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OpenAI、65億ドルでJony Ive買収・消費者向け戦略へ大転換|企業AI導入75%が失敗する中でのピボット戦略

OpenAI - innovaTopia - (イノベトピア)

企業内でのAIパイロットプロジェクトが失敗する中、OpenAIは消費者向け戦略にピボットしている。同社は2025年5月21日、元AppleデザイナーのJony Iveが設立したio Productsを65億ドルで買収すると発表した。

Iveは2024年にScott Cannon、Evans Hankey、Tang Tanと共にioを設立し、55人の技術者チームを構築していた。OpenAIは既に2024年からioの23%株式を保有していた。

IveとSam AltmanはAI対応デバイスの開発を進めており、2026年の製品発売を目指している。IBMの2000人CEO調査では、企業のAIパイロットプロジェクトで期待された投資収益率を達成したのは25%のみだった。

Johnson & Johnsonも最近、パイロットプロジェクトのほとんどを停止し、価値を生み出すことが証明された少数のプロジェクトに集約した。OpenAIは5月にFidji Simoを消費者向けアプリケーションCEOに任命している。

From: 文献リンクAI ain’t B2B if OpenAI is to be believed

【編集部解説】

OpenAIの戦略転換は、AI業界における根本的なパラダイムシフトを示しています。従来のB2B中心のアプローチから消費者向けへの転換は、単なる事業戦略の変更ではなく、AI技術の普及メカニズム自体を再定義する動きと言えるでしょう。

この転換の背景には、企業向けAI導入の現実的な課題があります。IBMの調査結果が示すように、企業のAIパイロットプロジェクトの75%が期待された投資収益率を達成できていません。Johnson & Johnsonのようにパイロットプロジェクトを大幅に縮小する企業も現れており、トップダウン型のAI導入には明確な限界が見えてきました。

65億ドルという巨額投資によるio Products買収は、OpenAIの本気度を示しています。Jony IveがiPhone、iPod、iPadの設計で培ったデザイン哲学をAI分野に持ち込むことで、従来のスクリーンベースのインターフェースを超えた新しいAI体験が生まれる可能性があります。

Fidji Simoの起用も戦略的に重要な意味を持ちます。Meta(旧Facebook)でのアプリ運営経験とInstacartでのCEO経験を持つ彼女は、消費者向けプロダクトの大規模展開に精通しています。これは、OpenAIが単なるAPI提供者から、エンドユーザー体験を重視するプラットフォーム企業への変貌を目指していることを物語っています。

この消費者向け戦略の核心は「コンシューマライゼーション」にあります。スマートフォンやDropbox、Slackが個人利用から企業導入へと広がったように、AIも同様の経路を辿ると予想されます。消費者が日常生活でAIに慣れ親しむことで、職場での活用も自然に進むという仮説です。

ポジティブな側面として、消費者向けAIは利用ハードルが低く、失敗のコストも限定的です。旅行計画や創作活動での利用であれば、多少の誤りがあっても深刻な問題にはなりません。これにより、AI技術の社会実装が加速する可能性があります。

一方で、潜在的なリスクも存在します。消費者向けAIが企業に浸透する過程で、セキュリティやコンプライアンスの管理が困難になる恐れがあります。IT部門は、従業員が個人的に使い始めたAIツールの企業利用を後追いで管理する必要に迫られるでしょう。

2026年に予定される最初の製品発売は、AI業界の転換点となる可能性があります。映画「Her」のようなスクリーンレスAIコンパニオンが現実のものとなれば、人間とAIの関係性が根本的に変わるかもしれません。

【用語解説】

コンシューマライゼーション(Consumerization of IT)
個人が私生活で使っているテクノロジーを職場でも使いたがる現象

ランド・アンド・エクスパンド戦略
小さく始めて徐々に拡大する戦略。まず一つの部署で試験導入し、成功したら全社に広げる手法。

B2B(Business to Business)
企業向けビジネス。会社が会社に商品やサービスを売ること。

パイロットプロジェクト
本格導入前の試験運用。新しい技術やシステムを小規模で試してみること。

Physical AI
AI技術を物理的なデバイスに統合し、現実世界で動作するシステム。ロボット、自動運転車、スマートグラスなどが含まれる。

【参考リンク】

OpenAI(外部)
ChatGPTやDALL-Eなどの生成AIサービスを開発するアメリカの人工知能企業

LoveFrom(外部)
Jony Iveが2019年にApple退社後に設立したデザインスタジオ

Meta(旧Facebook)(外部)
FacebookやInstagramを運営する世界最大級のソーシャルメディア企業

Instacart(外部)
アメリカの食料品配達サービス。消費者がアプリで注文し、配達員が代理購入・配送する

【参考動画】

【編集部後記】

みなさんは普段の生活で、どのようなシーンでAIを活用されているでしょうか。記事にあるように、旅行計画や文書要約など、個人的な用途でAIに触れた経験をお持ちの方も多いかもしれません。一方で、職場でのAI導入については、まだ手探り状態の企業が多いのが現状です。OpenAIとJony Iveの提携は、私たち一人ひとりがAI技術の普及において重要な役割を担っていることを示唆しています。みなさんの職場では、AIツールの活用についてどのような議論が行われているでしょうか。また、スクリーンを超えたAI体験について、どのような可能性を感じられますか。ぜひSNSで体験談やご意見をお聞かせください。

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TaTsu
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