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WhatsApp Windows版に危険な脆弱性 – JPG画像に見せかけた実行ファイルでマルウェア感染の恐れ

WhatsApp Windows版に危険な脆弱性 - JPG画像に見せかけた実行ファイルでマルウェア感染の恐れ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-09 10:37 by admin

Metaは2025年4月8日、Windows版WhatsAppに存在する重大な脆弱性(CVE-2025-30401)を公表しました。この脆弱性はバージョン2.2450.6より前のすべてのWindows版WhatsAppに影響し、ファイル添付機能の処理方法に関するバグに起因しています。

具体的には、WhatsAppは添付ファイルをMIMEタイプ(ファイルの種類を示すメタデータ)に基づいて表示しますが、ユーザーがファイルを開くと、アプリはファイル名の拡張子に基づいて処理を行います。これにより、例えば無害な画像に見せかけた実行ファイル(.exe)が、ユーザーがクリックした際にプログラムとして実行される可能性があります。

「悪意を持って作成された不一致により、受信者がWhatsApp内で添付ファイルを手動で開く際に、添付ファイルを表示するのではなく、誤って任意のコードを実行してしまう可能性がありました」とMetaはセキュリティ勧告で説明しています。

この脆弱性を悪用するには、被害者が悪意のある添付ファイルを手動で開く必要がありますが、多くのユーザーは何でもクリックする傾向があるため、攻撃は比較的容易に実行できる可能性があります。特にWhatsAppグループなどで画像が頻繁に共有される環境では、この脆弱性は深刻なリスクとなります。

Black Duckのマネージングセキュリティコンサルタント、アダム・ブラウン氏は「悪意のある添付ファイルはデータ窃取、マルウェアの実行や拡散、アカウントやIDの窃取など、様々な目的に使用される可能性がある」と警告しています。

Metaはこの脆弱性を発見したセキュリティ研究者からの報告を受け、修正版をリリースしました。Windows版WhatsAppユーザーは、安全を確保するためにバージョン2.2450.6以降に更新することが強く推奨されています。

なお、この脆弱性が実際に悪用されているかどうかは現時点で不明です。

from Don’t open that JPEG in WhatsApp for Windows. It might be an .EXE

【編集部解説】

今回発見されたWindows版WhatsAppの脆弱性(CVE-2025-30401)は、私たちが日常的に使用するメッセージングアプリの潜在的なリスクを浮き彫りにしています。この問題の本質は、ファイルの「見た目」と「実体」の不一致を悪用するという、古典的でありながら効果的な攻撃手法にあります。

具体的には、WhatsAppがファイルを表示する際にMIMEタイプを参照する一方、実際にファイルを開く際には拡張子に基づいて処理するという矛盾が問題でした。これにより、例えば見た目は無害な画像でも、実際には実行ファイル(.exe)として処理される可能性があったのです。

この種の脆弱性が特に危険なのは、ユーザーの信頼を悪用する点にあります。WhatsAppは世界中で20億人以上のユーザーを持つ人気アプリであり、多くの人々が友人や家族からの添付ファイルを疑うことなく開きます。

また、この脆弱性はWhatsAppグループでの共有においても大きなリスクとなります。例えば、地域コミュニティや職場のグループに潜入した攻撃者が、一見無害な画像として悪意あるコードを送信する可能性があるのです。

セキュリティの観点から見ると、この脆弱性は「社会工学的攻撃」と「技術的脆弱性」の組み合わせという、最も効果的な攻撃パターンの一つを示しています。技術的な欠陥だけでなく、人間の心理(信頼するソースからのファイルは安全だという思い込み)を利用している点が特徴的です。

幸いなことに、Metaはこの脆弱性を迅速に修正し、バージョン2.2450.6で対策を施しました。しかし、この事例は私たちに重要な教訓を与えてくれます。

まず、どんなに信頼できるアプリでも完璧なセキュリティはないということ。そして、ソフトウェアの定期的な更新がいかに重要かということです。

さらに、エンドユーザーとしても、送信元に関わらず添付ファイルを開く際には常に注意が必要だということを再認識させられます。

このような脆弱性は、デジタルコミュニケーションの利便性と安全性のバランスという永続的な課題を示しています。便利さを追求するあまり、セキュリティが犠牲になることがあるのです。

