中国の検索大手バイドゥ(Baidu)は2025年2月13日、同社のAIチャットボット「ERNIE Bot」を2025年4月1日から完全無料化すると発表した。
デスクトップ版とモバイルアプリの両方で利用可能となり、これまで月額59.9元(約8ドル)だった有料版のすべての機能が無料で提供される。新機能「Deep Search」も同時に無料提供が開始される。この発表を受け、香港市場でバイドゥの株価は最大5.7%上昇した。
現在の利用状況(2024年11月時点)
- ユーザー数:4億3000万人
- 日間APIコール数:15億回(8月時点の6億回から大幅増加)
- 検索結果の20%以上がAI生成コンテンツ
- 月間アクティブユーザーの70%がAIコンテンツを利用
from:China’s Top AI Chatbot ERNIE Bot will be free for all users
【編集部解説】
バイドゥがこの決断を下した背景には、複数の重要な要因があります。まず、AIモデルの推論コストが年間90%も削減できるようになってきたことが挙げられます。これは、バイドゥのCEOであるロビン・リー氏がドバイで開催された世界政府サミット2025で明らかにした点です。
特筆すべきは、この無料化の発表がアップルによるアリババとの提携発表の直後に行われたことです。アップルは中国市場向けiPhoneのAI機能開発でアリババを選択しており、これはバイドゥにとって大きな痛手となりました。
市場競争の観点からも興味深い動きがあります。新興のDeepSeekが国際的な成功を収めており、中国国内でも注目を集めています。バイドゥは長年「AI企業」を標榜してきただけに、この分野でのリーダーシップを維持する必要に迫られています。
プライバシーの観点では注意が必要です。ERNIE Botの利用にはIPアドレス、SSID、デバイス名、デバイスモデル、OSバージョン、IMEI(携帯端末識別番号)などの情報収集が含まれます。これらのデータは第三者による処理の対象となる可能性があります。
技術面では、新しく導入される「Deep Search」機能に注目が集まっています。この機能は思考、計画、ツール呼び出しの能力を強化し、複数のシナリオに対応した専門家レベルの応答を提供します。
産業への影響としては、金融、医療、教育セクターでの活用が既に進んでおり、無料化によってさらなる普及が期待されます。特に中小企業にとって、高度なAI機能への障壁が大きく下がることになります。
長期的には、中国のAI市場全体のダイナミクスが変化する可能性があります。無料のAIサービスが標準となれば、他のプレイヤーも同様の戦略を取らざるを得なくなるかもしれません。
このような動きは、グローバルなAI競争においても重要な意味を持ちます。中国企業が積極的に無料サービスを展開することで、世界のAI市場の競争環境にも影響を与える可能性があります。