Last Updated on 2025-06-28 06:47 by admin
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2025年6月27日の株主総会で、OpenAIに「全力投球」していると表明した。
同社のOpenAI投資は2024年9月以降で合計22億ドル、2025年4月の追加出資で最大300億ドル(約4兆4856億円)、計画投資総額は約4兆8000億円に達する。孫氏は「OpenAIは最終的に上場し、世界で最も価値のある企業になる」と述べた。
孫氏は2019年以前にOpenAIのサム・アルトマンCEOから100億ドルの投資を求められ、承諾したが、最終的にマイクロソフトが選ばれたことを明かした。マイクロソフトはOpenAIの独占クラウドプロバイダーとなったが、2025年初めにその地位を失った。
孫氏は人工超知能(ASI)を人間の1万倍賢いAIと定義し、今後10年でソフトバンクをASIの最大プラットフォームプロバイダーにする目標を示した。ソフトバンクは2025年3月にAmpereを65億ドルで買収し、OpenAI、Oracle、MGXと共に5000億ドル規模のStargateプロジェクトを推進している。
From: SoftBank CEO says he’s ‘all in’ on OpenAI, reveals he’s long wanted Microsoft’s spot as main backer
【編集部解説】
今回のソフトバンクの動きは、単なる投資発表を超えた戦略的な意味を持っています。孫正義氏が「人工超知能時代の業界オーガナイザー」を目指すと宣言したことで、同社がプラットフォーマーとしての地位確立を狙っていることが明確になりました。
特に注目すべきは、実際の投資規模が当初報道より大きいことです。2024年9月以降の累計投資額は約4兆8000億円に達し、これは日本企業による海外AI企業への投資としては史上最大規模となります。
2019年以前にOpenAIへの100億ドル投資を提案していたという事実も重要です。当時マイクロソフトに敗れた経緯を踏まえると、現在の巨額投資は失った機会を取り戻そうとする強い意志の表れと捉えられます。
マイクロソフトとOpenAIの関係悪化も重要な背景要因となっています。マイクロソフトが独占クラウドプロバイダーの地位を失い、OpenAIの営利法人への再編についても承認していない状況で、ソフトバンクが主導権を握ろうとする戦略は極めて計算されたものといえるでしょう。
「人間の1万倍賢いAI」という人工超知能の定義は、現在のAI技術から見ると非常に野心的な目標です。しかし、ソフトバンクが保有するArmの半導体技術、買収したAmpereのチップ設計能力、そして5000億ドルのStargateプロジェクトを組み合わせることで、AI開発に必要なハードウェアからソフトウェアまでの垂直統合を実現しようとしています。
一方で、このような巨額投資にはリスクも伴います。OpenAIは現在も赤字経営であり、人工超知能の実現時期は不透明です。また、年間30億ドルのソリューション利用料など、継続的な支出も発生します。
規制面では、これほど大規模なAI投資が各国の政策にも影響を与える可能性があります。特に米国でのAI開発拠点構築は、技術覇権争いの文脈でも重要な意味を持つことになるはずです。
【用語解説】
人工超知能(ASI:Artificial Super Intelligence)
人間の知能を1万倍上回るとされる次世代AI技術。現在の人工汎用知能(AGI)をさらに発展させた概念で、あらゆる分野で人間を凌駕する能力を持つとされる。
Stargateプロジェクト
5000億ドル規模のAIインフラ構築プロジェクト。ソフトバンク、OpenAI、Oracle、MGXが参加し、米国でのAI開発基盤整備を目指す。現在テキサス州で複数のプロジェクトが進行中。
営利法人への再編
OpenAIが現在の非営利組織から従来型の営利企業への組織変更を検討している計画。これにより株式公開や投資家への利益還元が可能になる。
垂直統合
半導体設計から製造、ソフトウェア開発まで、AI開発に必要な技術スタックを一社で統合的に提供する戦略。
【参考リンク】
ソフトバンクグループ公式サイト(外部)
日本の多国籍投資持株会社。AI、IoT、ロボティクスなど先端技術分野への投資を中心とした事業を展開している。
OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTを開発したアメリカの人工知能研究開発企業。AGI(人工汎用知能)の実現を目指している。
Arm Holdings公式サイト(外部)
イギリスの半導体・ソフトウェア設計企業。スマートフォンからデータセンターまで幅広いデバイスで使用されるプロセッサ設計を手がける。
Oracle公式サイト(外部)
アメリカのデータベース・クラウドコンピューティング企業。Stargateプロジェクトのパートナーとして参加している。
【参考動画】
【参考記事】
SoftBank aims to become leading ‘artificial super intelligence’ platform provider
ソフトバンクが今後10年で人工超知能分野の最大プラットフォームプロバイダーを目指すと発表。Ampere買収やOpenAI投資など積極的なAI投資戦略を展開している。
OpenAI to raise $40bn from SoftBank and other investors
OpenAIがソフトバンクなどから400億ドルを調達し、企業価値が3000億ドルに達する計画。ソフトバンクが300億ドルを投資し最大の投資家となる。
The cracks in the OpenAI-Microsoft relationship are reportedly widening
OpenAIとマイクロソフトの関係悪化が報告されている。OpenAIがマイクロソフトの反競争的行為を公に非難することを検討している。
【編集部後記】
今回のソフトバンクの動きを見て、皆さんはどう感じられましたか?約4兆8000億円という投資額は、一企業の投資としては前例のない規模です。孫正義氏が描く「人工超知能時代」は、私たちの働き方や生活を根本から変える可能性を秘めています。
一方で、これほど巨額の投資が本当に実を結ぶのか、疑問に思われる方も多いでしょう。皆さんは、AIが人間の1万倍賢くなった世界をどのように想像されますか?そして、そんな未来に向けて、私たち個人はどのような準備をしておくべきなのでしょうか。ぜひ、コメント欄で皆さんの率直な思いをお聞かせください。