国立工学政策センター(NEPC)は2025年2月7日、AIの急速な普及によるデータセンターのエネルギーと水消費量の増加について警告を発表した。
エネルギー消費の現状と予測
2022年の世界のデータセンター電力消費量は460テラワット時(TWh)
2026年までに1,000TWh以上に倍増する見込み
2027年までにNVIDIAのAIサーバーだけで年間85.4TWhを消費する予測
主要企業の水消費量
[Microsoft]
2022年の水消費量:640万立方メートル(前年比34%増)
オリンピックプール2,560個分に相当
[Google]
2022年の水消費量:1,950万立方メートル(前年比20%増)
2023年の水消費量:約23億リットル(41のゴルフコース分に相当)
対策提言
NEPCは以下の施策を提言:
エネルギーと水消費量の報告義務化
AIシステムの環境影響に関する情報開示
データセンターの環境持続可能性要件の設定
データ管理方法の見直し
専門家のコメント
ノッティンガム大学のトム・ロッデン教授(研究・知識交換担当副学長)
サウサンプトン大学のサルバパリ・ラムチャーン教授(Responsible AI UK CEO)
両氏はAIの環境負荷に対する透明性確保と管理の重要性を指摘した。
from Call to make tech firms report data centre energy use as AI booms
【編集部解説】
AI技術の進展に伴い、データセンターがもたらす環境負荷が深刻化しています。特に水資源の消費が問題視されており、AIモデルのトレーニングや運用が地域社会や地球環境に大きな影響を与えています。今回の記事では、この課題を簡潔に整理し、新たな視点を提示いたします。
データセンターはAIモデルを支える重要なインフラですが、その冷却システムには膨大な水が必要です。例えば、Microsoftは2022年に約6.4億リットルの水を消費しており、前年比34%増加しています。また、ChatGPTの利用では10回の質問でペットボトル1本分(500ml)の水が消費されるとされています。さらに、2027年には世界全体で年間4.2~6.6億立方メートルの水消費が予測されており、これはデンマーク全体の年間水使用量を大きく上回ります。
こうした背景から、多くの企業が新しい冷却技術の導入に踏み切っています。Microsoftは無水冷却システムを採用し、年間1.25億リットルの水削減を目指しています。また、Digital Realtyは液冷技術の導入により、水使用効率(WUE)の向上に取り組んでいます。しかし、データセンターで消費される水の多くが発電過程に起因しているため、施設内の改善だけでなくエネルギー供給全体の見直しが求められます。
地域社会への影響も深刻です。一部地域ではデータセンターが自治体全体の水供給量の25%を占めており、住民や農業用水への供給不足が懸念されています。この事態は環境的不平等を助長し、社会的な摩擦を引き起こす可能性があります。
一方で、AI自体が解決策となる可能性も示されています。Google DeepMindはAIを活用してデータセンターの冷却効率を40%向上させる成果を上げたほか、水使用パターンの分析と最適化による改善も進められています。しかし、AIモデルの大規模化に伴うエネルギー需要の増加というリバウンド効果にも留意しなければなりません。
この課題に対処するためには、企業による透明性の確保、政策立案者による規制の強化、そして市民社会との連携が不可欠です。エネルギー消費量や水使用量の詳細な報告に基づき、改善策を講じることが重要であると同時に、新たな冷却技術や再生可能エネルギーへの移行、水資源管理の強化が求められます。
【用語解説】
- WUE(Water Usage Effectiveness):データセンターの水使用効率を示す指標
- テラワット時(TWh):電力量の単位で、10億キロワット時に相当
- カーボンニュートラル:CO2排出量と吸収量が均衡している状態