ソニー、PlayStationディスク生産を2028年終了へ|デジタル所有という問い

[更新]2026年7月3日

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ゲームソフトを「所有する」という感覚は、この数年ですでに薄れつつあります。音楽や映画がそうであったように、ゲームもまたパッケージを開ける体験からダウンロードボタンを押す体験へと軸足を移してきました。そして7月1日、ソニーがその一つの節目となる発表を行いました。PlayStation向け新作タイトルの物理ディスク生産を、2028年1月をもって終了するというものです。


Sony Interactive Entertainmentは7月1日、公式ブログを通じて、PlayStation向けに発売される新作タイトルについて物理ディスクの生産を2028年1月より終了すると発表した。以降に発売される新作は、PlayStation Storeおよび小売店においてデジタル形式のみで提供される。この移行は2028年1月以前にディスク形式で発売済み、または発売予定のタイトルには影響しないとしている。発表は同社Content Communicationsシニアディレクターのシド・シューマン氏の署名で公開された。同ブログ記事の末尾では、同日発表されたPS3およびPS Vita向けPlayStation Store終了に関する別記事へのリンクも案内されている。

From: 文献リンクPhysical disc production ending in January 2028 for new games releasing on PlayStation consoles

【編集部解説】

「自然な流れ」という言葉をどう読むか

ソニーは今回の決定を「消費者の嗜好の変化に適応する自然な流れ」だと説明しています。この説明自体は発表文に書かれている通りの事実ですが、それが今回の決定の全体像を説明し尽くしているかどうかは、また別の話です。

ゲーム業界アナリストのDaniel Ahmad氏(Niko Partners)は、デジタル比率の上昇という事実を踏まえてもなお、今回の決定は「完全にプラットフォーム主導であり、コスト削減、中古・二次流通市場の排除、PlayStation Storeへの収益の一本化を狙ったものだ」という見方を示しています。Game Fileが取材したアナリストや業界関係者の試算によれば、ディスクの製造・輸送コストは、ゲームの小売価格のうち1ドル程度を占めるとされています。数百万本単位で販売されるタイトルにとっては無視できない金額になります。

「消費者がデジタルを選んでいる」という説明と、「プラットフォーム側がディスクをなくすことで利益率を上げようとしている」という説明は、どちらも今回の決定を矛盾なく説明できてしまいます。両方が同時に成り立っている可能性もありますが、ソニーの発表文はこの二つ目の視点には触れていません。ここは事実として確認できることと、解釈として提示されていることを分けて読む必要がある部分です。

ディスクを広めた張本人が、ディスクを終わらせる

もう一つ、見落とされがちな文脈があります。PlayStationというブランド自体が、かつてディスクという規格を市場に定着させる側の当事者だったという経緯です。

ソニーは自らBlu-ray規格の開発・普及を主導した企業であり、2006年発売のPS3にBlu-rayドライブを標準搭載することで、競合の東芝陣営(Microsoftも支援)が推していたHD DVDとの規格戦争を制する「トロイの木馬」戦略を取ったことが、今回の発表を報じた海外メディア自身によっても指摘されています。当時Disney Studios幹部も、PS3の位置づけを同じ言葉で表現していました。PS向けゲームソフトは累計で15億〜20億枚がBlu-ray形式で出荷されたと報じられています。ゲーム機を規格戦争の武器として使い、Blu-rayを映像メディアの勝者に押し上げた張本人がソニーでした。その同じ会社が今、自ら普及させたディスクという形式に幕を引こうとしています。

これを「時代の必然」として読むこともできますが、規格戦争の勝者がその規格自体を不要にする決定を下すという構造は、技術が一直線に進歩してきた結果というより、企業がその時々の利害に応じて物理メディアを「使う」「使わない」を選び続けてきた歴史の延長線上にあるとも読めます。

日本の中古市場にとっての意味

この変化が最も直接的に響く場所の一つが、中古ゲーム市場です。日本国内の調査では、中古ゲームソフト販売店を現在利用している層は9人に1人程度(11.5%)にとどまり、過半数(51.9%)は利用経験自体がないという結果が出ています。中古ゲーム市場自体が、すでにニッチな存在になりつつあるとも言えます。

それでも、中古販売店や、友人同士でのゲームの貸し借りといった文化は、日本のゲームとの関わり方の一部であり続けてきました。ディスクという物理的な媒体がなくなれば、この選択肢自体が新作タイトルから制度的に消えていきます。利用者が数字の上で少数派であることと、その選択肢が閉じられても問題にならないことは、同じではありません。

「所有」から「ライセンス」へ

ソニーの発表文が直接触れていない論点がもう一つあります。デジタル購入で私たちが手にしているのは、ゲームそのものではなく「個人利用のためのライセンス」だという位置づけです。今回の発表と同じ日に、ソニーはPS3とPS Vita向けPlayStation Storeの終了も発表しています。ディスクさえ手元にあれば動作環境が失われない限り遊び続けられたタイトルに対し、デジタル所有の場合はプラットフォーム側の判断でアクセスの前提そのものが変わりうる、という違いがここにあります。

