Last Updated on 2025-05-11 21:37 by admin
「あそぼー!きょうはなにする?」子どもの目線に合わせて微笑むロボット「ChiCaRo」。遊びながら子どもの成長を見守り、親の不安や孤独に寄り添う小さな相棒が、今、全国の自治体に広がろうとしています。核家族化が進む現代だからこそ、テクノロジーの温もりで「子育ては一人じゃない」を実感できる未来が、静かに、そして確かに始まっています。株式会社ChiCaRo(本社:東京都調布市、代表取締役社長:奥温子)は、2025年5月9日に同社が企画開発したアバターロボット「ChiCaRo(チカロ)」の発達支援モデルを地方自治体向けにリリースすることを発表した。
このアバターロボットは「子育てのミカタを増やす」をコンセプトに開発された乳幼児向けの子育て支援ロボットで、約10年の開発期間を経て、200家庭以上、30施設以上での活用実績がある。今回の新製品では「促育あそび」と「Try&Playレポート」という2つの新機能が追加された。
「促育あそび」機能は、こどもの発達を支える約300種類の遊びが搭載されており、言語理解・視覚認知・運動などの発達領域と紐づいている。遊びの実施状況が自動記録され、システムがその子に合ったレベル・内容の遊びを選んで提案する。
「Try&Play レポート」機能は、遊びの実施データをもとに、こどもの発達の傾向や特徴を保護者や保育士向けにレポート形式で出力する。レポートには動物のキャラクターや親しみやすいコメントが添えられている。
ChiCaRoは静岡県東伊豆町の保健福祉センターにすでに先行導入されており、今後は保健福祉センター、こども家庭センター、室内こども広場などでの利用が想定されている。

サービスは「運用お試し・実証実験プラン」(約3か月間)と「チカロアドバンス年間プラン」(1年間)の2種類が用意されており、2025年5月1日からサービスが開始されている。
株式会社ChiCaRoは電気通信大学内に本社を置き、NEDOの研究開発業務委託を受け、大阪大学、電気通信大学と共同研究を行っている。
References:
PR TIMES【新製品】地域の発達支援に革命!アバターロボット「ChiCaRo」で発達の早期支援を加速、自治体モデル本格リリース!
【編集部解説】。
この製品が注目される背景には、現代の子育て環境の変化があります。核家族化が進み、地域コミュニティの希薄化により、かつては多くの大人が関わっていた子育てが、今では親だけの責任になりがちです。ChiCaRo社の奥温子社長は「子育ては本来、親だけでなく多くの人が関わるものだった」と指摘しています。
ChiCaRoの最大の特徴は、「診断を前提としない」アプローチにあります。発達障害の早期発見・支援は重要ですが、「うちの子は大丈夫だろうか」という不安から相談に踏み出せない保護者も少なくありません。ChiCaRoは遊びを通じて自然に発達状況を把握できるため、支援が必要かどうか判断しにくい段階からサポートできる点が画期的です。
技術的には、このロボットは単なるビデオ通話装置ではありません。子どもが動き回っても追従し、手の機能を使って家ごっこができるなど、子どもの興味を引き続ける工夫がされています。子どもにとってロボットは「特別な存在」であり、ChiCaRoと遊ぶことで「他のおもちゃも優しく扱うようになった」という利用者の声もあるようです。
自治体向けモデルのリリースは、公的支援と先端技術の融合という点で注目に値します。子ども家庭庁も乳幼児期の発達支援に注力している中、地方自治体との連携によって公的サービスとしての展開が期待されます。すでに静岡県東伊豆町での導入事例があり、今後の広がりが注目されるでしょう。
一方で、テクノロジーによる子育て支援には慎重な視点も必要です。デジタルデバイスの使用時間や、データプライバシーの問題は常に考慮すべき点です。また、ロボットによる支援が人間同士の関わりを減少させないよう、補完的な役割として位置づけることが重要でしょう。
長期的には、ChiCaRoのような技術が普及することで、「子育ては社会全体で行うもの」という意識が広がる可能性があります。遠隔地の家族や専門家が子育てに参加できる環境が整えば、地方の子育て環境の改善や、専門的支援へのアクセス格差の解消にもつながるかもしれません。
テクノロジーと子育ての融合は、今後ますます進んでいくでしょう。ChiCaRoのような製品が、子どもの発達支援だけでなく、親の負担軽減や専門家の業務効率化にも貢献することを期待したいと思います。
【用語解説】
アバターロボット:
人が遠隔から操作し、その人の代わりに実世界で動作するロボット。バーチャルに存在するアバターをリアル世界で実現するもの。テレプレゼンスロボットや分身ロボットとも呼ばれる。
遠隔共同子育て:
離れた場所にいる家族や保育者がロボットを介して日常的に乳幼児と関わり、育児負担を分散する概念。核家族化が進む現代社会での育児孤立を解消する手段として注目されている。
促育あそび:
ChiCaRoに搭載された機能で、言語理解・視覚認知・運動など発達領域に紐づいた約300種類の遊びを通じて子どもの発達を促進するもの。
子ども家庭庁:
2023年4月に発足した日本の行政機関。子ども政策を一元的に担う組織で、乳幼児期の発達支援にも注力している。
【参考リンク】
株式会社ChiCaRo公式サイト(外部)
遠隔共同子育てロボット「ChiCaRo」を開発する企業の公式サイト。製品情報や企業理念、事業内容などを紹介している。
ChiCaRoロボット製品ページ(外部)
ChiCaRoロボットの特徴や機能、利用シーンなどを詳しく紹介しているページ。
電気通信大学 人工知能先端研究センター 知能システム研究室(外部)
ChiCaRoプロジェクトの研究開発を行っている研究室のサイト。
【編集部後記】
皆さんは、子どもの発達について「これって普通なのかな?」と思ったことはありませんか?ChiCaRoのような技術が普及すれば、専門家の知見を身近に取り入れながら、子どもの個性を尊重した関わり方ができるようになるかもしれません。テクノロジーが子育てをどう変えていくのか、皆さんならどんな可能性を感じますか?もし離れて暮らす家族とお子さんをつなぐツールがあったら、どんな風に活用したいですか?ぜひSNSで教えてください。