Last Updated on 2025-01-10 14:03 by admin
バイデン政権は2025年1月12日にも、AIチップの新たな輸出規制案を発表する見通しです。この規制は世界を3つの階層に分類し、それぞれに異なるレベルの制限を設けます。
規制の主要ポイント
第1層(最も緩和):米国と18の同盟国(日本、ドイツ、オランダ、韓国、台湾など)は、米国製AIチップの無制限輸入が可能となります。
第2層(中程度):2025年から2027年の2年間で1カ国あたり5万基相当のGPU計算能力を上限とし、米国の安全保障基準への同意度合いにより制限が緩和される可能性があります。
第3層(最も厳格):中国、ロシアなどの敵対国に対して全面的な輸出禁止となります。
from:Biden said to weigh global limits on AI exports in 11th-hour trade war blitz
【編集部解説】
米国のAI規制の真の狙い
バイデン政権が提案する新たなAI規制は、単なる対中制裁の強化ではなく、グローバルなAI開発の方向性を決定づける重要な政策転換といえます。
この規制の特徴は、世界を3つの階層に分類し、それぞれに異なるレベルの制限を設けることにあります。これは、米国が「信頼できるAI」の開発パートナーを選別し、グローバルなAIの発展方向を制御しようとする試みと解釈できます。
規制がもたらす影響
特に注目すべきは、第2層に分類される国々への影響です。これらの国々は米国の安全保障基準や人権基準に同意することで、より多くのAIチップを輸入できるようになります。つまり、この規制は単なる輸出管理ではなく、米国の価値観に基づいたAI開発の枠組みを世界に広げる狙いがあるといえます。
産業界からの懸念
NVIDIAをはじめとする米国のテック企業は、この規制に強い懸念を示しています。米国商工会議所の試算によると、対中半導体輸出規制だけでも年間830億ドルの売上損失と12.4万人の雇用減少が予想されています。この計画に対してNVIDIAは反対の立場を表明し、同社はこの計画を「経済成長と米国のリーダーシップを脅かす大きな政策転換」であると述べています。
中国のAI開発への影響
興味深いことに、これまでの輸出規制は必ずしも中国のAI開発を止められていません。中国企業は規制の抜け穴を見つけたり、独自の技術開発を加速させたりすることで対応してきました。
長期的な展望
AIの開発には膨大な計算能力が必要です。例えば、OpenAIのGPT-4は、4年前のGPT-2と比べて約1万倍の計算能力で学習されています。この傾向は今後も続くと予想され、計算能力の制限は確実にAI開発の速度に影響を与えるでしょう。
今後の展開
トランプ次期政権がこの規制をどう扱うかは不透明です。トランプ氏は「中国(およびその他)とのAI軍拡競争に勝つ」ことを強調していますが、具体的な政策はまだ明らかになっていません。
日本企業への示唆
日本は第1層に分類される同盟国として、米国製AIチップへの無制限アクセスが認められています。これは日本企業にとって大きなチャンスとなる可能性がありますが、同時に米国の規制枠組みに組み込まれることも意味します。