テクノロジー企業には、ユーザーエクスペリエンスを損なわずにセキュリティを強化するという難しい課題が常に存在します。今回のケースでは、MIMEタイプと拡張子の一貫性チェックという比較的シンプルな対策が有効でした。

今後も同様の脆弱性が他のアプリケーションで発見される可能性は高いでしょう。しかし、セキュリティ研究者とテクノロジー企業の協力により、多くの脆弱性が実害を及ぼす前に発見・修正されています。ただし、元記事によれば、この脆弱性が実際に悪用されているかどうかは現時点で不明です。

私たちユーザーにできることは、アプリを常に最新の状態に保ち、不審なファイルには触れないという基本的な対策を徹底することです。そして、セキュリティ意識を高め、デジタル世界での「健全な懐疑心」を持つことが重要になってきます。

【用語解説】

MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)タイプ
インターネット上でファイルの種類を識別するための標準化された方法。例えば、JPEGの画像は「image/jpeg」、HTMLファイルは「text/html」というMIMEタイプを持ちます。

拡張子
ファイル名の末尾につく記号(.jpg、.exe、.docxなど)で、ファイルの種類を示します。Windowsはこの拡張子に基づいてファイルを開くプログラムを決定します。

任意コード実行(RCE: Remote Code Execution)
攻撃者が標的のコンピュータ上で自分の選んだプログラムコードを実行できる脆弱性。

社会工学的攻撃(Social Engineering)
技術的な手段ではなく、人間の心理や行動を操作して情報を入手したり、不正行為を行わせたりする攻撃手法。

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)
公開された情報セキュリティの脆弱性や露出に関する共通識別子。CVE-2025-30401はWhatsAppの今回の脆弱性を特定するための固有の識別番号です。

【参考リンク】

WhatsApp公式サイト(外部)
WhatsAppの公式サイト。アプリのダウンロードやサポート情報、機能紹介などが掲載されている。

Meta(旧Facebook)(外部)
WhatsAppの親会社であるMetaの公式サイト。同社はInstagramやFacebookなども運営している。

Microsoft Store(外部)
Windows版WhatsAppの最新バージョンをダウンロードできる公式ストア。

WhatsAppヘルプセンター(外部)
WhatsAppの使い方やトラブルシューティングに関する情報が掲載されている。

【編集部後記】

今回の脆弱性は、ファイルの「見た目」と「実体」の不一致を悪用するものです。例えるなら、羊の皮を被った狼のようなもので、見た目は無害な画像ファイルに見せかけながら、実際には実行ファイルとして動作します。WhatsAppは世界で20億人以上のユーザーを持つ人気メッセージングアプリであり、その規模の大きさから攻撃者にとって魅力的な標的となっています。

特に注意すべきは、この脆弱性が「社会工学的攻撃」と組み合わせて使われる可能性が高いことです。例えば、友人や家族を装って「面白い写真を見て」というメッセージとともに悪意あるファイルを送りつけるといった手法が考えられます。

2024年7月にも、Windows版WhatsAppで、Pythonがインストールされているデバイスでは警告なしにPythonやPHP添付ファイルが実行される類似の問題が修正されています。

普段何気なく使っているメッセージアプリ、特に添付ファイルの開き方について見直してみませんか?今回のWhatsAppの事例は、便利さの裏に潜むリスクを教えてくれます。みなさんは、友人や家族から送られてきた画像や文書をどのように扱っていますか?また、アプリの更新はこまめに行っていますか?日常のちょっとした習慣が、デジタル生活の安全を大きく左右します。セキュリティと利便性のバランス、皆さんならどう取っていきますか?

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TaTsu
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