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国際月面研究ステーション(ILRS)計画が進行中 – 中国・ロシア主導の月面基地構想、月面原子炉も検討

国際月面研究ステーション(ILRS)計画が進行中 - 中国・ロシア主導の月面基地構想、月面原子炉も検討 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-25 17:43 by admin

中国国家宇宙局(CNSA)とロシア国営宇宙企業「ロスコスモス」は2021年3月9日、「国際月面研究ステーション(ILRS)建設に関する覚書」に署名した。ILRSは月面および月軌道上に建設される長期自律運用可能な総合科学実験基地で、月の探査・利用、観測、科学実験、技術検証などの多目的研究活動を行う。

このプロジェクトは段階的に進められる予定である。2020年代に両国が進める月探査を通じて建設候補地の検討や着陸技術の実証等を行い、2030年以降に建設を進め、2035年以降の運用開始を想定している。さらに2036年から2045年にかけて人間の長期滞在を開始する計画だ。

現在(2025年4月時点)、ILRSにはロシア、中国のほか、ベラルーシ、パキスタン、アゼルバイジャン、アラブ首長国連邦(UAE)など17カ国・国際機関が参加している。中国は「555プロジェクト」として、将来的に50カ国、500の国際研究機関、5000人の研究者との協力を目指すと表明している。

最新の動向として、中国は2028年打ち上げ予定の月面探査ミッション「嫦娥8号」で月面基地のエネルギー供給に関して、大規模な太陽光発電パネルとともに、月面原子力発電所の設置を検討していることが2025年4月23日に明らかになった。

from:China and Russia sign a Memorandum of Understanding Regarding Cooperation for the Construction of the International Lunar Research Station

【編集部解説】

中国とロシアが主導する国際月面研究ステーション(ILRS)計画は、宇宙開発の新たな国際協力モデルとして注目を集めています。2021年に覚書が交わされてから4年が経過した現在、このプロジェクトは着実に進展し、具体的な計画が明らかになってきました。

ILRSの建設は段階的に進められる予定です。2020年代に両国が進める月探査を通じて建設候補地の検討や着陸技術の実証等を行い、2030年以降に建設を進め、2035年以降の運用開始を想定しています。さらに2036年から2045年にかけては人間の長期滞在を開始する計画です。

特に注目すべき最新情報として、2025年4月23日に中国の「嫦娥8号」主任技術者が発表した内容があります。2028年打ち上げ予定の嫦娥8号ミッションでは、ILRSのエネルギー供給源として、大規模な太陽光発電パネルとともに月面に原子力発電所を設置することを検討していることが明らかになりました。

また、参加国も着実に増加しています。当初は中国とロシアの二国間プロジェクトでしたが、現在では17カ国・国際機関が参加を表明しています。ベラルーシ、パキスタン、アゼルバイジャン、UAEなどが参加しており、欧州宇宙機関、タイ、サウジアラビアなどの参加も予定されています。

ILRSの最終的な姿は、月の地質学と化学、宇宙環境、天文学、生物医学や水と鉱物資源、月面での資源利用など、多岐にわたる研究・調査を行う施設となる予定です。これは単なる科学実験施設にとどまらず、将来の火星有人探査の基盤となることも視野に入れられています。

このプロジェクトの意義は科学的側面だけにとどまりません。地政学的にも重要な意味を持っています。米国主導のアルテミス計画と並行して進められるILRSは、宇宙開発における新たな国際秩序の形成につながる可能性があります。

注目すべきは、中国が「555プロジェクト」と呼ばれる国際協力の枠組みを提案していることです。これは50カ国、500の国際研究機関、5000人の研究者をILRSに招待するという壮大な構想です。この開かれた姿勢は、宇宙開発における包括的な国際協力の可能性を示しています。

一方で、月面での原子炉建設計画は技術的・安全面での課題も提起しています。地球上でさえ複雑な原子力発電所の建設と運用が、過酷な月環境でどのように実現されるのか、注視する必要があるでしょう。

また、月の資源利用に関する国際的な法的枠組みも未整備です。月面での活動が活発化する中、資源の採掘や利用に関する国際的なルール作りが急務となっています。

ILRSの進展は、宇宙技術の発展だけでなく、新たな産業創出の可能性も秘めています。月面での建設技術、エネルギー生成、資源利用などの技術は、地球上の持続可能な開発にも応用できる可能性があります。

日本を含むアジア諸国にとって、ILRSへの関わり方は今後の宇宙開発戦略における重要な検討課題となるでしょう。技術協力や科学研究を通じて、この国際プロジェクトにどのように貢献していくか、議論が必要です。

【用語解説】

中国国家航天局(CNSA)
中国の宇宙開発を担当する政府機関。1993年に設立され、中国の宇宙探査、科学研究、技術開発を統括している。日本のJAXAに相当する組織だ。

ロスコスモス
ロシア連邦の宇宙開発を担当する国営企業。2016年に設立され、旧ソ連時代からの宇宙開発技術を継承している。かつては国際宇宙ステーション(ISS)計画の主要参加国だったが、2022年のウクライナ侵攻後の経済制裁により、2024年以降ISSから離脱し独自の宇宙ステーション計画を進めている。

国際月面研究ステーション(ILRS)
中国とロシアが主導する月面基地計画。長期間にわたって自律的に運用できる科学実験施設として、月面および月軌道上に建設される予定だ。国際宇宙ステーション(ISS)の月版とも言える。

嫦娥計画
中国の月探査計画。嫦娥は中国神話に登場する月の女神の名前。これまでに嫦娥5号による月のサンプルリターンなどの成果を上げている。嫦娥8号は2028年打ち上げ予定で、ILRS計画に関連している。

長征ロケット
中国の主力ロケットシリーズ。長征9号は超重量級ロケットで、ILRS建設に使用される予定だ。

【参考リンク】

中国国家航天局(CNSA)(外部)
中国の宇宙開発を担当する政府機関の公式サイト。中国の宇宙計画や最新ミッションに関する情報を提供している。

【編集部後記】

月面基地といえば、かつてはSF映画の世界の話でしたが、今や現実のプロジェクトとして動き出しています。皆さんは月面に人類の拠点ができたら、どんな可能性が広がると思いますか?月の資源を活用した宇宙産業の発展、地球観測の新たな視点、さらには火星への足がかりなど、想像するだけでワクワクしますね。日本の宇宙開発はこの国際協力にどう関わっていくのか、これからも注目していきましょう。宇宙開発の最新情報、どんな話題に興味がありますか?

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TaTsu
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