innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

大麻使用で心疾患死亡リスク2倍に – フランス研究チームが大規模研究で実証

大麻使用で心疾患死亡リスク2倍に - フランス研究チームが大規模研究で実証 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-23 07:45 by admin

フランスのトゥールーズ大学病院の臨床薬理学者エミリー・ジュアンジュス氏らの研究チームが2025年6月17日、医学誌「Heart」に発表した研究によると、大麻使用者は心血管疾患による死亡リスクが2倍に増加することが判明した。

研究チームは、これまで指摘されてきた潜在的な健康リスクをより詳細に調査することを目的に、世界中の約2億人のデータを対象とした大規模研究を行った。研究では2016年から2023年に発表された24件の先行研究を調査した。結果として、大麻使用により急性冠症候群のリスクが29%、脳卒中のリスクが20%、心血管疾患死亡率が100%増加することが見えてきた。「この研究結果は、大麻の使用とMACE(心血管系有害事象)の間に正の関連性があることを示している」と、研究者らは発表論文の中で述べている。

ただし本研究は、大麻使用の定義や、自己申告への依存など、研究の構成に曖昧さが存在する。これらの結果は大麻使用の直接的な因果関係ではなく、関連性を示しているに過ぎないのである。

世界中で大麻の合法化が進むにつれ、医療目的および娯楽目的の使用が増加している。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のスタントン・グランツ教授とリン・シルバー教授は論説を執筆し、大麻をタバコと同様に扱うべきだと主張した。

From: 文献リンクCannabis Linked to 2x Risk of Heart Disease Death, Scientists Discover

【編集部解説】

今回の研究結果は、大麻の心血管系への影響を科学的に検証した大規模なメタ分析として注目に値します。フランスのトゥールーズ大学病院とパリ・サクレー大学の研究チームが、2016年から2023年に発表された24の研究を統合し、約2億人のデータを分析した規模の大きさが特徴的です。

この研究の重要性は、大麻の合法化が世界的に進む中で、従来「比較的安全」とされてきた大麻の健康リスクを定量的に示した点にあります。特に心血管疾患による死亡リスクが2倍になるという数値は、タバコの健康被害と同程度の深刻さを示唆しています。

注目すべきは、この研究が比較的若い世代への影響を明らかにした点です。従来の心血管疾患は高齢者や既往歴のある患者に多く見られましたが、大麻使用者では若年層でも心疾患リスクが高まることが判明しました。これは従来の医学常識を覆す発見といえるでしょう。

研究の限界として、自己申告に基づくデータの不正確性や、使用量・使用期間の測定が困難である点が挙げられます。また、因果関係ではなく相関関係を示すものであり、他の要因が影響している可能性も否定できません。

しかし、大麻に含まれるTHCが心拍数上昇や血圧上昇を引き起こし、血管の炎症を促進することが、心血管リスク増加の要因と考えられています。THCは身体の闘争・逃走反応を引き起こし、時間の経過とともに心臓に負担をかける可能性があります。

この研究結果は、医療大麻の処方や娯楽用大麻の規制政策に大きな影響を与える可能性があります。カリフォルニア州公衆衛生研究所のリン・シルバー氏は「大麻を安全な自然由来のウェルネス製品と考えるのは間違い」と警告しており、今後の薬物政策の方向性を示唆しています。

長期的な視点では、この研究は大麻の医療利用における適応症の見直しや、使用者への適切な健康指導の必要性を示しています。特に心血管疾患のリスクファクターを持つ患者への処方については、より慎重な検討が求められるでしょう。

【用語解説】

急性冠症候群(ACS)
心臓の冠動脈の血流が急激に減少または停止することで起こる病態の総称。心筋梗塞や不安定狭心症が含まれる。

主要心血管系有害事象(MACE)
Major Adverse Cardiovascular Eventsの略。心血管疾患による死亡、心筋梗塞、脳卒中などの重篤な心血管系イベントを指す医学用語。

メタ分析
複数の独立した研究結果を統計的手法で統合し、より信頼性の高い結論を導く研究手法。今回は24の研究を統合して分析した。

デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)
大麻の主要な精神作用成分。脳内のCB1受容体に結合して「ハイ」な状態を引き起こす。近年の大麻製品では濃度が大幅に上昇している。

エミリー・ジュアンジュス氏
フランスのトゥールーズ大学病院の臨床薬理学者。今回の大麻と心血管疾患に関する大規模研究の最終著者を務めた。

【参考リンク】

トゥールーズ大学病院(CHU de Toulouse)(外部)
フランス南部の主要な大学病院。今回の研究を主導したエミリー・ジュアンジュス氏が所属する臨床薬理学部門で知られる。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)(外部)
アメリカ西海岸の名門医科大学。スタントン・グランツ教授が在籍するタバコ制御研究センターは世界的に有名。

医学誌Heart(外部)
BMJ出版グループが発行する心血管疾患専門の国際医学誌。今回の研究が発表された権威ある学術誌。

【参考動画】

【参考記事】

Cannabis use linked to a doubled risk of heart disease death, new study finds(外部)
CBSニュースによる詳細な報道。大麻の合法化が進む中での心血管リスクについて包括的に解説している。

Marijuana use dramatically increases risk of dying from heart attacks and stroke(外部)
CNNによる大規模研究の報道。エミリー・ジュアンジュス氏の直接コメントを含む詳細な記事。

Heart health alert: Daily cannabis use may double risk of deadly cardiac events(外部)
エコノミック・タイムズによる報道。毎日の大麻使用が致命的な心疾患イベントのリスクを2倍にするという研究結果を紹介。

Cannabis use associated with increased risk of stroke and heart attacks(外部)
News-Medical.Netによる科学的解説。大麻使用と心血管疾患の関連性について医学的観点から詳しく分析。

Marijuana Linked to Increased Heart Attack, Stroke, and Cardiovascular Death in Landmark Study(外部)
VI Consortiumによる報道。大麻がコカインやオピオイドよりも心疾患の強い予測因子であることを報告。

【編集部後記】

今回の研究結果を受けて、私たちはどのようにテクノロジーと健康の関係を捉え直すべきでしょうか。大麻の合法化が進む中で、従来「自然で安全」とされてきた認識が科学的データによって覆されつつあります。これは他の新興ヘルステクノロジーや健康関連プロダクトにも共通する課題かもしれません。皆さんは、科学的エビデンスと社会的認識のギャップをどう埋めていくべきだと思われますか?また、今後注目すべき健康リスク研究があれば、ぜひSNSで教えてください。

ヘルスケアテクノロジーニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com
ホーム » ヘルスケアテクノロジー » ヘルスケアテクノロジーニュース » 大麻使用で心疾患死亡リスク2倍に – フランス研究チームが大規模研究で実証