人間の指先を超えるAIロボットハンドの実現│Meta×GelSight:Digit 360×Wonik:Allegro Handの提携で「研究から商用へ」

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2024-11-01 16:47 by admin

Metaは2024年10月31日、触覚センサー企業のGelSightとロボティクス企業Wonik Roboticsと提携し、次世代の触覚センシング技術の商用化を進めることを発表した。

GelSightとの提携では、「Digit 360」という新しい触覚センサーを開発する。これはMetaの既存のDigitセンサーの後継機で、以下の特徴を持つ:

-オンデバイスAIチップを搭載

-約18の「センシング機能」を実装-

  • 物体の形状検知
  • 接触面の圧力分布検知
  • 表面テクスチャーの認識
  • マルチモーダルセンシング
  • 振動検知
  • 熱感知
  • 匂いの検知

-広視野角の光学システムを採用したDigit 360の主な用途

医療分野での応用

  • 医療用触診での組織の硬さの識別
  • 精密手術における繊細な触覚フィードバック
  • 遠隔医療での触診シミュレーション

ロボットハンドの操作精度向上

  • 物体を把持する際の方向に依存しない安定した信号検出
  • 人間の手のような自然な物体操作の実現
  • 柔軟な物体から硬い物体まで、適切な把持力の調整

物体認識・分析

  • 表面テクスチャーの全方向からの詳細な分析
  • 約830万タクセル(触覚画素)による高解像度センシング
  • 物体の機械的、幾何学的、化学的特性の検知

Wonik Roboticsとの提携では、同社の「Allegro Hand」の新世代版を開発する。この新しいロボットハンドには:

  • Digit 360センサーを搭載
  • 触覚データをホストコンピューターに送信する制御ボードを実装

両製品は2025年から販売開始予定。研究者向けに早期アクセスプログラムも実施される。

from Meta is making a robot hand that can ‘feel’ touch

編集部解説

今回のMetaの発表は、ロボティクスにおける触覚センシング技術の大きな転換点となる可能性を秘めています。

これまでロボットの触覚センサーは、高価で耐久性に乏しく、研究者でさえアクセスが困難でした。しかし、GelSightとの提携により、高性能な触覚センサーが商用化され、より多くの研究者や開発者が利用できるようになります。

特筆すべきは、Digit 360の多機能性です。振動検知、熱感知、匂いの検知など、人間の感覚に近い多様なセンシング機能を備えています。オンデバイスAIチップの搭載により、人間の反射神経に似た即時的な反応が可能になります。

この技術の応用範囲は非常に広いと考えられます。例えば:

  • 医療分野での精密手術支援
  • 製造業での品質管理や組立作業
  • VR/ARでの触覚フィードバック
  • 高度な義手・義足の開発

注目すべきは、研究段階から実用化へと大きく踏み出した点です。

これまでMetaは年間100億ドル以上を触覚技術の研究開発に投資してきました。その成果が、今回発表されたGelSightとWonik Roboticsとの提携による商用化計画として実を結びました。

Digit 360の革新性は、単なる触覚センサーの域を超えています。18種類のセンシング機能を搭載し、振動、熱、匂いまで検知できる多機能性は、人間の指先の感覚に限りなく近づいています。さらに、オンデバイスAIチップの搭載により、人間の反射神経のような即時的な反応が可能になりました。

さらに注目すべきは、Metaがこの技術をメタバースの実現に向けた重要な要素として位置づけている点です。仮想空間での触覚体験は、より自然なデジタルインタラクションを可能にし、メタバースの没入感をも大きく向上させる可能性を秘めています。

触覚技術の発展は人間とロボット、そして人間とデジタル空間との関係を根本的に変える可能性を秘めています。物理世界とデジタル世界の境界があいまいになっていく中で、両者をつなぐ重要な架け橋となるでしょう。

一方で、課題も存在します。触覚データの標準化や、異なるセンサー間でのデータ互換性の確保などが必要になるでしょう。また、センサーの耐久性や量産時のコスト低減も重要な課題となります。

長期的な展望として、この技術は人間とロボットの協働をより自然なものにする可能性を秘めています。ロボットが物体を扱う際の繊細さが向上することで、人間との安全な共同作業が実現できるかもしれません。

参考情報

【用語解説】

-GelSight社
MITのスピンオフ企業として設立された触覚センサー技術のパイオニア。航空宇宙、自動車、法医学などの分野で3D触覚イメージングシステムを提供している。

-Wonik Robotics
韓国の産業用ロボットメーカー。2019年に韓国ロボット企業大賞を受賞。Allegro Handという高性能なロボットハンドを開発している。

-マルチモーダルセンシング
視覚、触覚、聴覚など、複数の感覚を組み合わせて情報を取得する技術。人間の五感のように、様々な方向から情報を集めることができる。

【関連リンク】

  1. GelSight(外部)
    MITの技術を基にした高精度な触覚センサーを開発する企業のウェブサイト。
  2. Wonik Robotics(外部)
    韓国の産業用ロボットメーカー。Allegro Handの開発元。
  3. Meta AI(外部)
    Metaの人工知能研究部門のウェブサイト。

【関連動画】

Allegro Handの公式解説動画

GelSightの公式解説デモ

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