JANOG58開催|技術の成熟と次代への継承、インターネット技術の未来へ

2026年7月15日(水)~2026年7月17日(金)、JANOG58が愛媛県松山市の県民文化会館で開かれる。JANOGは日本最大のネットワーク技術者の会議で、今回で58回目。年に2回開かれ、今までには大阪や松江、福岡など全国各地で開催されている。

今回のテーマは『技術の成熟と次代への継承』。ただ構築するのではなく、サステナブルな持続するネットワークインフラへ、どうするのか考える。

公式サイトおよび参加登録はこちら: JANOG58


インターネットはインフラ――しかし変化が激しい

インターネットが目新しい技術である時代が終わって久しくなりました。インターネットは、日本のあらゆるもの、世界のあらゆるものが依存する、世界最大のインフラのひとつになっています。しかし、変化に乏しいインフラではありません。インターネット技術は、時代の要請や波によって変化を余儀なくされてきました。

直近で言うと、AIからAIの通信が話題になっています。また、AIを実行するデータセンタにおけるGPU高速通信の必要性は、データセンタインフラの仕組みに再考を余儀なくさせています。

IPv6 Day のころを覚えている方はいらっしゃいますでしょうか。IPv6が世界中で一斉に普及が進んだ時期です。いまや、IPv6が使えることはオプションではなく当たり前の前提になりました。また、DNSSEC、HTTPS/QUICなど安全な通信のための技術も普及してきました。またそのHTTPS/QUICが、さらにDNS over HTTPS (DoH) などのさらに新しい安全な技術を支えています。DoHやそれに相当する技術は最近の多くのスマホで多くの場合有効になっています。

一方で、インターネットは一般人が見える面だけではありません。BGPというインターネット規模で動作するプロトコルによって、AS(自律システム)という(おおよそ通信事業者ごとの)単位で行き先の情報を交換しあうことで、インターネットは成り立っています。

これを支えているのが人間どうしの接続です。インターネットエクスチェンジ(IX)のユーザ会であったり、ピアリング会において、プロバイダやその他通信事業者の人間同士が話し合いをすることで、インターネットがどう接続されるかが決まっているのです。このJANOG会議が重要であるのも、人間同士が対面で会って話す場だからです。

一方で、初期のインターネットは善意と細心の注意を全員が持つことに依存している面が多くありました。IPアドレスへの経路の情報が意図せず誤って流出することでインターネットの多くの部分が全世界的に止まってしまうような事故は、過去何回も起きてきました。人間のミスや悪意によるインターネット事故を防ぐための技術は、インターネットに世界が依存する現代においては必須になったのです。

このため、RPKI/ROV(電子署名で経路情報の正しさを証明する)、IRR(最新の正しいIPアドレス情報を共有する)などの技術が開発され、導入されてきました。今後普及が予定されている新しい技術も数多くあります。

社会基盤としてのインターネットをどう次代に継承するか

変化が激しく、かつインフラとして社会基盤級の信頼性が求められる――これは他のIT分野とは一線を画しているインターネット・ネットワーク技術の特徴です

変化が激しいということは、過去の技術が遺物――レガシーになりやすいということでもあります。この負債とインフラ技術者は常に戦ってきました。

そんなことから、今回のテーマは「継承」を中心に据えています。いくつかおすすめの発表を紹介します。

  • RPKIキャッシュサーバの課題と提案 -RPKIの信頼性を高めるために- – 山口 勝司(BIGLOBE)、後藤 汰珠(長崎県立大学)
    Day2 2026年7月16日(木) 11:15~12:15
    https://www.janog.gr.jp/meeting/janog58/pr-rpki-cache-server/
    RPKIが導入されつつある現在、導入後のリスクについて。
  • 日本のBGP運用 – 松崎 吉伸(IIJ)
    Day3 2026年7月17日(金) 10:15~11:15 (1時間)
    https://www.janog.gr.jp/meeting/janog58/pr-japan-bgp-ops/
    技術的には安定していても、運用文化が更新されなければリスクになる。人間レイヤーの重要性について。
  • コミュニティ紹介LT -JANOGから広げる繋がり- – 森石 浩徳(STNet)、大谷 亘(JPNIC)、ももいやすなり(IIJ)、内山 貴允(NTTドコモビジネス)
    Day3 2026年7月17日(金) 13:45~14:30 (45分)
    https://www.janog.gr.jp/meeting/janog58/pd-community-lt/
    JANOGerの皆さんが普段所属しているコミュニティを紹介・共有する時間が設けられる予定です。
  • アドレスポリシーの成熟と継承~ポリシーの意義・将来を考えよう~ – 花井 直樹(JPNIC)、中川 香基(JPNIC)
    Day3 2026年7月17日(金) 11:30~12:15 (45分)
    https://www.janog.gr.jp/meeting/janog58/pr-address-policy/

【用語解説】

NOG(Network Operators Group)
NOGとは、ネットワーク運用者のコミュニティを指す言葉です。通信事業者、データセンター、クラウド事業者、大学、企業ネットワークなど、インターネットの運用に関わる人々が集まり、技術的な知見や運用上の課題、障害対応の経験などを共有します。JANOGは日本を代表するNOGのひとつであり、単なる技術発表の場ではなく、実際の運用現場から得られた知識を共有し、議論するための重要なコミュニティです。

