Last Updated on 2025-04-10 14:10 by admin
OpenAIは2025年4月10日(木曜日)、共同創設者のイーロン・マスクに対して反訴訟を提起した。OpenAIはXで声明を出し、マスクの行動はOpenAIを妨害し、重要なAI技術の支配権を自分の利益のために奪取することを目的とした悪意ある戦術だと主張している。
OpenAIとイーロン・マスクの法的紛争の経緯
- 2024年2月末: マスクがOpenAIとサム・アルトマンCEOを提訴
- 主張: OpenAIが「人類の利益に貢献するAIプラットフォームを開発する」という当初のミッションを放棄し、利益最大化を優先した
- 主張: OpenAIが「人類の利益に貢献するAIプラットフォームを開発する」という当初のミッションを放棄し、利益最大化を優先した
- 2024年6月: マスクが最初の訴訟を取り下げ
- 2024年8月5日: マスクが再びOpenAIを提訴
- 同様の内容で、カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提出
- マイクロソフトへのAIモデル利用ライセンスの無効宣告なども要請
- 2024年10月8日: OpenAIがマスクの訴訟の却下を裁判所に要求
- マスクの訴訟を「競争上の優位性を求めて同社を攻撃する一連の訴訟の最新のもの」と非難
- マスクの訴訟を「競争上の優位性を求めて同社を攻撃する一連の訴訟の最新のもの」と非難
- 2024年12月: OpenAIが「イーロン・マスクはOpenAIの営利化を望んでいた」というブログ記事を証拠とともに公開
- 2025年2月10日: マスク率いる投資家グループがOpenAIに974億ドル(約146兆円)の買収提案
- 目的: 「OpenAIをオープンソースでかつてのように安全を重視した姿に戻す」
- 目的: 「OpenAIをオープンソースでかつてのように安全を重視した姿に戻す」
- 2025年2月15日: OpenAIの取締役会が買収提案を全会一致で拒否
- アルトマンCEO: 「(自分達は)売り物ではない」
- アルトマンCEO: 「(自分達は)売り物ではない」
- 2025年3月5日: 連邦地裁がマスクのOpenAI営利化差し止め請求を棄却
- 2025年4月10日: OpenAIがマスクを反訴
- 主張: マスクの買収提案は「妨害目的の虚偽」「詐欺的な申し出」
- 目的: マスクの「嫌がらせ」と「偽の買収提案」に対する法的措置
- 2026年春: 陪審裁判の開始予定
from: OpenAI countersues Elon Musk to stop his attacks and ‘fake takeover bid’
【編集部解説】
OpenAIとイーロン・マスクの対立は、AIの未来をめぐる哲学的な対立であると同時に、巨大テック企業間の主導権争いの様相を呈しています。この反訴訟の背景には、AI開発の方向性と利益追求のバランスという根本的な問題があります。
マスクは2015年にOpenAIを共同設立した際、AIを人類全体の利益のために開発するという理念を掲げていました。しかし、彼が2018年に離脱した後、OpenAIは徐々に営利モデルへと移行し始めました。この変化がマスクの不満の根源となっています。
興味深いのは、OpenAIの反訴状によれば、マスクは自身がOpenAIを離れる前から、同社の営利化を支持していたという点です。これは彼の公の主張と矛盾する可能性があります。
現在OpenAIは400億ドル(約60兆円)の資金調達ラウンドを進めており、この資金を確保するためには年末までに営利企業への移行を完了する必要があります。マスクの法的挑戦はこのプロセスを妨害する可能性があり、OpenAIにとって実存的な脅威となっています。
マスク率いる投資家グループによる974億ドル(約146兆円)の買収提案は、表面上はOpenAIをオープンソースの理念に戻すためのものでしたが、OpenAIはこれを「偽りの申し出」と断じています。
この対立の背景には、AI開発競争の激化があります。マスクは2023年に独自のAI企業「xAI」を設立し、OpenAIと直接競合する立場になりました。最近ではxAIがマスク所有のソーシャルメディアプラットフォームXを330億ドル(約49.5兆円)で買収し、投資家にxAIの価値を共有できるようにしています。
この法的紛争の行方は、AI業界全体に大きな影響を与える可能性があります。裁判所がOpenAIの営利化を支持するか、マスクの主張を認めるかによって、AI開発の方向性や資金調達モデルに先例が作られることになるでしょう。
【用語解説】
OpenAI:
2015年に設立された人工知能研究所および企業。非営利法人のOpenAI Inc.と営利法人のOpenAI LPで構成されている。ChatGPTなどの大規模言語モデルを開発している。週に約500万人のユーザーがChatGPTを利用している。
AGI(汎用人工知能):
Artificial General Intelligenceの略。特定のタスクだけでなく、人間のように多様な問題を理解し解決できる人工知能。現在のAIは特化型AIと呼ばれ、特定の作業に特化しているが、AGIはあらゆるタスクを柔軟に処理できる能力を持つとされる。
買収提案:
ある企業が別の企業を買収するために行う公式な申し出。対象企業の株主や経営陣に対して行われ、具体的な条件や価格が示される。
非営利企業:
営利を主な目的としない企業形態。得られた利益は株主や所有者に分配されず、組織の目的達成のために再投資される。税制上の優遇措置を受けられることが多い。
【参考リンク】
OpenAI(外部)
人工知能研究と製品開発を行う企業。ChatGPTやDALL-Eなどの先進的なAIモデルを提供している。
X(旧Twitter)(外部)
イーロン・マスクが所有するソーシャルメディアプラットフォーム。訴訟に関する発言が投稿されている。
xAI(外部)
イーロン・マスクが2023年に設立したAI企業。OpenAIと競合関係にある。
The Verge(外部)
テクノロジーニュースを扱うメディア。今回の訴訟に関する詳細な報道を行っている。