中国のeコマース大手PDDホールディングスの株価が2025年2月3日(月)、5.9%下落して取引を終えた。これは、ドナルド・トランプ米大統領による新たな関税措置の影響による。
トランプ大統領は2025年2月1日(土)に以下の関税措置を発表:
- カナダからの輸入品に25%の関税
- メキシコからの輸入品に25%の関税(1ヶ月間保留)
- 中国からの輸入品に追加10%の関税
重要な変更点として、800ドル(約12万円)未満の商品を無関税で米国に輸入できる「デミニミス」免除措置が撤廃される。この制度はTemuやSheinなどの中国系ECプラットフォームの成長戦略の要だった。
from:Temu parent PDD’s stock tumbles as Trump tariffs close trade loophole
【編集部解説】
今回の政策変更は、グローバルなeコマース市場に大きな転換点をもたらす可能性があります。特に注目すべきは「デミニミス」と呼ばれる貿易ルールの撤廃です。これまでTemuやSheinは、この制度を活用して急成長を遂げてきました。
実は、この動きは突然のものではありません。2024年9月にはバイデン政権も同様の規制を検討していました。つまり、米国の両政党がこの問題を重要視していることを示しています。
TemuとSheinは、この変更に対して既に対策を講じています。米国内の物流センター設置や、現地倉庫からの出荷体制の整備を進めていますが、シティのアナリストによれば、Temuの場合、現地倉庫からの出荷は全体の20%程度にとどまっているとされています。
この政策変更による影響は、eコマース企業だけでなく、デジタル広告市場にも波及する可能性があります。MetaやGoogleの広告収入の2-4%がTemuとSheinによるものと推定されており、両社の事業モデルの変更は、テクノロジー業界全体に影響を及ぼす可能性があります。
興味深いのは、この状況から恩恵を受ける可能性のある企業の存在です。例えば、EtsyやAmazonといった米国企業は、競合他社の価格競争力が低下することで、市場シェアを拡大できる可能性があります。
さらに重要なのは、この政策変更が単なる貿易政策の変更ではなく、グローバルなeコマースの在り方を問い直すきっかけとなる可能性があることです。TemuとSheinは2024年に米国小売市場で大きな存在感を示してきましたが、2025年以降は新たなビジネスモデルの構築を迫られることになるでしょう。
このような変化は、日本のEC市場にも影響を及ぼす可能性があります。特に、クロスボーダーEC事業を展開する企業は、同様の規制強化に備える必要があるかもしれません。
最後に、この政策変更は消費者の購買行動にも影響を与える可能性があります。超低価格戦略に依存したビジネスモデルの見直しは、より持続可能な消費文化への転換点となるかもしれません。