IPv6
IPv6は、現在のインターネットで広く使われているIPアドレス体系のひとつです。従来のIPv4では利用できるアドレス数に限りがありましたが、IPv6では非常に大きなアドレス空間を利用できます。そのため、スマートフォン、IoT機器、クラウド環境、データセンターなど、多数の機器が接続される現代のインターネットを支える基盤技術として重要性が高まっています。ただし、IPv6は単にアドレス数を増やすだけの技術ではなく、ネットワーク設計やセキュリティ、運用手法にも影響を与えるものです。

RPKI(Resource Public Key Infrastructure)
RPKIは、インターネット上の経路情報が正当なものかを確認するための仕組みです。インターネットでは、どの組織がどのIPアドレスを使い、どのASから経路を広告してよいのかを正しく判断する必要があります。RPKIでは、IPアドレスやAS番号などの番号資源と、それを広告する権限を暗号技術によって確認できるようにします。これにより、誤った経路広告や経路ハイジャックのリスクを下げることが期待されています。一方で、RPKIを導入した後は、ROAの設定ミスやRPKIキャッシュサーバーの障害など、運用面での信頼性も重要になります。

BGP(Border Gateway Protocol)
BGPは、インターネット上で経路情報を交換するための主要なプロトコルです。インターネットは単一の巨大なネットワークではなく、AS(Autonomous System)と呼ばれる多数のネットワークが相互に接続されることで成り立っています。BGPは、それらのAS同士が「このIPアドレス宛の通信はどの経路を通ればよいか」を伝え合うために使われます。BGPの設定や運用に問題があると、通信の遠回り、到達不能、経路漏えい、経路ハイジャックなどにつながる可能性があります。そのため、BGPはインターネットの安定性を支える中核的な技術のひとつです。

番号資源
番号資源とは、インターネットを動かすために必要な識別番号の総称です。代表的なものに、IPアドレスやAS番号があります。IPアドレスは通信先を識別するために使われ、AS番号はネットワークの管理単位を識別するために使われます。これらは無制限に自由に使えるものではなく、地域インターネットレジストリや各国・地域の管理組織によって割り振りや管理のルールが定められています。番号資源のポリシーは、通信事業者やクラウド事業者だけでなく、新しいサービスの設計、ネットワークの拡張、事業継続にも関わる重要なテーマです。

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【編集部後記】

私(森 祐佳)自身、インターネットの非営利プロバイダ(AS63806 Menhera®)を運用する身として、JANOG58には参加登録しており、懇親会も出席予定です。JANOGに参加される方はそこでお会いしましょう!松山には、道後温泉があります。松山のホテルは満杯ですが、松山に宿泊しない方も入浴できる施設があります。みなさん温泉に入りましょう!!

発表『コミュニティ紹介LT -JANOGから広げる繋がり-』には、私の運用する一般社団法人生活情報基盤研究機構(Menhera®)の紹介スライドも提出いたしました。

そうでない方も、この記事を機会に、〈インターネットというインフラ〉について興味を持っていただけたら嬉しいです。

JANOG58の新着情報はこちらからご覧いただけます。
https://www.janog.gr.jp/meeting/janog58/category/newsletter/


※この記事はJANOG58実行委員会とは無関係に私が独立して書いたものです。またJANOGは懇親会以外参加費は無料で、営利イベントではございません。JANOGの運営はスポンサー・ホストによる協賛で賄われています。以下に主要な協賛社を挙げます。

ホスト
アリスタネットワークスジャパン合同会社
(Arista Networks Japan Limited.)

金亀スポンサー
GMOインターネット株式会社
株式会社インターネットイニシアティブ
NTTドコモビジネス株式会社
岡谷エレクトロニクス株式会社
東京エレクトロン デバイス株式会社
日本AMD株式会社
株式会社日本レジストリサービス
LARUS Limited

※ダイアモンドスポンサー以下は以下のページをご覧ください。

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森 祐佳 Solutions Engineer
一般社団法人生活情報基盤研究機構代表理事(AS63806 Menhera®・IPアドレス管理指定事業者/LIR、ITインフラやプロトコルの開発・運用から個人の自由、プライバシー・情報科学・人文学・医学などにアプローチ)。とある会社でソリューションエンジニアの仕事をしています。 テクノロジーと人間の精神の関係を、哲学と実装の両面から探求してきました。 ITエンジニアとしてシステム開発やAI技術に携わる一方で、心の哲学や宇宙論の哲学、倫理学を背景に、テクノロジーが社会や人の意識に与える影響を考察しています。 AIや情報技術がもたらす新しい価値観や課題を、自ら学生時代に東京大学医学図書館に籠って学習した、精神医学や公衆衛生の視点も交えながら分析し、「技術が人の幸福や生き方をどう変えるのか」という問いに向き合うことを大切にしています。 このメディアでは、AIやテックの最前線を紹介するだけでなく、その背後にある哲学的・社会的な意味を掘り下げ、みなさんと一緒に「技術と人間の未来」を模索していきたいと思います。