がコルクとの共同制作であり、漫画家の栗花ちまき氏が作画を担うことを明記している。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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