HUAWEI MatePad Pro Max発表|4.7mmの薄さで「ラップトップ代替」に挑む

[更新]2026年5月7日

タブレットがラップトップを本当に代替できる日は来るのか——この問いが語られてきました。画面は大きくなり、チップは速くなり、キーボードも付いた。それでも「やはりPCでないと」という壁は残ってきました。2026年5月7日、Huaweiがバンコクで発表したMatePad Pro Maxは、その問いにまた一石を投じる製品です。厚さ4.7mm、13.2インチのOLEDフラッグシップ。Apple iPad Pro M5(約5.1mm)を下回る薄さで、「ラップトップ代替」を正面から掲げました。ハードウェアの完成度と、HarmonyOSというエコシステムの現在地——その両方を見ていきます。


2026年5月7日、HuaweiはタイのバンコクでHUAWEI MatePad Pro Maxをグローバル発表した。同製品はHuawei製タブレット史上最薄となる厚さ4.7mmを実現し、13.2インチのフレキシブルOLED PaperMatte(3K解像度)を搭載する。ベゼル幅は3.55mm、フロントカメラはノッチやパンチホールのないインフレーム型を採用した。

Glideキーボードおよびスタイラスへの対応も確認されており、HuaweiはPCレベルの生産性を訴求してラップトップ代替として位置づけている。発表は「Now Is Your Spark」イノベーティブ・ローンチ・イベントの場で行われ、同イベントではHUAWEI WATCH FIT 5 Series、nova 15 Maxなども併せて披露された。価格・チップ・バッテリー容量などの詳細スペックは現時点で未公表だ。

From: 文献リンクFlagship Tablet to Highlight Huawei Innovative Product Launch in Bangkok

【編集部解説】

「ラップトップ代替」というメッセージは、ハードウェア単体では完結しない

MatePad Pro Maxの厚さ4.7mmは、Apple iPad Pro M5の約5.1mmを下回ります。13インチ級OLEDタブレットとして、Honor MagicPad 3 Pro 12.3の4.8mmも上回り、物理的な完成度はトップクラスに位置します。フレキシブルOLED、PaperMatte、3K解像度、3.55mmベゼル、インフレームカメラ——ハードウェアの仕様だけを並べれば、Huaweiが「Huawei史上最高のタブレット」と表現するのは過剰ではありません。

しかし、Huaweiが製品メッセージで掲げた「PCレベルの生産性」と「ラップトップ代替」という位置づけは、薄さや画面の美しさだけでは支えられません。タブレットがラップトップを置き換えうるかどうかは、突き詰めれば「OSとアプリのエコシステムが、その人の仕事を成立させるか」で決まるからです。この記事では、その視点からMatePad Pro Maxを読み解いてみます。

Appleが20年かけてたどり着いた「ようやくラップトップ代替」の現在地

参照点としてApple iPad Proの歩みを置くと、論点が立ちます。

iPad Proが「ラップトップ代替」と呼ばれ始めたのは2015年の初代登場時に遡りますが、評論家の評価は長らく一致しませんでした。M1(2021年)、M2、M4、M5とチップを更新しても、「ハードウェアが進化してもiPadOSが追いつかない」という指摘は2025年まで残り続けました。

転換点とされたのが、2025年9月のiPadOS 26です。Mac的なウィンドウ管理、メニューバー、刷新されたFilesアプリ、外部ディスプレイ対応の改善——これらが揃って初めて、複数の評論家が「iPad Proが本格的にラップトップ代替たりうる」と書き始めました。

ハードウェアと軌を一にして、プロ向けアプリ群の蓄積もありました。Final Cut Pro for iPadとLogic Pro for iPadが2023年5月に登場し、2024年にはM4対応の第2世代でLive Multicam等の機能を加えました。Adobe Creative Cloud、Microsoft Office、Google Workspace、DaVinci Resolveなど、デスクトップ級のアプリがiPadに揃ったうえで、OSがそれを「PCのように」走らせる土台を整える——この10年以上かけた両輪の積み重ねが、iPadの「ラップトップ代替」議論の前提にあります。

ここで重要なのは、Appleでさえ「ラップトップ代替」と胸を張れるようになるまでに、これだけの時間と蓄積が必要だったという事実です。閉じたエコシステムを持ち、自社でハードもOSもプロアプリも作れるAppleが、です。

HarmonyOS NEXTの現在地:中国では成功、グローバルではこれから

ではMatePad Pro Maxを支えるHarmonyOS側はどうか。

Huaweiは2024年10月22日にHarmonyOS NEXT(正式名称はHarmonyOS 5)を正式発表し、同年11月より順次一般提供を開始しました。これはバージョン1〜4が保っていたAndroid互換レイヤーを完全に取り除き、独自のArkCompiler/HarmonyOS SDKで書かれたネイティブアプリのみを動かす純粋な独自OSです。Android APKは動作しません。同社CEOの余承東(リチャード・ユー)氏は2025年1月の社員向け新年メッセージで、ネイティブアプリ・メタサービスが2万件超、開発者は720万人超、エコシステム接続デバイスは10億台超に達したと述べたと報じられています。

