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OpenAI・CLA・英国政府、AI著作権法改正で意見の対立が続く – 生成AIとクリエイター保護の行方

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-12 14:04 by admin

英国政府はAI開発企業による著作権保護作品の利用を巡る著作権法改正案について、アーティストやクリエイターからの強い反発を受け、一部譲歩案を示した。政府は、AI企業が著作権で保護された作品を権利者の許可なく学習データとして利用できる「オプトアウト方式」を推進しているが、これに対しポール・マッカートニーやエルトン・ジョンなど著名なアーティストを含む多くのクリエイターが抗議の声を上げている。

法案は2025年5月7日に下院で審議・採決が予定されており、政府は経済的影響評価の実施や、AI開発者向けの透明性・ライセンス・データアクセスに関する報告書の公表を約束することで、クリエイター側への配慮を示している。しかし、野党や業界団体はこれらの譲歩を「不十分」と批判し、AI企業に現行の著作権法の順守や、使用した著作物の開示義務を課す修正案を提出する構えである。

また、英国著作権ライセンス機構(CLA)はAI向けの集団ライセンス制度の導入を検討しており、これが今後の議論の焦点となる可能性がある。英国のクリエイティブ産業は国内総生産の約5.7%、1,246億ポンド(約24兆円)規模で、約240万人が従事している。今回の法改正案は、AI技術の発展とクリエイターの権利保護のバランスを巡る英国社会の大きな論点となっている。

from:Ministers to amend data bill amid artists’ concerns over AI and copyright

【編集部解説】

英国で進行中のAI著作権法改正を巡る議論は、AI技術の発展とクリエイターの権利保護という二つの価値観が真正面からぶつかる象徴的な事例です。政府が提案する「オプトアウト方式」は、AI企業の国際競争力を維持しつつイノベーションを加速させる狙いがありますが、著作権者側からは「権利侵害を助長する」と強い反発が起きています。特に、ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンなど世界的アーティストが声を上げていることからも、この問題の社会的インパクトの大きさがうかがえます。

AIによる著作物の利用は、従来の著作権管理の枠組みでは対応しきれない規模とスピードで進行しています。AIモデルの学習には数百万点規模のデータが必要となるため、個別に許諾を取る従来型の管理手法では現実的な運用が困難です。こうした背景から、英国著作権ライセンス機構(CLA)が検討する「AI向け集団ライセンス制度」のような新しい仕組みが模索されています。これは、クリエイターへの補償とAI開発の円滑化を両立させる可能性を秘めていますが、実際に機能させるためにはAI企業によるデータ利用の透明性確保が不可欠です。

一方で、政府が経済的影響評価の実施や透明性義務化などの譲歩案を示したものの、クリエイター側や野党からは「実効性に乏しい」との批判が根強く残っています。特に、AI企業がどの著作物をどのように利用したかを開示する義務や、現行著作権法の厳格な順守を求める声は今後も強まるでしょう。自由民主党が提案する「Webクローラー使用情報の公開義務化」など、より具体的な規制案も議論されています。

この問題は英国だけでなく、EUや日本など各国でも議論が進んでおり、今後の国際的な著作権管理のあり方にも大きな影響を与える可能性があります。AI時代にふさわしい著作権制度の構築は、イノベーションとクリエイティブ産業の持続的発展の両立に不可欠です。英国の動向は、世界のテクノロジー政策にとっても重要な試金石となるでしょう。

【用語解説】

オプトアウト方式
著作権者が明示的に拒否しない限り、AI企業が著作物を学習データとして利用できる制度。AI開発促進の一方、権利者の意思が十分に反映されないリスクも指摘されている。

Webクローラー
インターネット上の情報を自動で収集するプログラム。AI学習データ収集や検索エンジンの基幹技術として使われている。

【参考リンク】

英国議会公式サイト(外部)
英国議会の公式ウェブサイト。法案審議の進捗や関連資料を確認できる。

Copyright Licensing Agency (CLA)(外部)
英国の著作権管理団体。著作物利用のライセンス提供を行い、AI向けの集団ライセンス制度も検討している。

UK Department for Science, Innovation and Technology(外部)
英国の科学・イノベーション・技術政策を担当する省庁。AI政策や著作権に関する声明も公開。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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