Last Updated on 2025-05-13 17:41 by admin
2025年5月12日(現地時間、5月13日日本時間)、ニューヨークの国連本部で第1回国連総会自律型致死兵器システム(LAWS)専門会合が開かれた。アントニオ・グテーレス国連事務総長は2026年末を規制策定の期限と設定。CCW(従来型兵器使用禁止制限条約)加盟国は2014年以降ジュネーブで協議を重ねる一方、米・露・中・印など主要軍事大国は法的拘束力ある条約より国内ガイドラインや既存法適用を支持している。世界の防衛費は2023年に約2.3兆ドルと過去最高を更新し、AI搭載兵器開発を後押ししている。Future of Life Instituteによれば、現在全世界で約200のLAWS運用・実験中システムがあり、ロシアでは約3,000機の「Veter」無人機が稼働中である。オーストリア外務省軍縮担当アレクサンダー・クメントト氏は「時間がない」と緊急性を訴えた。
References:
Nations meet at UN for ‘killer robot’ talks as regulation lags | Reuters
Nations meet at UN for killer robot talks as regulation lags | The Economic Times
Geopolitics and Regulation of Autonomous Weapons Systems | ArmsControl.org
Insights Volume 29, Issue 1 | ASIL
Nations tackle killer robots regulation at the UN amid global concerns | OpenTools.ai
【編集部解説】
今回の総会会合の最大の意義は、従来CCWの下で非拘束的に議論されてきたLAWS問題を、国連総会という政治的重みのある場に正式に引き上げた点です。これにより、加盟国だけでなく、非加盟の大国やNGO、人権団体も含めた幅広い議論の場が形成されつつあります。
一方で、米・露・中・印など主要軍事大国が国内ガイドラインの活用を支持したことで、法的拘束力のある国際条約の実現にはなお高いハードルが立ちはだかっています。各国の防衛予算が急増し、2023年には2.3兆ドル超に達した背景も、規制を難しくする要因です。
技術面では、Future of Life Instituteの調査により世界で約200システムがLAWSとして開発・実験段階にあり、特にロシアの「Veter」ドローン約3,000機が実戦投入のフェーズにある事実は、規制の喫緊性を強く示しています。これらは戦場での有人兵士保護や即応性向上といった利点を持つ一方、誤作動リスクや倫理的問題、国際人道法適合の不透明さを抱えます。
グテーレス事務総長が2026年をデッドラインと定めたことは、各国政府に規制交渉の加速を促す圧力を与えますが、決議自体に法的拘束力がない点には限界もあります。今後はCCW交渉の再活性化や、域内外での国内法整備動向が焦点となるでしょう。
長期的視点では、警備や災害対応など非戦闘領域への応用拡大が予想され、技術の二面性がより顕在化します。日本は「人間中心の安全保障」を掲げ、倫理と技術革新の両立モデルを示すことで、国際社会におけるリーダーシップを発揮する好機を迎えています。
【用語解説】
Future of Life Institute:
人工知能やバイオ技術など先端科学の安全性を研究・提言する非営利組織。
Veter無人機:
ロシアのZALA Aero社製UAVシリーズの一つで、監視・攻撃ミッションに使用される無人機。
【参考リンク】
国連(UN)公式サイト(外部)
国際平和と安全、人権保護、開発支援などを推進する国連の公式サイト。
CCW公式ページ(外部)
従来型兵器禁止条約(CCW)の条文や会合情報を掲載する国連軍縮局の公式ページ。
国連事務総長オフィス(外部)
アントニオ・グテーレス事務総長の役割や声明を紹介する公式サイト。
Future of Life Institute(外部)
AI安全性や兵器自動化に関する研究報告、政策提言を発表する非営利研究機関。
ZALA Aero(外部)
Veterシリーズを含む各種UAV製品情報を掲載するロシアの無人機メーカー公式サイト。