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 「大絶滅」の再来はありうるか|シベリアの火山噴火と森林崩壊が招いた気候システムの破綻

 「大絶滅」の再来はありうるか|シベリアの火山噴火と森林崩壊が招いた気候システムの破綻 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-07-05 07:42 by admin

約2億5200万年前、地球史上最大の大量絶滅であるペルム紀-三畳紀境界大量絶滅が発生した。この「大絶滅」では海洋生物種の94%、陸上脊椎動物科の70%が絶滅した。

絶滅の主因は現在のロシア・シベリア地方のシベリア・トラップで起きた大規模火山噴火である。この火山活動により大量の溶岩と二酸化炭素が大気中に放出され、地表温度は6°Cから10°C上昇した。

通常の火山性気候変動は10万年から100万年で平衡を回復するが、この時期の地球は約500万年間「超温室」状態が継続した。長期化の原因は熱帯林の壊滅的消失にある。泥炭地と密集植生を持つ熱帯林は炭素循環の調節機能を担っていたが、火山噴火により完全に消失し、地質記録に「石炭ギャップ」を残した。

絶滅後、高さ2-20センチメートルのヒカゲノカズラなど小型植物が土地を再植民地化したが、炭素吸収効率は従来の森林生態系より大幅に低下した。研究者らは新開発のSCION炭素循環モデルを使用し、植物の炭素吸収活動再開により気候が安定化したことを確認した。

From: 文献リンクEarth Was Once a Scorched Wasteland—Scientists Are Finally Uncovering the Truth

【編集部解説】

今回の研究が明らかにしたのは、地球史上最大の大量絶滅がなぜ異常に長期間続いたのかという謎です。通常の火山性気候変動は数十万年から100万年程度で回復しますが、ペルム紀末の「大絶滅」では500万年もの間、地球が超温室状態に固定されました。この長期化の鍵となったのが、炭素循環システムの根幹を担う森林生態系の完全な崩壊だったのです。

炭素循環システムの破綻メカニズム

元記事で注目すべきは、森林の炭素吸収機能の重要性です。ペルム紀末以前の地球では、泥炭地を含む豊かな熱帯林が大気中の二酸化炭素を有機物として固定し、気候を安定化させていました。しかし、シベリア・トラップの大規模火山噴火により、これらの森林が完全に消失したのです。

回復プロセスの複雑性

絶滅後の地球で最初に陸地を再植民地化したのは、ヒカゲノカズラなどの小型植物でした。これらの植物は高さわずか2-20センチメートルと非常に小さく、従来の森林生態系と比較して炭素吸収効率が大幅に低下していました。大型植物の回復には約500万年を要し、その間地球の気候システムは不安定な状態が続いたのです。

SCIONモデルの技術的意義

研究チームが使用したSCION炭素循環モデルは、従来の地質学的アプローチとは異なる定量的評価を可能にしました。このモデルにより、植生の一次生産性低下が気候システムに与える長期的影響を科学的に証明することができたのです。

現代への重要な示唆

この研究成果は、現代の気候変動対策技術開発に重要な洞察を提供します。特に、大規模な森林破壊が進行する現在、生態系の炭素吸収能力維持がいかに重要かを歴史的証拠で裏付けています。また、火星などの極限環境での生命維持システム設計においても、炭素循環の理解は不可欠な要素となるでしょう。

長期的視点での警告

最も注目すべきは、一度破綻した地球システムの回復に要する時間スケールです。現在の人為的気候変動が同様の臨界点を超えた場合、回復には数百万年単位の時間が必要になる可能性を示唆しています。これは、現在進行中の第六次大量絶滅と呼ばれる状況に対する緊急性を、地質学的時間軸で明確に示す重要な警告といえるでしょう。

【用語解説】

ペルム紀-三畳紀境界大量絶滅(P-T境界大量絶滅)
約2億5200万年前に発生した地球史上最大の大量絶滅イベント。「大絶滅」とも呼ばれ、海洋生物種の94%、陸上脊椎動物科の70%が絶滅した。

シベリア・トラップ
現在のロシア・シベリア地方にある大規模火成岩区。史上最大級の火山活動により形成され、ペルム紀末大量絶滅の主要原因とされる。

石炭ギャップ
ペルム紀末から三畳紀初期にかけて地質記録に現れる石炭層の欠如。森林生態系の壊滅的消失により有機炭素の堆積が停止したことを示す証拠である。

ヒカゲノカズラ
絶滅後の地球で最初に陸地を再植民地化した小型植物の一種。高さ2-20センチメートルの低成長植物で、従来の森林生態系と比較して炭素吸収効率が大幅に低下していた。

超温室効果
通常の温室効果を大幅に上回る極端な地球温暖化状態。ペルム紀末では地表温度が6-10°C上昇し、約500万年間継続した。

【参考リンク】

山口大学 – 化石燃料消費による炭素循環の乱れと大量絶滅(外部)
ペルム紀末大量絶滅における化石燃料の高温燃焼記録を復元し、当時の炭素循環の乱れを解明した研究成果

東北大学 – 化石燃料消費による炭素循環の乱れと大量絶滅(外部)
約2億5千万年前のペルム紀末大量絶滅後の異常に長引いた生物多様性の遅れと不安定な炭素循環を解明

熊本大学 – 三畳紀の「雨の時代」研究(外部)
中生代三畳紀の約200万年間にわたる降雨量増加「カーニアン多雨事象」の原因を解明した研究

【参考動画】

【参考記事】

太古の地球の歴史が語る:化石燃料消費による炭素循環の乱れと大量絶滅(外部)
山口大学の齊藤諒介助教らによる研究。ペルム紀末大量絶滅後の前期三畳紀における繰り返し発生した高温燃焼記録を復元

化石燃料消費による炭素循環の乱れと大量絶滅(外部)
東北大学による研究成果。約2億5千万年前のペルム紀末大量絶滅後、500万年から1000万年間続いた生物多様性回復の遅れを分析

【編集部後記】

地球が500万年もの間「超温室」状態から抜け出せなかった理由を知って、皆さんはどう感じられましたか?現在私たちが直面している気候変動と、2億5000万年前の地球の状況には驚くほど多くの共通点があります。

森林の炭素吸収能力がいかに重要か、そして一度失われた生態系の回復がどれほど困難かを考えると、現在進行中の環境変化についても新たな視点が生まれるのではないでしょうか。

皆さんは、この古代の教訓から現代の技術開発にどのようなヒントを見出されますか?火星移住計画や極限環境での生命維持システム、あるいは地球の気候変動対策技術について、一緒に考えてみませんか?

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TaTsu
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