中国国内に限れば、これは大きな成功です。WeChat、Alipay、Baidu、Meituan、Weibo、JD.com、Kuaishou、Bilibiliといった主要アプリはすべてHarmonyOS NEXT向けに最適化されており、2024年第1四半期には中国市場でiOSを抜き2位の座を占めました。WeChatをはじめとする主要アプリで日常業務・生活の大部分が完結する中国の消費者にとって、HarmonyOSタブレットは現実的な選択肢です。

問題はその外側です。グローバル市場全体ではHarmonyOSのシェアは4〜5%にとどまり(2024〜2025年のデータ)、Android(約77%)、iOS(約18〜19%)に大きく引き離されています。同社は2026年からの本格的な国際展開を目標に掲げ、報道では、最初の足場として香港、東南アジア、中東が選ばれていると伝えられています。今回のバンコクでのMatePad Pro Maxグローバル発表が、その文脈に位置づけられていることは明らかです。

グローバル展開で立ちはだかる二つの構造的障壁

HarmonyOS NEXTのグローバル展開には、二つの構造的な障壁があります。

第一に、Google Mobile Services(GMS)の不在です。米国による制裁により2019年以降、Huaweiは新しいデバイスにGMSを搭載できなくなりました。これはGmail、Google Maps、YouTube公式アプリ、そしてGoogle Play Store経由で配信される膨大な西洋向けアプリ——WhatsApp、Instagram、Facebook、Netflix、Spotify、各種銀行アプリなど——が、デフォルトでは使えないことを意味します。Android互換時代のHuaweiデバイスでさえ、ユーザーはこれらを動かすために複雑なサイドロード手順を踏む必要がありました。

HarmonyOS NEXTはこの状況を技術的にさらに難しくする側面があります。AndroidのAPKすら動かない以上、これまでの「サイドロードという裏口」も塞がれます。Huawei AppGalleryに各西洋アプリのHarmonyOSネイティブ版が並ぶかどうかが、すべてとなります。一部報道では、HuaweiはHarmonyOSのアプリ品質を2026年4月までにAndroid・iOSと同等水準に到達させると予測していたとされますが、これは中国国内のアプリ群を念頭に置いた目標であり、欧米製のプロ向けアプリ群(Adobe Creative Cloud各種、Final Cut Pro、Logic Pro、Microsoft 365のフル機能版、各種開発ツール)がHarmonyOSネイティブで揃う見込みは現時点ではほぼ立っていません。

第二に、「ラップトップ代替」を成立させるためのプロ向けアプリ生態系そのものが、HarmonyOSにはまだ十分に存在しません。中国国内向けのオフィスアプリやクリエイティブツールは充実しつつありますが、グローバルなクリエイティブ業務・ソフトウェア開発・企業内業務で標準的に使われるソフトウェア群は、HarmonyOSネイティブにはほとんど到来していません。

評価軸が分裂する製品

ここに、MatePad Pro Maxの評価が国・地域・利用者層によって大きく分裂するという、珍しい状況が生まれます。

中国国内のユーザーにとって、これはおそらく現時点で買える最良のタブレットの一つです。HarmonyOSの「1+8+N」エコシステム(スマートフォンを中心にPC、タブレット、ウォッチ、車載機器等を連携させる戦略)の中でMate系スマートフォンと組み合わせれば、AppleがMac+iPad+iPhoneで実現してきた連携体験に近いものが得られます。

東南アジアや中東のユーザーにとっては、もう少し複雑な計算になります。これらの市場ではAndroidが圧倒的に優勢ですが、Huaweiも一定のブランド浸透があります。GMS非対応というハンデを、ハードウェアの完成度と独自エコシステムの魅力でどこまで相殺できるか——その損益分岐点は、利用者ごとに異なります。なお、MatePad Pro Maxの価格は本稿執筆時点では未発表のため、価格競争力については現段階では判断できません。

そして日本市場のユーザーにとっては、最もシビアな計算が必要かもしれません。日本ではApple、Google、Microsoftのエコシステムへの依存度が高く、業務アプリも欧米発のものが主流です。MatePad Pro Maxの薄さや画面の美しさは魅力的でも、「これで仕事を完結させられるか」という問いには、ハードウェア仕様だけでは答えられません。なお、MatePad Pro Maxの日本での発売時期・搭載OS(HarmonyOS NEXTか、AppGalleryベースのHarmonyOS 4系か)は、本稿執筆時点では明らかにされていません。

「ラップトップ代替」というメッセージの読み方

最後に整理しておきたいのは、「ラップトップ代替」というメッセージそのものの読み方です。

Appleがこのフレーズを使うとき、その背後にはmacOS/iPadOS/iOSという閉じたエコシステム——プロ向けアプリ、開発ツール、デバイス間連携の20年以上の蓄積——があります。HuaweiがバンコクでMatePad Pro Maxに同じフレーズを掲げるとき、その背景にあるのは、エコシステムを「これから本格的に組み上げていく」段階の自国OSです。同じ言葉でも、それが指すものは大きく異なります。

