Last Updated on 2025-06-06 15:00 by admin
Epic GamesのデジタルヒューマンツールセットMetaHumanが2025年6月3日(現地時間、日本時間6月4日)に早期アクセスを終了し、MetaHuman 5.6として正式リリースされた。
同時にUnreal Engine 5.6への完全統合とライセンス形態の大幅変更により、あらゆるゲームエンジンやクリエイティブソフトウェアでの利用が可能となった。
Epic Gamesは2025年6月3日、米国フロリダ州オーランドで開催された「State of Unreal 2025」基調講演において、MetaHuman 5.6の正式リリースを発表した。MetaHuman CreatorがUnreal Engine 5.6に完全統合されたことで、クラウドベースの制約が解消され、ローカル環境での制作が可能になった。
主要な新機能として、パラメトリックボディシステムが導入され、身長、胸囲、ウエスト、脚の長さなど各部位を数値で調整できるようになった。MetaHuman Animatorでは、Webカメラやスマートフォンでリアルタイムアニメーションが可能となり、音声入力に応じた頭部の自然な動きと感情状態の手動制御機能が追加された。
ライセンス面では、新しいUnreal Engine EULAにより、MetaHumanをUnity、Maya、Houdiniなど他のゲームエンジンやクリエイティブソフトウェアで使用できるようになった。Maya用MetaHumanとHoudini用MetaHumanも同時にリリースされ、既存のプロダクションパイプラインとの統合が改善された。
FabマーケットプレイスではMetaHuman互換アセットの取引が可能になり、Unreal Engine 5.6以降で作成されたMetaHumanは共通仕様によりアセットの再利用と共有ができる。ビジュアル面では、スキャンデータベースの拡充により、より多様で高品質なキャラクター制作が実現。
from:MetaHuman の早期アクセスが終了し、正式版として登場。多数の新機能を搭載 | MetaHuman
【編集部解説】
MetaHuman 5.6の正式リリースは、デジタルヒューマン制作における大きなパラダイムシフトを示しています。2025年6月3日の「State of Unreal 2025」で発表されたこのアップデートは、これまで早期アクセス段階にあった技術が、ついに本格的な商用展開に移行したことを意味します。
最も注目すべき変化は、MetaHuman CreatorがUnreal Engine 5.6に完全統合されたことです。従来はクラウドベースのWebアプリケーションとして提供されていたため、インターネット接続やセッション時間の制約がありましたが、今回の統合により開発者はローカル環境で自由にキャラクター制作を行えるようになりました。新しいMetaHuman Characterアセットの導入により、エンジン内での作業効率が劇的に向上しています。
パラメトリックボディシステムの導入は、デジタルファッション業界に特に大きなインパクトを与えるでしょう。身長、胸囲、ウエスト、脚の長さなどを数値で細かく調整できるため、オンライン試着システムやバーチャルフィッティングルームの精度が飛躍的に向上します。これまでアバター作成において体型の多様性が課題となっていましたが、現実のスキャンデータに基づく豊富なバリエーションにより、より包括的な表現が可能になりました。
ライセンス形態の変更は、Epicの戦略的な方向転換を明確に示しています。Unreal Engine 5.6以降では従来のMetaHuman Creator EULAに代わってUnreal Engine EULAが適用され、MetaHumanをUnity、Godot、Maya、Houdini、Blenderなど他のゲームエンジンやクリエイティブソフトウェアで使用できるようになりました。これは自社エンジンへの囲い込みよりも、MetaHuman技術の普及とエコシステム拡大を優先する判断と考えられます。
MetaHuman Animatorの進化により、一般的なWebカメラやスマートフォンでリアルタイムアニメーションが可能になったことは、個人クリエイターや小規模チームにとって革命的です。従来は高価なモーションキャプチャー機材が必要でしたが、身近なデバイスで高品質なフェイシャルアニメーションを実現できるため、コンテンツ制作の民主化が大きく進展するでしょう。
音声からの自然な頭部の動きの追加は、AI技術の実用的な応用例として注目されます。話者の声のトーンや抑揚から感情を読み取り、それに応じた表情アニメーションを生成する技術は、ライブストリーミングやバーチャルプレゼンテーション、教育コンテンツなどの分野で新たな表現手法を提供します。
一方で、この技術の普及には潜在的なリスクも存在します。デジタルヒューマンの品質向上により、ディープフェイクやなりすましといった悪用の可能性が高まります。特に音声からリアルタイムでアニメーションを生成できる機能は、本人の同意なしに特定の人物を模倣したコンテンツ作成を容易にする恐れがあります。
Fabマーケットプレイスとの統合により、MetaHuman用のアセットエコシステムが本格的に立ち上がることも重要なポイントです。衣装やヘアスタイル、アクセサリーなどを売買できるプラットフォームの存在は、個人クリエイターの収益化機会を創出し、より多様なデジタルファッションの発展を促進するでしょう。
Maya用MetaHumanとHoudini用MetaHumanの提供により、既存のプロダクションパイプラインとの統合が大幅に改善されました。特に3Lateral社の業界最先端技術を誰でも利用できるようになったことで、プロフェッショナルレベルの制作環境が広く開放されています。
長期的な視点では、MetaHuman 5.6のリリースは、デジタルツインやメタバース空間における人間表現の標準化に向けた重要な一歩となります。リアルタイム性能の向上と制作コストの削減により、これまで大手スタジオに限られていた高品質なデジタルヒューマン制作が、より多くのクリエイターに開放されることになるでしょう。
【用語解説】
パラメトリックボディシステム:数値パラメータによって体型を調整できるシステム。身長、胸囲、ウエスト、脚の長さなどを個別に設定可能で、現実のスキャンデータに基づく自然な体型バリエーションを生成する。
Unreal Engine EULA:Unreal Engineのエンドユーザーライセンス契約書。MetaHuman 5.6以降では、従来のMetaHuman Creator EULAに代わってこのライセンスが適用される。
【参考リンク】
Epic Games公式サイト(外部)Unreal EngineやFortniteで知られるゲーム開発・技術企業。MetaHumanの開発元として、ゲームエンジンからデジタルヒューマン技術まで幅広く展開している。
MetaHuman公式ページ(外部)MetaHumanの機能紹介や最新情報を提供する公式ページ。チュートリアルやサンプル作品、技術仕様などの詳細情報を確認できる。
Unreal Engine公式サイト(外部)Epic Gamesが開発するゲームエンジンの公式サイト。MetaHuman Creatorが統合されたUnreal Engine 5.6の情報やダウンロードが可能。
【参考動画】
【参考記事】
What’s New With Unreal Engine 5.6: Honest Review of All New Features You Need to Check Out | VagonUnreal Engine 5.6の新機能を包括的にレビューした記事。MetaHumanの統合やライセンス変更について詳細に解説している。
Unreal Engine 5.6 Release Notes | Epic Games DevelopersUnreal Engine 5.6の公式リリースノート。MetaHuman 5.6の新機能や技術仕様について公式情報を提供している。
MetaHuman 5.6 Workflow Changes | Epic Games DevelopersMetaHuman 5.6でのワークフロー変更点を詳細に説明した公式ドキュメント。従来バージョンからの移行方法についても記載されている。
【編集部後記】
MetaHuman 5.6の正式リリースのニュースを読んで、デジタルヒューマン技術がついに本格的な普及段階に入ったと感じました。特に、Webカメラやスマートフォンでリアルタイムアニメーションが可能になったことで、高価な機材を持たない個人クリエイターにも映画レベルの表現が手の届くところまで来たのは驚きです。