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AWS調査:2025年のIT予算、生成AIがセキュリティを上回る最優先事項に

AWS調査:2025年のIT予算、生成AIがセキュリティを上回る最優先事項に - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-07 08:24 by admin

Amazonウェブサービス(AWS)が2025年5月6日に発表した「AWS生成AI採用指数」によると、2025年に向けて世界のIT予算において生成AIツールがサイバーセキュリティを上回る最優先事項となっている。

この調査は、アメリカ、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、インド、日本、韓国、イギリスの9カ国から3,739人の上級IT意思決定者を対象に実施された。

主な調査結果

  • 組織の45%が生成AIへの支出を優先し、セキュリティツール(30%)を上回っている
  • 現在90%の組織が何らかの形で生成AIを展開しており、44%が実験段階を超えて本番環境での展開に移行している
  • 組織の60%がすでに最高AI責任者(CAIO)などの専任AI幹部を任命しており、さらに26%が2026年までにそうする計画がある
  • 組織は2024年に平均45のAI実験を実施したが、2025年までにエンドユーザーに到達すると予想されるのは約20のみである
  • 人材不足が実験から本番環境への移行における主な障壁であり、回答者の55%が熟練した生成AI人材の不足を最大の課題として挙げている
  • 56%の組織がすでに生成AI研修計画を策定しており、さらに19%が2025年末までにそうする予定である
  • 92%の組織が2025年に生成AI専門知識を必要とする役職の採用を計画している
  • 組織の25%のみがゼロから開発されたソリューションの展開を計画しており、58%が既存のモデル上にカスタムアプリケーションを構築する意向である
  • 地域別では、インド(64%)と韓国(54%)が生成AI投資の優先度で最も高い率を示し、米国(44%)はグローバル平均(45%)に沿っている
  • 2025年には65%の組織が何らかの形で第三者ベンダーに依存し、15%がベンダーのみに依存する計画で、50%が社内チームと外部パートナーを組み合わせた混合アプローチを採用する予定である

AWSの生成AIおよびAI/MLゴートゥーマーケット担当副社長のRahul Pathak氏は「AIを採用しない組織は、すでに採用している同業者に取り残されるリスクがある」と警告している。

from:AWS report: Generative AI overtakes security in global tech budgets for 2025

【編集部解説】

AWSの最新調査が示す「生成AIがセキュリティを上回る」という現象は、テクノロジー業界における重要な転換点を示しています。この調査結果は単なる予算配分の変化ではなく、企業のデジタル戦略全体の方向性が大きく変わりつつあることを表しています。

GeekWireの報道によれば、AWS副社長のRahul Pathak氏はこの結果について「セキュリティの重要性が低下したわけではなく、AIの影響力が急速に拡大している証拠」と解釈しています。実際、AI導入プロジェクト内でもセキュリティは依然として最優先事項の一つであり、データ保護や責任あるAI利用が重視されています。

注目すべきは、この調査が単なる実験的な取り組みではなく、本格的な導入フェーズに移行していることを示している点です。組織の44%が実験段階を超えて本番環境での展開に進んでいるという数字は、生成AIが「あったら良いもの」から「必須のビジネスツール」へと急速に変化していることを示しています。

人材不足という課題に対して、企業は社内トレーニングと外部採用という二重戦略を展開しています。特に注目すべきは、Pathak氏が特定の技術スキルよりも「適応性」を重視している点です。テクノロジーの進化が加速する中で、特定のツールに関する知識よりも、新しいAIツールを日常のワークフローに組み込む能力が重要になっています。

地域別の採用率の違いも興味深い点です。インド(64%)や韓国(54%)といったアジア諸国が米国(44%)やヨーロッパ諸国を上回っていることは、テクノロジー採用における地政学的なパワーシフトを示唆しています。日本企業にとっては、アジア地域のライバル企業がAI導入で先行している可能性を認識し、戦略を再考する必要があるかもしれません。

McKinseyの最新調査によれば、企業リーダーは従業員のAI活用度を過小評価している傾向があります。リーダーは従業員の約4%が日常業務の30%以上にAIを活用していると推測していますが、実際には従業員の自己申告によると13%と3倍の差があります。さらに、今後1年以内に業務の30%以上にAIを活用すると予測する従業員は47%に達しており、リーダーの予測(20%)を大きく上回っています。

最終的に、AWS調査が示唆するように、成功するのは単に最大のAI予算や最も洗練されたモデルを持つ組織ではなく、独自のデータ資産を活用して実際のビジネス課題を解決するためにAIを効果的に活用する組織でしょう。Pathak氏が強調するように、「AIは強力なツールですが、ビジネス目標から始める必要があります。組織として何を達成しようとしているのでしょうか?」

私たちinnovaTopiaの読者の皆様にとって、この調査結果は単なる業界トレンドではなく、自社のデジタル戦略を見直す重要な機会となるでしょう。生成AIへの投資を検討する際は、短期的なブームに飛びつくのではなく、明確なビジネス目標、データ戦略、人材育成計画を伴った総合的なアプローチが不可欠です。

【用語解説】

生成AI(Generative AI)
深層学習や機械学習の手法を駆使して、テキスト、画像、音楽、ビデオなどのデジタルコンテンツを自動で生成する技術。ChatGPTやStable Diffusionなどが代表例である。

AWS(Amazon Web Services)
Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービス。2006年にサービス開始し、IaaSにおける世界的シェアが39%で1位である。

CAIO(Chief AI Officer)
最高AI責任者。企業内でのAI戦略の立案と管理、部門横断的なAIプロジェクトの統括、リスク管理とAI倫理の確保などを担当する役職。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)
検索拡張生成。既存の知識ベースから関連情報を検索し、それを基に生成AIが回答を作成する技術。企業の独自データと基盤モデルを組み合わせる際に重要な手法である。

【参考リンク】

Amazon Web Services(AWS)公式サイト(外部)
Amazon Web Servicesの公式サイト。クラウドコンピューティングサービスを低料金で提供している。

AWS生成AI関連サービス(外部)
AWSが提供する生成AI関連のサービスやソリューションを紹介するページ。

GeekWire – AWS調査記事(外部)
AWS生成AI採用指数についての詳細な解説記事を掲載。

【参考動画】

【編集部後記】

皆さんの組織では、2025年に向けてどのようなテクノロジー投資を計画していますか?生成AIの導入はもう始めていますか?AWSの調査結果が示すように、今や多くの企業が実験段階を超えて本格導入へと進んでいます。自社の競争力を維持するために、どのような生成AI活用が考えられるでしょうか。また、人材育成や組織体制はどう変化させるべきでしょうか。ぜひSNSで皆さんの考えや取り組みをシェアしていただければ幸いです。

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TaTsu
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