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Zyrex:高さ6メートルのAI建設ロボットが2026年に実用化へ – RIC Roboticsが建設業界の革命を目指す

Zyrex:高さ6メートルのAI建設ロボットが2026年に実用化へ - RIC Roboticsが建設業界の革命を目指す - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-27 07:20 by admin

カリフォルニア州トーランスのRIC Roboticsは、高さ20フィート(6メートル)のAI駆動自律型建設ロボット「Zyrex」を開発中で、2026年初頭に実用プロトタイプの完成を予定している。同社はこれを「世界初のGiantroid(巨大ロボット)」と位置づけ、2025年4月25日に発表した。

Zyrexは溶接、大工仕事、3Dプリントなどの建設作業を行う能力を持ち、LiDAR(光検出と測距)とVLA(Vision-Language-Action)AIモデルを搭載した視覚センサーを装備する。初期段階では人間のオペレーターがVRと物理シミュレーターで制御し、その後完全自律運転に移行する計画である。

RIC Roboticsの創設者Ziyou Xuによれば、このロボットは建設業界が直面する2つの緊急課題に対応するものである。米国では2025年に業界の需要を満たすために439,000人以上の熟練建設作業員が必要とされており、また米国労働統計局のデータによると、建設部門は2023年に全産業の中で最も多い1,075件の死亡事故を記録している。Xuは「テスラのOptimusがアベンジャーズのアイアンマンなら、Zyrexはハルクだ-ただしこのハルクはオレンジ色で、建物を壊すのではなく建設するために作られている」と述べている。

Zyrexは既存の3D建設ロボットRIC-PRIMUSの機能を基に構築されている。同社の初期モデルRIC-M1 Proは、テネシー州とアラバマ州のウォルマート倉庫の増築部分を3Dプリントするために使用され、アラバマ州の5,000平方フィート、高さ16.5フィートの倉庫は7日間で完成し、予定より3週間早く完了したという。全国でさらに200以上の同様の拡張計画があるとされている。

RIC Roboticsは、Zyrexロボットの価格が100万ドル未満(従来の巨大ロボットは200万ドル以上)で、月々のリースオプションは2万ドル未満からになると見積もっている。また、このロボットは26自由度、交換可能なツールモジュール、自己交換バッテリーパックを備えた完全な移動性を持つよう設計されている。

from:AI-powered 20 foot robots coming for construction workers’ jobs

【編集部解説】

建設現場の風景が大きく変わろうとしています。カリフォルニア州トーランスのRIC Roboticsが開発中の「Zyrex」は、高さ6メートルにも及ぶAI搭載の巨大建設ロボットで、2026年初頭に実用プロトタイプの完成を目指しています。

このロボットは単なる力作業だけでなく、溶接、大工仕事、3Dプリントなど高度な技術作業まで担う多機能システムとして設計されています。同社はこれを「Giantroid(巨大ロボット)」と名付け、世界初の試みとして2025年4月25日に発表しました。

Zyrexの最大の特徴は、その認知能力と自律性にあります。LiDARと視覚センサーを組み合わせたVLA(Vision-Language-Action)AIモデルにより、複雑な建設現場の状況を理解し、適切な作業を行うことが可能になります。初期段階では人間がVRと物理シミュレーターで操作しますが、最終的には完全自律運転へと移行する計画です。

技術的には、26自由度を持ち、交換可能なツールモジュールや自己交換バッテリーパックを備えた完全な移動性を実現する設計となっています。これにより、建設現場のさまざまな場所で多様な作業を柔軟にこなすことができるでしょう。

建設業界の課題解決への期待

建設業界は現在、深刻な労働力不足と安全性の問題という二つの大きな課題に直面しています。米国だけでも2025年には43万9千人以上の熟練建設作業員が必要とされており、また2023年には建設部門で1,075件もの死亡事故が発生しました。

Zyrexのような自律型ロボットの導入は、これらの課題に対する有効な解決策となる可能性を秘めています。危険な作業をロボットが担うことで人間の安全を確保しつつ、労働力不足を補うことができるのです。

実際、RIC Roboticsの初期モデルであるRIC-M1 Proは既に実績を上げています。このロボットはテネシー州とアラバマ州のウォルマート倉庫の増築部分を3Dプリントするために使用され、アラバマ州の5,000平方フィート、高さ16.5フィートの倉庫は7日間で完成し、予定より3週間早く完了しました。これにより、時間を75%、熟練労働者を80%削減できたとのことです。さらに、全国で200以上の同様の拡張計画があるとされています。