ソニーは過去世代のゲーム体験を将来のプラットフォームでも提供し続けることに「コミットしている」ともコメントしていますが、それが具体的にどのような形で保証されるのかは、今回の発表からは見えてきません。

すでに始まっている未来

この流れを象徴する動きとして、Rockstar Gamesの『Grand Theft Auto VI』がPlayStation向けにディスク版を提供せず、パッケージにはダウンロードコードのみを封入する形で発売されることが、今回のソニー発表に先立って明らかになっています。2028年1月という期限は「新作すべて」に対する制度上の区切りであり、業界の実態としてのディスクレス化は、すでに個別のタイトルで先行して進んでいます。

次世代機とされるPS6がディスクドライブを搭載するかどうかも、今回の発表を受けて改めて注目されています。ハードウェアの設計そのものが、この決定の延長線上でどう変わっていくのか。今後の展開を見届けるしかありません。

【関連記事】

PS6に着脱式ディスクドライブ搭載か、PS5成功モデルを継続でフィジカルメディア機維持
2025年時点でのリークでは、PS6は着脱式ディスクドライブを搭載しフィジカルメディア対応を維持するとも報じられていました。今回の発表は、そのドライブの意味を「新作を再生する手段」から「旧作を再生する手段」へと変えるものかもしれません。

【編集部後記】

私は、幼い頃からディスクやカートリッジを差し替えながらゲームを遊んできました。学生時代は友人とソフトを貸し借りしては感想を言い合ったりもしました。ですが、今ではSteamなどの普及もあり、「買う」より「ダウンロードする」感覚のほうが自然になっています。時代が移ればその土台も変わっていくものですが、あの頃の記憶を振り返ると、少しだけ寂しさも覚えます。ディスクを貸し借りするというその行為自体が、これから先は選べない選択肢になっていくのかもしれません。


【用語解説】

Blu-ray
ソニーが中心となって開発した大容量光ディスク規格。競合のHD DVDとの規格戦争を制し、PS3以降のPlayStationのゲームディスク規格として採用。

HD DVD
東芝陣営が推進した光ディスク規格。Blu-rayとの規格戦争に敗れ、2008年に撤退。

デジタルライセンス(Digital License)
PlayStation StoreなどでゲームをDL購入した際に得られる、個人利用に限定した使用許諾。ゲームそのものの所有権ではなく、サービス終了時にアクセス権が失われうる点が物理ディスクの所有との違いとして指摘される。

【参考リンク】

PlayStation.Blog(外部)
今回のディスク生産終了発表を含む、PlayStationに関する公式アナウンスを掲載するソニー公式ブログ。

PlayStation Store(外部)
PlayStationゲームのデジタル購入窓口。2028年1月以降、新作タイトルの主要な入手先。

Grand Theft Auto VI 公式サイト(Rockstar Games)(外部)
ディスク版を提供せずデジタル専売とすることが明らかになっている、Rockstar Games『グランド・セフト・オートVI』の公式サイト。

Video Game History Foundation(外部)
ゲームの歴史的資料・ソースコードの保存活動を行う非営利団体。デジタル移行に伴うゲーム保存問題に関心がある読者への入口として。

中古ゲームソフト販売の利用実態調査(J-Net21)(外部)
本記事で参照した、日本国内の中古ゲームソフト販売店の利用状況に関する調査データ。

【参考記事】

PlayStation announces the end of disc games, starting in January 2028(外部)
ソニー公式コメントに加え、アナリストDaniel Ahmad氏(Niko Partners)による「プラットフォーム主導の決定」という反論、ソニー広報のデジタルライセンスに関するコメントを紹介(VGC / 2026年7月1日)。

Sony drops PlayStation discs: 2028, PS3/Vita stores closing(外部)
ディスク製造・輸送コストの試算(1本あたり約1ドル)や、PS6のディスクドライブ有無に関する業界の見方など、最も深掘りされた分析記事(Game File / 2026年7月1日)。

Sony Stopping Blu-ray Disc Production for PlayStation Video Games(外部)
PS3が「トロイの木馬」戦略でBlu-ray規格戦争を制した経緯と、PS向けBlu-rayゲームの累計出荷枚数(15億〜20億枚)を報じる(Media Play News / 2026年7月1日)。

ソニー、PlayStationディスク生産を2028年終了へ|デジタル所有という問いDisney: Sony PS3 Strategy was Blu-ray’s ‘Trojan Horse’(外部)
規格戦争終結直後にDisney幹部が語った、PS3の役割に関する同時代の業界証言(TV Technology / 2008年2月27日)。

Sony PlayStation Phasing Out Physical Video Game Discs(外部)
Rockstar Games『GTA VI』のデジタル専売化など、物理メディア縮小をめぐる業界全体の文脈を報じる(Deadline / 2026年7月1日)。

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まお
おしゃべり好きなライターです。趣味は知識をためることとゲームをすること(ソシャゲや音楽ゲームが大好きです)。最近はAIの情勢や地政学の問題を勉強中。時折記者として会見や発表に赴いたり、インタビューを行ったりもしています。