Last Updated on 2025-01-02 11:31 by admin
カリフォルニア工科大学(Caltech)の生物科学教授Markus Meisterと大学院生Jieyu Zhengの研究チームが、人間の思考速度が毎秒約10ビットであることを突き止めました。この研究は2024年12月17日、科学誌「Neuron」に掲載されました。
研究の主な発見
人間の意識的な思考速度は毎秒10ビット、一方で感覚器官の情報処理速度は毎秒約1ギガビット(10億ビット)に達することが判明しました。
研究チームは、様々な人間活動の情報処理速度も測定しました:
– 2進数の記憶:毎秒4.9ビット
– 言語での発話:毎秒39ビット
– 英語の聴解:毎秒13ビット
– 物体認識:毎秒30-50ビット
– ゲームプレイ:毎秒10ビット
– タイピング:毎秒10ビット
from:Boffins ponder paltry brain data rate of 10 bits per second
【編集部解説】
研究の背景と意義
人間の脳の情報処理速度について、これまで具体的な数値での理解が進んでいませんでした。今回カリフォルニア工科大学の研究チームが、情報理論を応用して人間の思考速度を定量的に測定することに成功しました。
この研究で最も興味深いのは、私たちの意識的な思考速度(毎秒10ビット)と、感覚器官による情報収集速度(毎秒10億ビット)の間に存在する驚くべき差です。これは、私たちの脳が膨大な情報をフィルタリングしていることを示しています。
脳インターフェース技術への影響
この発見は、Neuralinkなどが開発を進めている脳-コンピュータインターフェース(BCI)の将来に大きな示唆を与えています。高帯域幅のインターフェースを目指す現在の開発方針は、人間の認知能力の本質的な制限を考慮していない可能性があります。
進化論的な視点
研究者たちは、この「遅い」思考速度には進化的な意味があると指摘しています。私たちの祖先は、生存に必要な程度の情報処理速度を獲得し、それが現代まで受け継がれてきたと考えられます。
医療応用への示唆
特に注目すべきは、この研究が医療分野に与える影響です。視覚障害者向けのBCIデバイスの開発において、高帯域幅の直接的な視覚情報の伝達よりも、音声による環境説明のような低帯域幅のアプローチの方が効果的である可能性が示唆されています。
今後の研究展開
研究チームは現在、自動車運転シミュレーションなどの複雑なタスクにおける脳活動の研究を進めています。この研究は、人工知能やヒューマンインターフェースの設計に新しい視点をもたらす可能性があります。
まとめ
この研究結果は、人間とコンピュータの関係性について再考を促しています。コンピュータの処理速度が人間の思考速度を大きく上回る中で、両者の効果的な共生のあり方を模索する必要性が浮き彫りになっています。