米デューク大学とニューメキシコ大学の研究チームによる、人間の脳内のマイクロプラスチック(MP)とナノプラスチック(NP)に関する最新の研究結果がプレプリントとして公開された。
研究の主な発見
- 91の脳サンプルを分析
- 2016年から2024年の間にMPとNPの濃度が約50%増加(3,345µg/gから4,917µg/g)
- 脳組織のMP・NP濃度は他の臓器と比較して約10倍高い
- 主成分は家庭用プラスチックのポリエチレン
- 形状は予想外の薄い鋭利な破片状
- 認知症患者の脳サンプルでより高濃度を検出
from:Plastic shards permeate human brains
【編集部解説】
この研究は、私たちの脳内におけるマイクロプラスチックの蓄積について、これまでにない重要な知見をもたらしています。特に注目すべきは、脳内のマイクロプラスチック濃度が2016年から2024年までの8年間で約50%も増加したという点です。
具体な数値を見てみましょう。2024年時点での45~50歳の方の脳組織では、1グラムあたり4,800マイクログラムものプラスチックが検出されています。これは脳組織の約0.5%がプラスチックで構成されているということを意味します。
さらに興味深いのは、脳内のマイクロプラスチック濃度が肝臓や腎臓と比較して7~30%も高いという発見です。これは、血液脳関門という防御システムが、マイクロプラスチックの侵入を完全には防げていないことを示唆しています。
最近の中国北京師範大学の研究では、マウスを使用した実験で、経口摂取したマイクロプラスチックが2~3時間で脳血管に到達することが確認されています。これは、日常生活における私たちのプラスチック曝露が、想像以上に迅速に脳へ影響を及ぼす可能性があることを示しています。
特に懸念されるのは、脳内のマイクロプラスチックが血管の閉塞を引き起こし、認知機能や運動能力に影響を与える可能性が示唆されている点です。これは、将来的な神経疾患のリスク要因となる可能性を示唆しています。
ただし、この研究にはいくつかの制限があることも付け加えておく必要があります。サンプルサイズが比較的小さいこと、また生きている人々での経時的な変化を追跡していないことから、さらなる研究が必要とされています。
現代社会においてプラスチックの使用を完全に避けることは困難ですが、この研究結果は、私たちのプラスチック使用のあり方について、改めて考え直す機会を提供しているといえるでしょう。
【用語解説】
- MP:5mm~1マイクロメートルの微細なプラスチック粒子
- NP:1マイクロメートル以下のさらに微細な粒子
分かりやすく例えると - MPは米粒の1/10程度から見える大きさ
- NPは髪の毛の太さの1/50以下で目に見えない大きさ