米アップルの音声アシスタント「Siri」に関する集団訴訟で、アップルが9500万ドル(約150億円)の和解金支払いに合意しました。
2024年12月31日付でカリフォルニア州オークランド連邦地裁に提出された和解案によると、2014年9月17日から2024年12月31日までの期間中にSiri対応端末を所有していた米国在住者が対象となります。
対象となるデバイスはiPhone、iPad、Apple Watch、MacBook、HomePod、iPod Touch、Apple TVなど。1台あたり最大20ドル(約3100円)、1人最大5台までの補償を受けることができます。
from:What to know about Apple’s $95 million settlement of the snooping Siri case
【編集部解説】
プライバシーとAIアシスタントの新たな転換点
音声アシスタントの品質向上とプライバシー保護の両立は、テクノロジー業界における重要な課題となっています。今回のAppleの和解は、この課題に対する重要な転換点となるかもしれません。
当初、音声アシスタントの精度向上には人間による音声データの確認が不可欠とされていました。しかし、この手法は予期せぬプライバシー侵害のリスクを内包していたことが明らかになりました。
特に注目すべきは、医療相談や個人的な会話が意図せずに録音され、第三者である委託業者に共有されていた点です。これにより、プライバシーの観点から深刻な問題が提起されました。
和解金額の9500万ドルは、仮に訴訟で敗訴した場合の想定損害賠償額15億ドルと比較すると、Appleにとって比較的軽微な金額と言えます。
この事案を受けて、Appleは2019年以降、以下のような重要な改善を実施しています:
- 音声データ収集のオプトイン制への移行
- 音声録音の自動保存の停止
- 機械学習による文字起こしの活用
- 不適切な録音データの削除体制の整備
今後の展望
この和解は、音声アシスタント技術の発展における重要な転換点となる可能性があります。特に、プライバシー保護と機能向上の両立という課題に対して、新たなアプローチが求められることになるでしょう。
現在、音声アシスタントの利用は単純なタスクに限られる傾向にありますが、これはプライバシーへの懸念が主な要因となっています。今回の和解を機に、より安全で信頼性の高い音声アシスタントの開発が促進されることが期待されます。
なお、同様の問題はGoogle等の他社の音声アシスタントでも指摘されており、業界全体としての対応が求められています。