Last Updated on 2025-04-22 11:34 by admin
中国の大手電池メーカーCATL(寧徳時代新能源科技)は2025年4月21日、次世代EV向けバッテリー技術を3つ同時に発表した。
1つ目は「Shenxing第2世代Superfast Charging Battery」で、最大12Cの超急速充電に対応し、5分間で520km走行分の充電が可能。エネルギー密度は205Wh/kgで、-10℃でも15分で80%まで充電できる。
2つ目は、世界初の量産型ナトリウムイオン電池「Naxtra」。エネルギー密度は175Wh/kg、5C急速充電、サイクル寿命は10,000回。低温環境(-30℃)でも高い性能を維持し、2025年12月から量産開始予定。
3つ目は異種化学系統を組み合わせたデュアルバッテリー「Freevoy」で、用途やユーザーに合わせた最適化が可能。
さらに、CATLは2025年3月17日に中国のEVメーカーNIOと戦略提携し、世界最大規模のバッテリー交換ネットワーク構築を目指す。CATLはNIOのエネルギー子会社に最大25億元(約345億円)を出資し、NIOの新ブランド「Firefly」もCATLの交換システムに対応予定。
from:中国のCATLが新しいナトリウムイオン電池ブランドを発表
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【編集部解説】
CATLが発表した3大バッテリー技術は、EV業界の「充電時間」「航続距離」「低温性能」という根本課題を一気に解決しうるインパクトを持っています。Shenxing第2世代バッテリーは、従来の4C急速充電から12Cへと飛躍的に進化し、5分で500km超を充電できる性能は、ガソリン車の給油に匹敵する利便性をEVにもたらします。寒冷地でも実用的な急速充電が可能となり、日本のような四季のある国でも安心してEVを利用できる環境が整いつつあります。
ナトリウムイオン電池「Naxtra」は、リチウム資源に依存しない新時代のバッテリーとして注目されています。コスト削減や資源の持続可能性に加え、-30℃でも安定動作するため、寒冷地やエネルギー貯蔵用途に大きな可能性を秘めています。ただし、エネルギー密度はリチウムイオンよりやや低いため、今後は用途ごとの最適化が進むでしょう。
デュアルバッテリー「Freevoy」は、異なるバッテリータイプを組み合わせることで、ユーザーごとに最適な性能やコストバランスを実現する柔軟な設計思想です。これは、EVの多様なニーズに応える新しいアプローチといえます。
NIOとの提携によるバッテリー交換ネットワークの拡大は、充電インフラの課題を抜本的に解決する可能性があります。交換式ならば「充電待ち」のストレスがなくなり、EV普及を加速させるでしょう。今後は、バッテリー規格の標準化や、インフラ投資、電力系統への負荷などの課題も議論されるはずです。
全体として、CATLの技術革新はEVだけでなく、再生可能エネルギーや蓄電池産業全体にも波及効果をもたらすと考えられます。今後の実用化・普及動向を注視したいところです。
【編集部追記】
ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の比較
特徴 | ナトリウムイオン電池 | リチウムイオン電池 |
---|---|---|
エネルギー密度 | 低い(約100~160Wh/kg) | 高い(約150~270Wh/kg) |
原材料 | ナトリウムは豊富・安価 | リチウムは希少・高価 |
価格 | 安価(原材料コストが低い) | 高価(リチウム価格に左右される) |
サイクル寿命 | リチウムイオンと同等かやや短い | 良好(化学反応による差あり) |
温度安定性 | 広い温度範囲で安定動作(-20~90℃) | 高温にやや弱い(0~45℃が主な範囲) |
急速充電性能 | 急速充電が可能(15分で80%充電など) | 急速充電も進化中だがナトリウムに劣る場合も |
環境負荷 | 低い(資源採掘負荷が少ない) | 高い(採掘・加工による環境負荷大) |
市場普及 | 新興技術、量産はこれから | 実績豊富、すでに広く普及 |
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と比べてエネルギー密度が低いものの、資源の豊富さと低コスト、広い温度範囲での動作、急速充電性能の高さなどが大きな特長です。特に寒冷地や大規模な定置用蓄電池、コスト重視のEVなどでの活用が期待されています。一方で、重量が増すため小型・軽量化が求められる携帯機器には向きません。
EV普及のための技術的課題
EVを広く利用できる社会を実現するためには、以下のような技術的課題が残されています。
- 充電インフラの拡充
急速充電ステーションの数が不足しており、充電待ちや渋滞が発生しやすい状況です。普通充電器では充電時間が長く、ガソリン車並みの利便性を実現するには、官民一体となったインフラ整備が不可欠です。 - バッテリーのエネルギー密度・航続距離
ナトリウムイオン電池はコスト面で優れますが、現状ではリチウムイオン電池ほどの航続距離は実現できていません。今後は電極材料やセル設計の進化が重要です。 - サプライチェーンの安定化
リチウムやナトリウムなどの原材料供給体制、リサイクル技術の確立も重要な課題です。
中国によるリチウム価格への影響
近年、中国はリチウムの世界生産の約2/3を占めており、2024年には炭酸リチウムの生産量が前年比4割増の65万トンに達する見込みです。中国企業はリチウムを大量供給し、意図的に価格を下げる「略奪的価格戦略」をとっているとの指摘もあります。2024年にはリチウム価格が1年前の7割安まで急落し、2021年以降の値上がり分を帳消しにする水準となりました。
このような価格操作は、他国のリチウム関連産業や新規参入企業の競争力を奪い、サプライチェーンの多様化を阻害する懸念があります。将来的な価格の乱高下や供給不安も想定されるため、ナトリウムイオン電池のようなリチウム代替技術の開発・普及は、資源リスクの分散という観点からも重要性を増しています。
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池の課題を補完しつつ、EVや定置型蓄電池分野で今後の主役となる可能性を秘めています。ただし、エネルギー密度や市場規模、インフラ整備など、乗り越えるべき技術的・社会的課題も多いのが現状です。
【用語解説】
12C充電:バッテリー容量の12倍の電流で急速充電する技術。例:50kWhバッテリーなら600kWの充電器で5分充電。
ナトリウムイオン電池:リチウムの代わりにナトリウムを使う電池。資源が豊富で低コスト、寒冷地にも強い。
デュアルバッテリー(Freevoy):異なる種類のバッテリーを組み合わせ、用途やコストに合わせて最適化できる設計。
【参考リンク】
CATL(寧徳時代):世界最大のEV用バッテリーメーカー。最新技術や製品情報を掲載。
NIO(蔚来):中国の高級EVブランド。バッテリー交換ステーションなど独自サービスを展開