技術の実現可能性と経済性

Zyrexは既存の3D建設ロボットRIC-PRIMUSの機能を基に構築されており、高速性、自動化、最大32フィートまでのリーチを持つバッテリー駆動の移動プラットフォームなど、多くの機能を共有しています。

経済性の面でも注目に値します。従来の巨大ロボット構築は200万ドル以上かかることがありましたが、RIC Roboticsは、Zyrexの価格を100万ドル未満に抑え、月々のリースオプションは2万ドル未満から提供する予定です。これにより、中小規模の建設会社でも導入しやすくなるでしょう。

技術の可能性とリスク

Zyrexのような技術は建設業界に革命をもたらす可能性がありますが、同時にいくつかの懸念点も存在します。

まず、完全自律型の巨大ロボットが建設現場で動き回ることによる安全上のリスクです。The Registerの記事では「20フィートのロボットが自律型AI制御で動き回ることで建設現場の安全性が向上する」という皮肉めいた表現で安全性への懸念を示しています。これは無視できない問題です。

また、建設作業の自動化が進むことで、従来の建設作業員の雇用にどのような影響を与えるかという点も重要です。RIC Roboticsの創設者Ziyou Xuは「業界の労働力不足に対応する」と述べていますが、長期的には職種の変化や再教育の必要性が生じるかもしれません。

一方で、この技術がもたらす可能性も大きいものがあります。建設プロセスの効率化と安全性向上、建設コストの削減、そして人間が創造的な設計や監督業務に集中できるようになるといった利点が考えられます。

未来の建設現場

Zyrexの開発は、建設業界におけるロボティクスとAIの融合という大きなトレンドの一部です。今後、建設現場では人間とロボットが協働する新しい働き方が生まれる可能性が高いでしょう。

特に日本のような少子高齢化が進む国では、建設業界の労働力不足は深刻な問題となっています。Zyrexのような技術が実用化されれば、インフラ整備や住宅建設などの分野で大きな変革がもたらされるかもしれません。

ただし、こうした技術の導入には、安全基準の整備や作業員の再教育、社会的受容など、さまざまな課題も存在します。技術の進化とともに、これらの課題にも適切に対応していくことが重要となるでしょう。

テクノロジーの進化は止まることを知りません。Zyrexのような革新的な建設ロボットの登場は、私たちの住環境や都市の姿を大きく変える可能性を秘めています。innovaTopiaでは、今後もこうした最先端技術の動向を追い続け、読者の皆様にお届けしていきます。

【用語解説】

VLA(Vision-Language-Action)AIモデル
視覚情報(Vision)、言語理解(Language)、行動計画(Action)を統合したAIモデル。画像や映像を認識し、言語を理解した上で、適切な行動に変換する能力を持つ。例えば「赤いカップをテーブルから取って」という指示に対して、カップを認識し、指示を理解し、実際に取る動作を行うことができる。従来のロボットが個別に学習する必要があった機能を一体化している。

LiDAR(Light Detection and Ranging)
レーザー光を照射し、その反射時間から距離を測定するセンサー技術。Zyrexはこれを使って周囲の3D空間を正確に把握する。カーナビの地図作成や自動運転車でも使われている技術で、人間の目では捉えられない精密な距離感覚をロボットに与える。

BIM(Building Information Modeling)
建物の3Dデジタルモデルに、材料や構造などの情報を統合したデータベース。Zyrexはこれと現場データを比較して精度を確保する。紙の設計図を立体的なデジタルモデルに進化させたもので、建設の全工程を事前にシミュレーションできる。

Giantroid(巨大ロボット)
RIC Roboticsが命名した、大型の建設用ロボットを表す造語。Zyrexは世界初の「Giantroid」として開発されている。

【参考リンク】

RIC Technology公式サイト(外部)
RIC Roboticsの公式ウェブサイト。同社の使命や製品ラインナップを確認できる。

【参考動画】

【編集部後記】

建設現場に6メートルの巨大ロボットが登場する時代が、もうすぐそこまで来ています。皆さんは自分の職場や生活圏にこのようなロボットが導入されることをどう感じますか?技術の進化によって私たちの働き方や住環境はどう変わるでしょうか?「テスラのOptimusがアイアンマンなら、Zyrexはハルクだ」という開発者の言葉が示すように、これらのロボットは単なる道具ではなく、新たな働き手として私たちの社会に加わろうとしています。未来の建設現場や都市の姿を一緒に想像してみませんか?

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TaTsu
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