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浙江大学、耳垢でパーキンソン病を94.4%の精度で診断するAI技術を開発

浙江大学、耳垢でパーキンソン病を94.4%の精度で診断するAI技術を開発 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-29 17:40 by admin

浙江大学の研究チームが、耳垢中の揮発性有機化合物(VOCs)を分析してパーキンソン病を診断する手法を開発した。

研究はAnalytical Chemistry誌に発表された。研究では209名の参加者から外耳道の検体を採取し、そのうち108名がパーキンソン病患者だった。

分析により、パーキンソン病患者の耳垢からエチルベンゼン、4-エチルトルエン、ペンタナール、2-ペンタデシル-1,3-ジオキソランの4つのVOCsが健常者と有意に異なることを特定した。

研究チームは人工知能嗅覚システム(AIO)をこのVOCデータで訓練し、94.4%の精度でパーキンソン病患者を識別することに成功した。南京航空航天大学の生化学者ハオ・ドンは、今後は疾患の異なる段階、複数の研究センター、複数の民族グループでの研究が必要だと述べた。

現在のパーキンソン病診断は臨床評価と脳スキャンの組み合わせで行われるが、この新手法は簡単な耳綿棒検査による早期診断を可能にする。

From: 文献リンクYour Ear Wax Might Hold Clues to Early Parkinson’s, Study Finds

【編集部解説】

この研究は、医療診断の分野において極めて画期的な発見といえます。従来のパーキンソン病診断は、症状が明確に現れてから行われることが多く、早期発見が困難でした。

今回の浙江大学の研究チームが開発した手法の最大の意義は、非侵襲的で簡便な診断を可能にする点にあります。現在の診断には専門医による複雑な評価や脳画像検査が必要ですが、耳垢検査なら簡単に実施できる可能性があります。

技術的な革新性について詳しく見ると、この研究はパーキンソン病が体臭を微妙に変化させるという以前の発見に基づいています。皮膚表面の皮脂は環境要因で変化しやすいため、より保護された耳道内の分泌物に着目したのが巧妙な発想でした。

研究で特定された4つの化合物は、脳内の炎症、細胞ストレス、神経変性によって変化する可能性があると研究者は考えています。これらの化合物が化学的指紋として機能し、疾患の早期発見につながる可能性があります。

AI診断システムの94.4%という精度は、現段階では非常に有望な数値です。ただし、これは209名という比較的小規模な研究での結果であり、実用化には大規模な検証が必要になります。

将来的な影響を考えると、この技術は医療アクセスの改善にも寄与する可能性があります。専門医が不足している地域でも、簡単な検査があれば一次スクリーニングが可能になるからです。

一方で課題も存在します。より大きな集団での長期間の検証が必要であり、民族差や個人差による診断精度への影響も検討する必要があります。

この技術が実用化されれば、パーキンソン病の早期診断だけでなく、他の神経疾患への応用も期待されます。研究者が指摘するように、疾患の化学的指紋を特定することで、病気の理解と治療法開発にも貢献する可能性があります。

【用語解説】

揮発性有機化合物(VOCs)
蒸発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称。今回の研究では、パーキンソン病患者の耳垢から特定の4つのVOCs(エチルベンゼン、4-エチルトルエン、ペンタナール、2-ペンタデシル-1,3-ジオキソラン)が健常者と異なることが判明した。

皮脂(sebum)
毛穴の中の皮脂腺から分泌される油脂状の物質。髪と肌を自然に保湿する機能を持つ。パーキンソン病では皮脂の成分が変化し体臭に影響することが知られているが、皮膚表面の皮脂は環境要因で変化しやすいため、より保護された耳垢が研究対象となった。

人工知能嗅覚システム(AIO)
AIアルゴリズムを用いてにおいの成分を分析し、パターンを識別するシステム。今回の研究では94.4%の精度でパーキンソン病患者を識別することに成功した。

【参考リンク】

浙江大学(外部)
中国浙江省杭州市にある国立総合大学。今回のパーキンソン病診断研究を主導した。

南京航空航天大学(外部)
1952年創立の中国の国立大学。生化学者ハオ・ドンが所属している。

【参考動画】

【参考記事】

Earwax smell test using AI might help diagnose Parkinson’s(外部)
パーキンソン病専門メディアによる同研究の報道。AI嗅覚システムの94.4%の診断精度や将来的な臨床応用の可能性について詳しく解説している。

AI Detects Parkinson’s Disease With 94% Accuracy By Analyzing Earwax(外部)
研究の背景となったスコットランドの女性ジョイ・ミルンの事例から始まり、今回の技術的ブレークスルーまでの経緯を詳しく説明している。

臨床検査の話題3題(外部)
日本の医学研究者による同研究の専門的解説。ROC曲線で98%の診断率を示したことや、今後の病態理解への応用可能性について言及している。

【編集部後記】

この研究を知って、皆さんはどう感じられましたか?耳垢という身近なものから重篤な病気の兆候を読み取れる可能性に、私たちは驚きを隠せません。

もしかすると、将来的には年に一度の健康診断で簡単な耳垢検査を受けるだけで、様々な病気の早期発見ができるようになるかもしれませんね。

皆さんの周りで、においの変化から体調の異変に気づいた経験はありませんか?そんな日常の気づきが、実は医学的に重要な意味を持つのかもしれません。この技術が実用化されたら、皆さんは利用してみたいと思われますか?

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TaTsu
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