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宇宙の終焉が10⁷⁸年後に訪れる可能性 – ラドバウド大学の研究チームが従来予測を覆す新理論を発表

宇宙の終焉が10⁷⁸年後に訪れる可能性 - ラドバウド大学の研究チームが従来予測を覆す新理論を発表 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-14 07:05 by admin

オランダのラドバウド大学の研究チームが、宇宙の寿命が従来の予測よりも大幅に短い約10⁷⁸年である可能性を示す研究結果を発表した。この研究は「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載され、2023年に発表された同チームの論文の続編である。従来の予測では宇宙の最終的な崩壊は10¹¹⁰⁰年後とされていたが、新たな計算によりその寿命は大幅に短縮された。

研究チームはHeino Falcke氏、Michael Wondrak氏、Walter van Suijlekom氏の3名で構成され、彼らは1975年にスティーヴン・ホーキングが提唱したホーキング放射に関する新たな知見を示した。研究によると、ブラックホールだけでなく、白色矮星や中性子星、さらには人体のような物体も「蒸発」するプロセスを経ることが理論的に証明された。

特に注目すべき発見は、白色矮星の寿命に関するものである。これまで白色矮星は約10¹¹⁰⁰年生存すると考えられていたが、ホーキング放射に似たプロセスにより10⁷⁸年で消滅する可能性が示された。

研究チームは、ブラックホールの特徴である「事象の地平面」がなくてもホーキング放射が発生することを理論的に示した。これにより、宇宙のあらゆる物体が最終的には蒸発する可能性があることが明らかになった。

計算によると、中性子星とブラックホールは約10⁶⁷年で蒸発し、月や人体などの物体は約10⁹⁰年で蒸発するという。また、物体の蒸発時間はその平均質量密度の-3/2乗にスケールするという関係性が示された。ただし、これらの数値は理論上のものであり、実際には他の要因によってより早く消滅する可能性がある。

この研究は、宇宙の根本的な法則と物理学の理解を深めるための重要な一歩となっている。研究者のvan Suijlekom氏は「このような極端なケースを検討することで、理論をより良く理解し、いつかホーキング放射の謎を解明できるかもしれない」と述べている。

References:
文献リンクShocking New Study Reveals the Universe Could End in Just 10⁷⁸ Years

【編集部解説】

オランダのラドバウド大学の研究チームが発表した宇宙の寿命に関する新しい計算結果は、宇宙物理学の分野に大きな波紋を投げかけています。この研究は2023年に発表された論文「An Upper Limit to the Lifetime of Stellar Remnants from Gravitational Pair Production」の続編として、「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載されたものです。

研究チームは、ブラックホール専門家のHeino Falcke氏、量子物理学者のMichael Wondrak氏、数学者のWalter van Suijlekom氏の3名で構成されています。彼らは、スティーヴン・ホーキングが1975年に提唱した「ホーキング放射」の概念を拡張し、ブラックホールだけでなく、中性子星や白色矮星などの天体にも同様のプロセスが適用できることを示しました。

従来の理論では、宇宙の最終的な崩壊は約10¹¹⁰⁰年後(1の後に1,100個のゼロが続く数)と予測されていましたが、新たな計算によると約10⁷⁸年後(1の後に78個のゼロが続く数)と大幅に短縮されています。これは人間のスケールで例えるなら、「あと50年生きられる」と言われていた人が「実は1兆分の1兆分の1秒しか生きられない」と告げられるようなものです。もちろん、それでもなお私たちの想像を超える長い時間であることに変わりはありません。

特に興味深いのは、中性子星と恒星質量ブラックホールの崩壊時間が同じく約10⁶⁷年と計算されたことです。一般的にブラックホールの方が強い重力場を持つため、より速く蒸発すると予想されていましたが、研究によれば、ブラックホールは表面を持たないため、自身の放射の一部を再吸収し、蒸発プロセスが抑制されるとのことです。

この研究の重要な点は、密度と崩壊時間の関係を明らかにしたことです。物体の蒸発時間は、その平均質量密度の-3/2乗にスケールするという優雅な関係が示されました。つまり、物体が密であればあるほど、このプロセスによる崩壊は速くなります。この関係式により、様々な天体の寿命を統一的に理解することが可能になりました。

また、研究者たちは月や人体などの日常的な物体についても計算を行い、純粋にホーキング様の放射だけを考慮した場合、約10⁹⁰年で蒸発すると予測しています。もちろん、現実には他の多くのプロセスがこれらの物体をより早く消滅させるでしょう。

