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Google公式謝罪で明らかになったクラウド障害の真因、DevOps手法軽視が70サービス停止招く

Google公式謝罪で明らかになったクラウド障害の真因、DevOps手法軽視が70サービス停止招く - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-17 09:08 by admin

2025年6月16日、Googleは6月12日に発生した世界規模のクラウド障害について公式謝罪とインシデントレポートを発表した。

この障害により70以上のGoogleクラウドサービスが7時間停止し、Gmail、YouTube、Spotify、Discord、OpenAI、Shopifyなど数十のサービスが連鎖的に影響を受けた。

障害の根本原因は、5月に導入された「クォータポリシーチェック」の新機能にあることが判明した。この機能は実環境でのテストが不十分で、業界標準の機能フラグによる段階的展開も行われていなかった。空白エントリを含む不正なポリシーが全世界のデータセンターに配信され、システムが無限クラッシュループに陥った。

エンジニアは10分で問題を特定したが、完全復旧まで7時間を要した。GoogleクラウドCEOのThomas Kurianは正式に謝罪し、今後はアーキテクチャ変更、全システム監査、通信体制の改善を実施すると約束した。この障害は現代のクラウド依存社会の脆弱性を浮き彫りにした。

From: 文献リンクGoogle、数時間にわたるクラウド障害について謝罪とインシデントレポートを発表

【編集部解説】

6月12日の障害発生から4日後、Googleがついに詳細な技術的説明と今後の対策を公表しました。当サイトでは6月13日に速報記事を掲載しましたが、当初は「Googleは復旧に向けて取り組んでいるが、修正の予定時刻は示していない」という状況でした。今回のインシデントレポートで障害の全貌が明らかになっています。

技術的失敗の深刻さ

最も注目すべきは、Googleが現代のソフトウェア開発で常識とされる安全策を怠っていた点です。機能フラグによる段階的展開は、Netflix、Facebook、Microsoftなど主要テック企業が標準採用している手法で、新機能のリスクを最小化します。

5月29日に導入されたクォータポリシー機能は、本来であれば小規模なユーザーグループでテストし、問題がないことを確認してから全体展開すべきでした。しかし実際には一斉展開され、空白フィールドを含む不正データが全世界に配信されました。

連鎖障害の教訓

今回の障害で特に深刻だったのは、Google Cloudに直接依存していないサービスまで影響を受けた点です。前回の記事でも報告したように、Spotifyは音楽ストリーミング、Discordはゲーミングコミュニティ、OpenAIはAI開発と、一見無関係なサービスが同時に停止しました。

特にCloudflareの広報担当者が「これはGoogle Cloudの障害」と明言したことで、表面上は競合関係にある企業同士でも、実際のインフラレベルでは相互依存関係が存在することが判明しました。これは現代のインターネットが「見えない依存関係」で結ばれていることを示しています。

業界への波及効果

Googleの今回の対応は、他のクラウドプロバイダーにも影響を与える可能性があります。Amazon Web Services、Microsoft Azure、IBM Cloudなども、自社の障害対応プロトコルを見直すきっかけとなるでしょう。

特に「自動化された通信と人的通信の両方を改善する」というGoogleの約束は、障害時の透明性向上につながります。これまでクラウド障害では「復旧作業中」という曖昧な情報しか提供されないことが多く、顧客企業は対応に苦慮していました。

リスク管理の再考

この事件は、企業のクラウド戦略に重要な示唆を与えています。マルチクラウド戦略の重要性が再認識される一方で、完全な冗長化には技術的複雑性とコストの問題が伴います。

特に中小企業にとって、複数のクラウドプロバイダーを使い分けることは現実的ではありません。むしろ重要なのは、依存関係の可視化と障害時の事業継続計画(BCP)の策定でしょう。

Thomas Kurianの責任と今後

前回記事でも触れたように、Thomas Kurianが率いるGoogle Cloudは近年急速に成長し、AI需要の恩恵を受けているセグメントです。今回の正式謝罪は、同氏のリーダーシップが問われる重要な局面といえます。約束された改善策の実行が、Google Cloudの信頼回復の鍵となるでしょう。

【用語解説】

クォータポリシーチェック
クラウドサービスにおいて、ユーザーのリソース使用量制限を管理・監視する機能。APIリクエストの頻度や量を制御する。

機能フラグ(Feature Flag)
新機能を段階的にリリースするための開発手法。問題発生時の影響を最小限に抑えるため、一部のユーザーにのみ新機能を提供する。

503エラー
Webサーバーが一時的に利用できない状態を示すHTTPステータスコード。サーバー過負荷時に発生する。

単一障害点(Single Point of Failure)
システム全体の動作を停止させる可能性がある単一の構成要素。この部分が故障すると全体に影響が及ぶ。

【参考リンク】

Google Cloud Platform(外部)
Googleが提供するクラウドコンピューティングサービス。AI・機械学習、データ管理、ハイブリッド・マルチクラウドソリューションを提供している。

Cloudflare(外部)
世界中のWebサイトのセキュリティとパフォーマンスを向上させるCDNサービス。約20%のWebサイトを保護し、1日平均247億の脅威をブロックしている。

OpenAI(外部)
ChatGPTやGPT-4などの大規模言語モデルを開発するAI研究企業。API経由で多くのアプリケーションにAI機能を提供している。

Shopify(外部)
世界最大級のeコマースプラットフォーム。175カ国以上で数百万の企業がオンラインストアを運営している。

Google Cloud Service Health(外部)
Google Cloudサービスの稼働状況とインシデント履歴を確認できる公式ステータスページ。リアルタイムでサービス状況を監視できる。

【参考記事】

Google issues apology, incident report for hourslong cloud outage
Googleが金曜日に発表した公式謝罪とインシデントレポートの詳細。複数層の欠陥のあるアップデートが原因で、70以上のサービスが世界規模で停止したことを説明。

【編集部後記】

今回のGoogle Cloud障害は、私たちが日常的に依存しているデジタルインフラの脆弱性を改めて浮き彫りにしました。

あなたの会社や個人のプロジェクトでも、クラウドサービスに依存している部分はありませんか?この機会に、普段何気なく使っているサービスがどのような技術基盤の上に成り立っているのか、一度振り返ってみていただけると嬉しいです。

また、マルチクラウド戦略やバックアップ体制について、皆さんの組織ではどのような対策を取られているでしょうか?ぜひSNSで教えてください。

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TaTsu
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