Last Updated on 2025-01-10 20:09 by admin
NASAは、革新的な月面サンプル収集装置「Lunar PlanetVac(LPV)」を搭載したBlue Ghost 1ミッションを2025年1月15日に打ち上げる予定です。
主な仕様と機能
LPVはHoneybee Robotics社(Blue Origin社の子会社)が開発した装置で、加圧ガスで月の土を「小さな竜巻」のように巻き上げて収集します。最大1cmサイズの粒子を収集可能で、数秒で自動的にサンプル収集を完了します。収集したサンプルは自動でふるい分けられ、写真撮影されます。
ミッションスケジュール
SpaceX社のFalcon 9ロケットで打ち上げられ、打ち上げから月面到達まで約45日間を要します。地球周回軌道に25日間滞在した後、月周回軌道での試験に16日間を費やし、マーレ・クリシウムのMons Latreille付近に着陸する予定です。
from:NASA’s lunar Roomba set to suck up Moon dirt for study
【編集部解説】
この「月面掃除機」は、従来の機械的なサンプル採取方法を根本から覆す技術です。加圧ガスを利用して月の土を巻き上げ、竜巻のような渦を作って収集する仕組みは、月面探査における新しいアプローチといえます。
この技術の最大の利点は、可動部品が少なく、メンテナンスの必要性が極めて低いことです。従来の機械式アームは摩耗や故障のリスクが高く、修理が必要になる可能性がありましたが、この新しい方式ではそうした心配が大幅に軽減されます。
月面開発への影響
このミッションは、将来の月面基地建設に向けた重要な一歩となります。採取したレゴリスのサンプルは、月面での建設材料としての適性を評価する上で貴重なデータとなるでしょう。
特筆すべきは、このミッションが商業月面ペイロードサービス(CLPS)の一環として実施されることです。NASAが民間企業と協力して月面探査を進めるこの取り組みは、宇宙開発の新しいビジネスモデルを確立しつつあります。
将来展望
Blue Ghost ミッションの成功は、月の資源利用に向けた大きな一歩となる可能性があります。特に、水やヘリウムなどの資源探査における効率的なサンプル収集手法として期待されています。
さらに、この技術は火星探査にも応用できる可能性を秘めています。可動部品が少なく、メンテナンスフリーな設計は、長期の惑星探査ミッションにおいて大きなアドバンテージとなるでしょう。
技術的課題
ただし、この技術にも課題はあります。加圧ガスを使用するため、ガスの供給量には制限があり、長期ミッションでの使用には工夫が必要です。また、月の重力環境下での「竜巻」の挙動については、まだ十分なデータがありません。
産業への波及効果
この技術は地上の産業にも応用できる可能性があります。例えば、危険物質の収集や、人が立ち入れない環境でのサンプリングなど、様々な場面での活用が考えられます。
月という極限環境で実証されることで、地上での応用技術開発も加速すると予想されます。