ChatGPTの登場以降、データセンターの水消費量が深刻な環境問題となっています。以下が主な要点です。
現状と課題
Microsoftの水消費量は2021年から2022年にかけて34%増加し、年間17億ガロンに達しています。ChatGPTの場合、わずか5~50回の利用で約500mlの水を消費することが明らかになっています。
企業の取り組み
Microsoftは2024年8月から無水冷却システムを導入開始し、1施設あたり年間1.25億リットルの水削減を見込んでいます。また、Digital Realtyは2024年5月、170のデータセンターで直接液冷技術の導入を開始しました。
from:How datacenters use water and why kicking the habit is nearly impossible
【編集部解説】
データセンターと水消費の深層
データセンターの水消費問題は、単なる環境問題ではなく、デジタル社会の持続可能性に関わる重要な課題となっています。
特にAIの発展により、この問題は新たな局面を迎えています。例えば、ChatGPTの10~50回の応答で約500mlの水を消費するという事実は、私たちが何気なく使用するAIサービスが、実は大量の水資源を必要としていることを示しています。
技術的な課題
従来の空冷システムと比較して、水冷システムは1,230倍もの冷却効率(COP)を持っています。この効率性が、データセンターが水冷システムから脱却できない主な理由となっています。
しかし、Microsoftが開発した新しい閉鎖循環型の冷却システムは、この状況を変える可能性を秘めています。この技術により、1つのデータセンターあたり年間1億2,500万リットルの水を節約できることが示されています。
産業への影響
2027年までに、世界のAI需要による水消費量は年間4.2~6.6億立方メートルに達すると予測されています。これはデンマークの年間水使用量の4~6倍に相当する規模です。
特筆すべきは、データセンターの水消費の約83%が実は発電過程で使用されているという点です。このため、単純に施設での水使用を削減するだけでは、問題の本質的な解決にはならない可能性があります。
今後の展望
業界では、WUE(Water Usage Effectiveness)という指標を用いて水使用効率を測定する動きが広がっています。Microsoftの場合、2021年から2024年にかけてWUEを39%改善することに成功しています。
閉鎖循環型冷却システムの採用により、50-70%の淡水使用量削減が可能とされています。これは、環境負荷を大幅に低減させながら、デジタルインフラの拡大を可能にする重要な技術革新といえます。
社会的影響
この問題は、単にテクノロジー企業の課題ではなく、地域社会全体に影響を及ぼす問題となっています。一部の地域では、自治体の水供給量の25%をデータセンターが消費しているケースもあります。
今後、企業は環境負荷と経済性のバランスを取りながら、より持続可能なデータセンター運営を模索していく必要があるでしょう。この課題への対応が、デジタル社会の未来を左右する重要な要素となっていくことは間違いありません。