2025年のスマートリング市場に、新たなプレイヤーが参入する。フランスのCircular社と韓国のVIV Healthは、CES 2025で従来の健康管理の枠を超えた革新的なスマートリングを披露した。FDA承認済みの心房細動検出から生成AIによる個別化された睡眠支援まで、両社の新製品は既存市場に新たなナラティブを提示する。Ouraが80%のシェアを握る30億ドル規模の市場で、この2社は単なる「健康トラッカー」を超えた次世代のウェアラブルデバイスの姿を示した。
人体から得られるバイオデータと人工知能の融合は、もはや SF の世界の話ではない。指輪という最小限のフォームファクターに、医療グレードのセンサーとAIを統合することで、両社は「個別化された健康管理の未来」という野心的なビジョンを体現している。これは、ウェアラブルテクノロジーの新しい章の始まりかもしれない。
2025年1月のCESにて、2社が新しいスマートリングを発表した。
フランスのCircular社が発表した「Ring 2」の主な特徴:
– FDA承認済みの心房細動検出アルゴリズムを搭載したECG機能
– チタン製で4色展開(ゴールド、シルバー、ブラック、ローズゴールド)
– スマートフォンを使用したデジタルリングサイジング機能
– 通常モードで4日、省電力モードで8日のバッテリー寿命
– 睡眠ステージ分析機能
– 2025年2月〜3月発売予定
韓国のVIV Health社が発表した「VIV Ring」の主な特徴:
– 生成型睡眠支援サウンド技術搭載
– 深海音、雨音、波音、鳥のさえずりなどの自然音を活用
– AIによる個別化された睡眠改善オーディオ生成
– Apple Health連携対応
– Android連携は2025年2月予定
– 2025年2月発売予定
from Two new smart rings unveiled at CES
【編集部解説】
スマートリング市場は2025年、大きな転換期を迎えようとしています。市場規模は2024年の3億4,856万ドルから2025年には4億1,754万ドルへと急成長が予測されており、2030年までの年平均成長率は21.1%と見込まれています。
市場構造の変化
これまでスマートリング市場はOura(市場シェア80%)やUltrahuman(同12%)などの専業メーカーが主導してきました。しかし、SamsungのGalaxy Ringの参入に続き、今回のCircularとVIV Healthの新製品発表により、市場は新たな競争フェーズに突入しています。
技術革新がもたらす新たな可能性
Circular Ring 2が導入したスマートフォンカメラによるデジタルサイジングは、単なる利便性向上以上の意味を持ちます。従来のプラスチック製サイジングキットの廃止は、環境負荷低減という社会的課題への対応も実現しています。
また、FDA承認済みの心房細動検出アルゴリズムを搭載したECG機能は、スマートリングの医療機器としての可能性を示唆しています。これは、ウェアラブルデバイスが「健康管理」から「疾病予防・早期発見」へとその役割を拡大させる重要な一歩と言えます。
AIと生体データの融合
VIV Ringが採用した生成型睡眠支援サウンド技術は、AIの新しい活用方法を提示しています。従来の睡眠トラッキングは「測定と分析」が中心でしたが、VIV Ringは生体データとAIを組み合わせて積極的な睡眠改善介入を行います。これは、ウェアラブルデバイスが「パッシブなモニタリング」から「アクティブな健康支援」へと進化する可能性を示しています。
グローバル市場のダイナミクス
アジア太平洋地域が市場シェア27.03%を占め、最大の市場となっています。特に注目すべきは、韓国発のVIV Healthが大学病院と連携して医療機器認証を目指している点です。これは、アジアのテクノロジー企業が単なる製品開発だけでなく、規制対応も含めた包括的な市場戦略を展開していることを示しています。
将来展望
特に注目すべきは、決済機能を備えたスマートリングセグメントが2024年から2030年にかけて年率21.8%で成長すると予測されている点です。これは、スマートリングが健康管理デバイスから、より包括的なライフスタイルデバイスへと進化していく可能性を示唆しています。
このように、スマートリング市場は単なるウェアラブルデバイスの一分野から、医療、決済、ライフスタイル支援を包含する総合的なプラットフォームへと進化しつつあります。今後は、AIやセンサー技術の進化により、さらなる用途拡大が期待されます。
【用語解説】
ECG(心電図):心臓の電気的活動を記録する検査です。
AFib(心房細動):不整脈の一種で、早期発見が重要な心疾患です。
バイノーラル音響:左右の耳に異なる周波数の音を提供する技術です。