ハードウェアの薄さや画面の美しさは、確かに購入の動機になります。しかし、タブレットがラップトップを本当に代替できるかどうかの判断は、その人が日々使うアプリと、それを動かすOSの上に成り立つもの——つまり、自分がどのエコシステムの中で仕事と生活を組み立てているかに、最終的には還ってきます。MatePad Pro Maxは、その問いを改めて私たちに突きつける製品でもあります。

【用語解説】

HarmonyOS NEXT(HarmonyOS 5)
Huaweiが独自開発したモバイルOS。2024年10月に正式発表し、同年11月より順次一般提供を開始。バージョン1〜4まで保持していたAndroid互換レイヤーを完全に撤廃し、独自カーネルとArkCompilerベースのネイティブアプリのみで動作する純粋な独自OS。Android APKは動作しない。

PaperMatte Display
ナノレベルの表面加工(エッチング)を施した反射防止ディスプレイ技術。ガラス面の光反射を大幅に低減し、紙に近い視認性と書き心地を実現する。スタイラスでの筆記や長時間の閲覧に最適化されており、MatePad Pro系の上位モデルに採用されてきた。

GMS(Google Mobile Services)
Googleが提供するAPIとサービス群の総称。Gmail、Google Maps、Google Play Store、YouTube公式アプリなどを含む。2019年以降の米国制裁によりHuaweiは新デバイスへのGMS搭載が禁じられており、MatePad Pro MaxでもGMS依存アプリはデフォルトでは利用できない。

1+8+Nエコシステム
Huaweiが推進するデバイス連携戦略。スマートフォン(1)を核に、タブレット・PC・スマートウォッチ・イヤホン・スピーカー・TV・メガネ・車載機器の8カテゴリ、および各種IoT周辺機器(N)をシームレスに連携させる構想。HarmonyOSを共通プラットフォームとして機器間の情報共有・操作連携を実現する。

インフレームカメラ
フロントカメラをディスプレイのベゼル(縁)の内部空間に埋め込む設計。ノッチやパンチホールを設けることなくカメラを内蔵でき、ディスプレイ表示領域への影響を最小化できる。

Glideキーボード
MatePad Pro Maxに対応する専用アクセサリキーボード。マグネットで本体と接続し、PCライクな入力環境を提供する。詳細なキーピッチ・トラックパッド仕様は発表時点で未公開。

【参考リンク】

HUAWEI タブレット製品一覧(公式)(外部)
MatePad Proシリーズをはじめとする全タブレットラインナップの公式ページ。発売後に詳細スペック・価格が掲載される

Huawei AppGallery(外部)
HuaweiのアプリストアでHarmonyOSネイティブアプリを配信。グローバル向けに対応アプリを確認できる

【参考動画】

【参考記事】

Huawei MatePad Pro Max Debuts Globally — It’s just 4.7mm Thin(Gizchina、2026/05/06)(外部)
公式ティーザーに基づくMatePad Pro Max詳細レポート。スペック・競合比較・ポジショニング分析を含む

The Complete Guide to HarmonyOS NEXT(AppInChina)(外部)
HarmonyOS NEXTの概要・グローバル市場シェア・2026年国際展開戦略を解説した包括的ガイド

HarmonyOS NEXT App Count Surpasses Expectations(harmony-developers.com、2025/01)(外部)
余承東CEO発表に基づくネイティブアプリ数・開発者数・エコシステム規模の詳細

HarmonyOS — Android Ecosystem Expansion(Digitimes、2024/11)(外部)
HarmonyOSの中国市場シェア推移、グローバル市場でのAndroid・iOS・HarmonyOSシェア比較、国際展開ロードマップを報告

Huawei’s HarmonyOS unseats Apple’s iOS to become China’s No.2 mobile operating platform(SCMP)(外部)
2024年Q1に中国市場でHarmonyOSがiOSを上回り2位となったことをCounterpointデータで報告

M5 iPad Pro Review: Promise Fulfilled(Six Colors、2025/10)(外部)
M5 iPad Pro+iPadOS 26のレビュー。「ハードがOSを長年上回ってきた」経緯とiPadOS 26で初めてOSが追いついたとする評価を詳述

Does the M5-Based iPad Pro Change the Tablet-Laptop Equation?(Computerworld)(外部)
iPadOS 26の機能追加がラップトップ代替議論をどう変えたかを分析

iPadOS 26 Makes iPad a True MacBook Replacement(Laptop Mag)(外部)
iPadOS 26の実用的な改善点と依然として残る制限を詳報。タブレットとラップトップの境界線を現実的に整理

【関連記事】

【編集部後記】

タブレットを選ぶとき、私たちは無意識のうちに「自分が日々どのアプリで仕事をして、どのサービスで人とつながっているか」を点検しているのかもしれません。MatePad Pro Maxという薄く美しい一枚は、その点検作業を改めて私たちに迫ってきます。仕事道具を選ぶことは、自分がどのエコシステムの中で生きているかを選び直すことでもある——そんな問いが、4.7mmの薄さの向こうに見えてきます。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。