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南極オゾンホール発見から40年|科学者たちが明かす回復の真実と気候変動との複雑な関係

南極オゾンホール発見から40年|科学者たちが明かす回復の真実と気候変動との複雑な関係 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-21 23:44 by admin

南極上空のオゾン層に「穴」(オゾンホール)が発見されてから40年が経過した。この発見は1985年5月に英国南極調査隊(British Antarctic Survey、BAS)の科学者たちによってなされた。しかし、検索結果によると日本の南極観測隊が1982年に初めてオゾンホールを観測したという記録もある。オゾン層は地球の成層圏に存在し、有害な紫外線を吸収することで地球上の生命を保護する役割を果たしている。

この発見を受けて1987年にモントリオール議定書が採択された。この国際条約は、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン(CFC)などの化学物質の生産を1986年のレベルで凍結し、段階的に廃止することを各国に約束させた。現在までに、禁止されたオゾン層破壊物質のほぼ99%が廃止されている。

オゾンホールは南半球の春(8月から10月)に最も顕著になり、9月下旬に最大規模に達する。2024年の年最大面積は2,240万㎢で南極大陸の約1.6倍に相当し、最近10年間の平均値と同程度の大きさだった。オゾン層破壊の主な原因は、冷蔵庫、エアロゾル、溶剤、消火器などに広く使用されていたCFCである。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは2025年3月、南極のオゾン層が確かに回復していることを95%の信頼度で確認した。しかし、世界気象機関(WMO)の発表によると、南極のオゾン層が1980年頃の水準に完全に回復するのは2066年頃になると予測されている。

References:
文献リンク40 Years After the Chilling Ozone Hole Discovery: Scientists Unveil Eye-Opening New Details

【編集部解説】

オゾンホール発見40周年という節目を迎え、この環境問題の歴史的意義と現状について解説します。

オゾンホールの発見については、1985年5月16日に科学誌「Nature」に掲載された英国南極調査隊(BAS)の研究が広く知られていますが、検索結果によると日本の南極観測隊が1982年に初めて観測していたという記録もあります。当時、気象庁から参加していた忠鉢繁さんが、月光による観測を初めて本格的に行い、1年を通じての観測に成功したことが「世界初」の発見につながったとされています。

興味深いのは、オゾンホール発見後、過去の人工衛星データを見直してみると、1980年代初めごろから南極上空のオゾンが減り始めていたことが判明したという点です。これは、観測データの性質を良く知り、わずかなデータの変化の兆候とその重要さを見逃さなかった人にのみ、新発見の栄誉が与えられることを示しています。

オゾンホールが形成される特殊なメカニズムも明らかになっています。南極の冬の間に形成される極域成層圏雲の表面で化学反応が起こり、CFCから塩素が活性化された形に変換されます。そして南極の春に太陽が戻ってくると、オゾンは1日あたり約1%の速度で破壊されていくのです。

オゾン層の回復状況については、MITの研究チームが2025年3月に発表した研究で、南極のオゾン層が確かに回復していることが95%の信頼度で確認されました。この研究では「フィンガープリント法」と呼ばれる手法で、自然の気象ノイズとその他の要因を分離した分析が行われ、オゾン層の回復がCFC削減の効果であることが科学的に証明されました。

しかし、完全な回復にはまだ時間がかかります。世界気象機関(WMO)は、南極のオゾン層が1980年頃の水準に回復するのは2066年頃になると予測しています。2024年のオゾンホールの最大面積は2,240万㎢で、依然として大きな規模が続いています。

気候変動とオゾン層破壊の間には重要な関連性があることも分かってきました。温室効果ガスは対流圏を温暖化させる一方で、成層圏を冷却します。この成層圏の冷却は極域成層圏雲の形成に有利な環境を作り出し、極域オゾンホールの発達における重要な要因となっています。

モントリオール議定書の成功は、国際的な環境問題への取り組みのモデルケースとなっています。この条約は現在、世界のすべての国が批准しており、オゾン層を破壊する物質の99%近くが段階的に廃止されました。

日本も南極観測を通じてオゾン層研究に貢献してきました。2003年には日本を含む7か国の9つの南極基地から気球を打ち上げる共同観測が実施され、オゾンホールが史上最大規模に発達したことが確認されました。しかし残念ながら、日本が南極に持つ世界最大級の大気レーダーが2027年秋で大部分の運用を終えることになっています。

この環境問題の解決に向けた国際的な協力は、現在直面している気候変動などの地球規模の課題に対しても希望を与えるものです。オゾンホール発見からの回復までに70年以上かかるという「百年の計」は、環境問題解決には長期的な視点と継続的な取り組みが必要であることを私たちに教えてくれます。

【用語解説】

オゾンホール
成層圏オゾンの破壊が進み、毎年春先に南極上空で濃度が急速に減り、周辺に比べて穴があいたように低濃度部位が観測されることから名づけられた現象。オゾン層が薄くなることで、有害な紫外線が地表に到達しやすくなる。

クロロフルオロカーボン(CFC)
フロンとも呼ばれる化学物質で、かつて冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレー缶の噴射剤などに広く使用されていた。非常に安定した物質だが、成層圏に達すると紫外線によって分解され、オゾン層を破壊する。

モントリオール議定書
1987年にカナダのモントリオールで採択された国際条約。オゾン層を破壊する物質の生産と消費を規制するもので、環境問題に関する国際協力の成功例として評価されている。

極域成層圏雲(PSC)
南極の冬季に成層圏で形成される特殊な雲。気温が約-78℃以下になると発生し、この雲の表面でCFCから放出された塩素がオゾンを破壊する化学反応が促進される。

ドブソンユニット(DU)
オゾン層の厚さを表す単位。220DU以下の領域が「オゾンホール」と定義されている。

フィンガープリント法
2021年にノーベル物理学賞を受賞したクラウス・ハッセルマン氏が提唱した手法で、自然の気象ノイズとその他の要因を分離した分析を行う方法。

【参考リンク】

英国南極調査隊(BAS)公式サイト(外部)
極地科学研究を行う英国の主要機関。オゾンホールを発見した研究チームが所属している。

国立極地研究所(外部)
日本の南極観測を担当する研究機関。南極でのオゾン層観測も行っている。

【参考動画】

【編集部後記】

オゾンホール発見から40年。この環境問題は私たちの日常生活と密接に関わっていました。かつてはスプレー缶や冷蔵庫の冷媒に使われていたフロンガスが原因だったことをご存知でしょうか?国際的な取り組みにより、オゾン層は回復しつつありますが、完全な回復には2066年頃までかかると予測されています。環境問題の解決には長い時間がかかりますが、私たち一人ひとりの行動が地球環境を守ることにつながります。皆さんは日常生活で環境に配慮した製品選びをしていますか?

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TaTsu
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