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Slate Auto、ジェフ・ベゾス支援の新興EV企業 – 2.5万ドル電動ピックアップトラックで米市場に挑戦

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-22 16:30 by admin

ジェフ・ベゾスが支援するミシガン州拠点のEVスタートアップ「Slate Auto」は、2022年に設立され、現在までステルスモードで事業を進めている。同社はフォード、ゼネラルモーターズ、ステランティス、ハーレーダビッドソンなど大手自動車メーカー出身の人材を多数採用し、従業員数は数百人規模に達している。

Slate Autoは、2人乗りで約2万5,000ドル(約375万円)の手頃な価格帯の電動ピックアップトラックを開発し、2026年末までにインディアナ州インディアナポリス近郊の工場で生産開始を目指している。

2023年にはシリーズAラウンドで少なくとも1億1,100万ドル(約167億円)を調達し、ベゾスのファミリーオフィス責任者であるメリンダ・ルイソンが取締役に名を連ねている。さらに、2024年末にはシリーズBラウンドも完了し、ロサンゼルス・ドジャースのオーナーであるマーク・ウォルターや投資家トーマス・タルも新たに取締役として加わった。

Slate Autoは低価格車両の薄利を補うため、アクセサリーやアパレルなど高収益な周辺ビジネスの展開も計画している。経営陣にはハーレーダビッドソンやステランティス出身者、Amazon出身者が多く在籍し、CEOはクライスラー出身のクリスティーン・バーマンが務めている。

from:Inside the EV startup secretly backed by Jeff Bezos

【編集部解説】

Slate Autoのニュースは、EV業界の現状や今後の展望を考える上で非常に示唆に富んでいます。まず、Slate Autoは2022年創業のミシガン州拠点スタートアップであり、Amazon創業者ジェフ・ベゾスのファミリーオフィスが主要な資金源となっています。2023年には1億1,100万ドル以上の資金調達を実現し、2026年末の生産開始を目指しています。

現在、EV業界は成長鈍化や競争激化、そして複数の新興企業の破綻という厳しい局面に直面しています。RivianやLucidのような生き残り組ですら、巨額の資本を消費しながら事業を維持しているのが現状です。

このような環境下で、Slate Autoは「2万5,000ドル」という低価格帯の電動ピックアップトラックという明確なターゲットを掲げています。これは、テスラやリヴィアンなどがまず高級車でブランドを確立し、その後大衆車へと拡大する戦略とは対照的です。Slateは「最初の一台」として手が届く価格を実現し、ユーザーのカスタマイズやアップグレードによる体験価値の拡張を重視しています。

また、Slate Autoは車両本体の薄利を補うため、アクセサリーやアパレル、カスタマイズパーツといった高収益の周辺ビジネスを重視しています。これはハーレーダビッドソンやステランティス(ジープやモパー部門)などのビジネスモデルを参考にしており、ブランド体験や所有満足度の向上を狙ったものです。さらに、「WE BUILT IT. YOU MAKE IT.」という商標を出願し、ユーザー自身が車両をカスタマイズできる仕組みや、オープンソース型の教育プログラム「Slate University」の構想も進めています。

Slate Autoの経営陣には、クライスラー出身のクリスティーン・バーマンCEOをはじめ、ハーレーダビッドソンやステランティス、Amazon出身者が多数在籍しており、伝統的な自動車産業とテック業界の融合が見て取れます。創業者がCEOを務めない点も、典型的なスタートアップとは異なるアプローチです。

一方で、Slate Autoはバッテリーやモーターなど主要コンポーネントを外部調達する方針を示しており、垂直統合型のテスラとは異なるビジネスモデルを採用しています。これにより初期投資を抑えつつ、スピーディーな市場投入を目指していると考えられます。

このプロジェクトが成功すれば、EV市場における「手の届く価格帯」の新たな選択肢となり、既存の自動車メーカーや新興EV企業に大きな影響を与える可能性があります。ただし、低価格での量産、サプライチェーンの最適化、周辺ビジネスの収益化など、課題も多く残されています。規制環境の変化やEV需要の先行き不透明感もリスク要因です。

総じて、Slate Autoは既存のEVスタートアップとは異なる戦略と人材構成で、業界の常識を覆す挑戦を行っています。今後の動向は、EV市場の新たなトレンドを占う上で注目すべき事例となるでしょう。

【用語解説】

Re:Build Manufacturing
Slate Autoの母体となった米国の製造業インキュベーター企業。元Amazon幹部やMIT出身者が設立し、Slate Autoの初期プロジェクト「Re:Car」を立ち上げた。

ステルスモード
スタートアップが事業内容や詳細を外部に公表せず、水面下で開発や準備を進める状態。

シリーズA/Bラウンド
スタートアップが成長段階で実施する資金調達の区分。Aは初期成長フェーズ、Bは拡大フェーズでの調達を指す。

【参考リンク】

Slate Auto公式サイト(外部)
ミシガン州トロイに本社を置く電気自動車(EV)スタートアップ。2022年創業で、低価格帯の電動ピックアップトラックを開発している。Amazon創業者ジェフ・ベゾスのファミリーオフィスから資金提供を受けている。

Bezos Expeditions(外部)
ジェフ・ベゾスの個人資産を管理するファミリーオフィス。2005年設立で、AI、ロボティクス、モビリティなど幅広い分野に投資している。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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