この研究は、宇宙の根本的な性質と物理法則の理解を深める上で重要な一歩となっています。特に興味深いのは、研究者たちが「前の宇宙からの化石的恒星残骸が現在の宇宙に存在する可能性がある」と示唆している点です。これは、宇宙の循環的な性質に関する新たな視点を提供しています。

私たちinnovaTopiaの編集部としては、この研究が示す宇宙の有限性と、それでもなお気の遠くなるような時間スケールに、人間の存在の儚さと宇宙の壮大さを感じます。この研究は、量子物理学と一般相対性理論の境界に位置する現象を探求することで、アインシュタインとホーキングの理論を橋渡しする試みとも言えるでしょう。

最後に、この研究はまだ理論的な計算に基づくものであり、直接的な観測証拠はありません。しかし、宇宙の究極的な運命に関する私たちの理解を深め、物理学の基本法則についての新たな洞察を提供してくれます。科学の進歩は常に既存の理論に挑戦し、私たちの宇宙観を更新し続けているのです。

【用語解説】

ホーキング放射(Hawking radiation)
1975年にスティーヴン・ホーキングが提唱した理論で、ブラックホールが実際には放射を放出し、徐々に蒸発していくという現象。量子力学の原理により、ブラックホールの事象の地平線付近で生成される粒子と反粒子のペアのうち、一方がブラックホールに吸い込まれ、もう一方が放射として放出される。

白色矮星(White dwarf)
恒星の最終段階の一つで、太陽質量程度の星が核燃料を使い果たした後に残る高密度の天体。従来は宇宙で最も長寿命の天体の一つと考えられていた。

中性子星(Neutron star)
大質量星が超新星爆発を起こした後に残る、極めて高密度の天体。主に中性子からなり、地球上では再現できないほどの強い重力場を持つ。

真空崩壊(Vacuum decay)
量子場理論における現象で、宇宙の真空状態が「偽の真空」から「真の真空」へと移行する過程。この移行が起こると、光速で拡大する泡が生成され、その経路上のすべての原子が破壊される可能性がある。

密度と崩壊時間の関係
今回の研究で示された関係式で、物体の蒸発時間はその平均質量密度の-3/2乗にスケールする。つまり、密度が高い物体ほど速く蒸発する傾向がある。この関係式により、様々な天体の寿命を統一的に理解することが可能になった。

ラドバウド大学(Radboud University)
オランダのナイメーヘンに位置する公立研究大学。1923年に設立され、世界大学ランキングで常にトップ150に入る研究機関。7つの学部と24,000人以上の学生を擁する。

Heino Falcke
1966年9月26日生まれのドイツ人天文学者。ラドバウド大学の電波天文学および宇宙粒子物理学の教授。ブラックホールの研究が専門で、「ブラックホールの影」の概念の提唱者。2019年にイベント・ホライズン・テレスコープの最初の結果を発表した。

Michael Wondrak
ラドバウド大学の量子物理学者。ブラックホール、量子重力、イベント・ホライズン・テレスコープに関する研究を行っている。

Walter van Suijlekom
ラドバウド大学の数学教授。今回の研究ではFalckeとWondrakと共に、宇宙の崩壊に関する計算を行った。

【参考リンク】

ラドバウド大学(外部)
オランダの主要研究大学で、今回の研究を行ったFalcke、Wondrak、van Suijlekomが所属している機関。

Journal of Cosmology and Astroparticle Physics(外部)
今回の研究が掲載された宇宙論と宇宙粒子物理学に焦点を当てた査読付き科学ジャーナル。

An Upper Limit to the Lifetime of Stellar Remnants(外部)
2023年に発表された、今回の研究の基となった論文。arXivプレプリントサーバーで閲覧可能。

【参考動画】

【編集部後記】

宇宙の寿命が従来の予想より短いという研究結果、皆さんはどう感じましたか? 10⁷⁸年という数字は依然として想像を超える時間ですが、宇宙にも「終わり」があると考えると不思議な感覚ですね。この研究が示す「物体の密度と崩壊時間の関係」は、宇宙の根本法則の理解につながる重要な発見です。皆さんも時々、夜空を見上げて宇宙の壮大さに思いを馳せてみてはいかがでしょうか? SNSで皆さんの宇宙観をぜひ共有してください。

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TaTsu
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