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Flipper One開発進行中:Kali Linux、FPGA、SDRを統合した次世代ハッキングツール

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Last Updated on 2025-04-04 15:50 by admin

Flipper Zeroの開発者Pavel Zhovnerが、次世代ハッキングツール「Flipper One」の開発状況を2025年4月3日にTelegramチャンネルで約30分の動画を通じて公開した。Flipper Oneは、Kali Linux、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、SDR(Software-Defined Radio)を1つのデバイスに統合する高度なペネトレーションテスティングツールである。

Flipper Oneは2020年に初めて発表され、有線・無線ネットワーク攻撃向けの高度なバージョンとして設計されている。このデバイスはZeroのすべての機能に加え、Kali Linuxを搭載した独立したARMコンピュータを備える予定である。

現在の開発状況としては、256×144ピクセルの解像度を持つカスタムスクリーンが開発中で、フォームファクターはほぼ承認されている。デバイスは2つのモードで動作し、常時稼働するコプロセッサーモードではパワーバンクやUSBテスターとして機能し、メインプロセッサーモードではAndroid TV、Linuxなど複数のOSを選択して起動できる。

操作には8つのボタン(スティック、「OK」ボタン付きのD-pad、Alt+Tabボタン、4つのソフトウェアボタン、電源ボタン)が必要とされている。

開発者たちは小型デバイス向けの専用GUIを開発することで、従来のサイバーデッキの使いにくさを解消しようとしている。価格は300〜500ドル(約45,000〜75,000円)を想定しているが、プロジェクトはまだ研究開発段階にある。

from Arriva Flipper One! : Kali Linux, FPGA e SDR in un solo dispositivo?

【編集部解説】

Flipper Oneの開発は、サイバーセキュリティツールの進化における重要なステップと言えるでしょう。Flipper Zeroが既に多くのセキュリティ研究者やハッカーの間で人気を博していますが、Flipper Oneはその機能を大幅に拡張し、より高度なペネトレーションテストを可能にすることを目指しています。

特に注目すべきは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)とSDR(Software-Defined Radio)の統合です。これにより、ハードウェアレベルでのカスタマイズが可能になり、あらゆる無線プロトコルに対応できる柔軟性を持つことになります。Kali Linuxを搭載することで、既存の多数のセキュリティツールをそのまま利用できる点も大きな利点です。

最新の情報によると、Flipper Oneは単なるFlipperシリーズの上位モデルではなく、完全なポータブルコンピュータとして設計されているようです。2つのプロセッサを搭載し、一方は常時バックグラウンドで動作してバッテリー管理などの基本機能を担当し、もう一方はAndroid TVやLinuxなどの完全なOSを実行する強力なARMシステムオンチップになる予定です。

Pavel Zhovnerが言及している専用GUIの開発は、小型デバイスでの操作性という長年の課題に対する挑戦です。従来のLinuxベースのツールは小さな画面での操作が困難でしたが、Flipper One向けに最適化されたインターフェースが実現すれば、フィールドでのセキュリティテストの効率が飛躍的に向上する可能性があります。

価格帯(300〜500ドル)は一般消費者にとっては高額かもしれませんが、プロフェッショナルなセキュリティテスターやIT企業にとっては、その機能性を考えれば十分に投資価値のある金額と言えるでしょう。

Flipper Oneの開発は、セキュリティツールの民主化という観点からも重要です。高度なセキュリティテスト機能を手頃な価格で提供することで、より多くの人々がサイバーセキュリティの分野に参入できるようになります。

一方で、このようなツールが悪用される可能性も考慮する必要があります。実際に、Flipper Zeroは一部の国(カナダ、ブラジルなど)で禁止または制限されており、Amazonでも販売が制限されています。これは、一部のユーザーが違法行為を行う様子をオンラインで公開したことが原因です。

Flipper Oneが実現すれば、セキュリティ研究やペネトレーションテストの分野に革命をもたらす可能性がありますが、同時に責任ある使用と適切な規制のバランスが求められることになるでしょう。

【用語解説】

Flipper Zero: 2020年にKickstarterで資金調達に成功した多機能ハッキングデバイス。RFIDやNFC、赤外線、無線信号などさまざまな無線プロトコルの読み取り・複製・送信が可能。愛らしいイルカのデザインとゲーム機のような外観から「サイバーパンク的タマゴッチ」とも呼ばれている。

FPGA (Field-Programmable Gate Array): 製造後にプログラミングで内部構造を変更できる集積回路。レゴブロックのように、ハードウェアの機能を自由に組み替えられる半導体チップと例えられる。

SDR (Software-Defined Radio): ソフトウェアで無線通信の処理を行う技術。従来のハードウェア無線機に対し、柔軟に様々な無線規格に対応できる。スマートフォンのアプリを変えるだけで異なるラジオ局を受信できるようなものだ。

Kali Linux: サイバーセキュリティに特化したLinux OS。ハッカーの工具箱のようなもので、セキュリティテストに必要な多数のツールが搭載されている。

ペネトレーションテスト: 実際の攻撃者と同じ手法を用いて、システムのセキュリティを評価する手法。「ホワイトハッカー」が企業の許可を得て行う模擬ハッキングとも言える。

【参考リンク】

Flipper Zero公式サイト(外部)Flipper Zeroの製品情報や購入方法、コミュニティ情報を提供している公式サイト。

Offensive Security (Kali Linux開発元)(外部)Kali Linuxを開発・維持しているセキュリティ企業の公式サイト。

Pavel Zhovner Telegram Channel(外部)Flipper Oneの開発者Pavel Zhovnerの公式Telegramチャンネル。

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乗杉 海
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