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双江口ダム:中国が建設中の世界最高315mダムが初の貯水を完了、2025年末に発電開始へ

双江口ダム:中国が建設中の世界最高315mダムが初の貯水を完了、2025年末に発電開始へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-14 07:14 by admin

中国西部の四川省アバ・チベット族チャン族自治州に建設中の双江口水力発電ダムが2025年5月1日に初めての貯水を完了した。このダムは完成すると高さ315メートルとなり、現在の記録保持者である同じく四川省にある錦屏第一ダムを10メートル上回る世界最高のダムとなる。

双江口ダムは大渡河上流に位置し、「二つの川の口」という名の通り、2本の川が合流する地点に建設されている。現在のダムの高さは205メートルまで完成しており、今後さらに110メートルの建設が予定されている。

今回の初貯水では水位が海抜2,344メートルに達し、これは元の河川レベルより約80メートル高い位置である。貯水量は1億1000万立方メートルとなった。2027年には通常の貯水水位に達する計画で、さらに水位が上昇する見込みである。

このダムは中国の「第14次五カ年計画」における重点エネルギー事業であり、総投資額は約360億元(49億米ドル)に達する。使用される土砂の総量は4600万立方メートルを超える巨大インフラプロジェクトである。ダムの断面は台形構造で、基底部の厚さは1400メートル、上部の厚さは16メートルとなっている。

発電所の総出力は200万キロワット(2000メガワット)で、年間平均発電量は77億キロワット時に達する計画である。また、下流の複数の水力発電所の発電能力を高め、年間66億キロワット時の追加発電が可能になり、これは300万世帯以上の1年分の電力需要を満たす規模である。

このプロジェクトは年間約296万トンの石炭消費を削減し、約718万トンの二酸化炭素排出量を削減することで、中国の2060年カーボンニュートラル目標達成を支援する。2025年末には、双江口水力発電所で初の発電機が稼働する予定である。

References:
文献リンクChina Is Building the World’s Tallest Dam: Shuangjiangkou Takes a Key Step

【編集部解説】

中国四川省で建設が進む双江口ダムは、単なる巨大インフラプロジェクトではなく、中国のエネルギー政策と環境目標の象徴的存在です。高さ315メートルという世界最高のダムは、工学的な偉業であると同時に、中国が再生可能エネルギーへの移行を加速させる決意を示しています。

このプロジェクトは2015年4月に承認され、同年7月から建設が始まりました。約10年にわたる建設期間を経て、2025年5月1日に初めての貯水が開始されたことは、プロジェクトが最終段階に入ったことを意味します。

双江口ダムの建設には多くの技術的課題がありました。標高2,400メートル以上の高地に位置し、地震活動が活発な地域であることから、耐震性の確保や浸水防止、ダムの核心構造の建設など、複雑な工学的問題を解決する必要がありました。これらの課題に対応するため、ロボット技術や5Gシステム、リアルタイムデータモニタリングなどの先端技術が活用されています。

環境面での懸念も無視できません。中国環境省は2013年の承認時点で、このプロジェクトが希少な魚類や植物に悪影響を与え、地域の自然保護区に影響を及ぼすことを認めていました。特に、急流である大渡河の流れを遅くすることによる化学的、熱的、物理的変化が、貯水池や下流の河川を深刻に汚染する可能性が指摘されています。

一方で、環境面でのメリットも大きいとされています。双江口ダムは年間約296万トンの石炭消費を削減し、約718万トンの二酸化炭素排出量を削減することで、中国のカーボンニュートラル目標達成を支援します。これは中国が2060年までに達成を目指すカーボンニュートラル政策の重要な一部となっています。

中国は1950年代以降、高さ15メートル以上のダムを22,000以上建設しており、これは世界全体のこうした構造物のほぼ半分を占めています。特に中国南西部の急峻な山岳河川は、水力発電プロジェクトに理想的な立地を提供しています。

双江口ダムの完成は、中国のエネルギー構成に大きな変化をもたらすでしょう。中国は2020年までにエネルギーミックスにおける非化石燃料の割合を15%に引き上げる目標を掲げており、水力発電がその最大の貢献者となることが期待されています。

しかし、大規模ダム建設の環境への影響については議論が続いています。魚の産卵や移動の妨げになる可能性や、自然保護区の一部が水没すること、下流の水質汚染の可能性など、環境保護団体からの懸念は根強いものがあります。

また、ダム建設には大量のコンクリートが必要であり、その主成分であるセメントの生産は世界のCO2排出量の約5%を占めると言われています。中国は世界のセメント生産の45%以上を担っており、この巨大産業は国のカーボン排出量の大きな部分を占めています。

双江口ダムの最初の発電ユニットは2025年末までに稼働を開始する予定で、完全に稼働すると年間77億キロワット時の電力を生産し、300万世帯以上に電力を供給できるようになります。

このプロジェクトは、中国が直面するエネルギーと環境のジレンマを象徴しています。一方では再生可能エネルギーへの移行を加速させる必要があり、他方では大規模インフラプロジェクトの環境への影響を最小限に抑える必要があります。双江口ダムが世界最高のダムとして完成する過程で、中国がこのバランスをどのように取るかは、今後の世界のエネルギー政策にも影響を与えるでしょう。

【用語解説】

双江口水力発電ダム(Shuangjiangkou Hydropower Dam)
中国四川省アバ・チベット族チャン族自治州に建設中の世界最高のダムで、完成時の高さは315メートルとなる。「双江口」という名前は「二つの川の口」という意味で、2本の川が合流する地点に位置している。

大渡河(Dadu River)
中国四川省西部を流れる長江水系の支流で、全長約1,155キロメートル。チベット高原から四川盆地へと流れ、急流で知られる。

錦屏第一ダム(Jinping-I Dam)
現在世界最高のダムで、高さは305メートル。中国四川省に位置し、2013年に完成した。双江口ダムが完成すると、この記録は更新される。

中国電力建設(PowerChina)
このプロジェクトを担当する中国の国有企業。水力発電所や各種インフラの設計・建設を手がける世界最大級の電力建設会社である。

第14次五カ年計画
中国政府が2021年から2025年までの5年間で実施する国家発展計画。再生可能エネルギーの拡大と炭素排出量削減が重要な目標として掲げられている。

【参考リンク】

中国電力建設(PowerChina)公式サイト(外部)
双江口ダムを建設している中国国有企業の公式サイト。水力発電所や各種インフラの設計・建設プロジェクトを世界中で展開している。

中国国家エネルギー局(外部)
中国のエネルギー政策を担当する政府機関。再生可能エネルギー開発計画や大型エネルギープロジェクトの承認に関する情報を公開している。

【参考動画】

【編集部後記】

世界最高のダム建設という壮大なプロジェクト、皆さんはどう思われますか? 自然エネルギーの活用と環境保全のバランス、技術の進歩と自然への影響-こうした課題は日本のインフラ開発にも共通するものです。もし日本で同様のプロジェクトが計画されたら、どんな点を重視すべきだと考えますか? また、再生可能エネルギーの未来について、皆さんのビジョンをぜひSNSでシェアしていただければ幸いです。エネルギーの未来を共に考えていきましょう。

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TaTsu
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